【診断】
・熱中症の診断基準はどのようなものか?
日本救急医学会のガイドラインでは熱失神・熱痙攣・熱疲労・熱射病を一連のスペクトラムとしてとらえ、全てを合わせて熱中症と捉えている部分に特徴があります。ちなみにアメリカのスポーツ医学(とくに労作性のものを考えた時)においては、熱中症を一連のスペクトラムとしては捉えずに、それぞれの病理学は独立したものとして捉えられています(例えば熱射病になる前には熱疲労を伴うという考えはありません)。具体的な定義・病理学の例を挙げるとするならば、熱失神は脱水や起立性低血圧に起因するもの、熱痙攣は脱水、筋疲労、電解質の喪失に起因するもの、熱疲労は運動より生じた高体温の負荷により運動を自主的に継続することが不可能な状態、そして熱射病は高体温(深部体温40℃以上)に伴って中枢神経系に異常を来たしている状態(例:意識喪失・人格の変化・健忘)を指します。
また本ガイドラインでは前述した症候群(熱中症スペクトラム)の重症度が3段階に区分されています(日本救急医学会熱中症分類)。

この図で注目したいのは、やはりI度がII度なりIII度に発展するという熱中症スペクトラムのコンセプトを強く反映している点です。この重症度分けの区分は病院に搬送された後の患者の重症度を鑑別するためには便利だと思いますが、現場で働くアスレティックトレーナーであればそもそもIII度の状態を防ぐこと、また、II度の対応において「すぐに病院に搬送」するのではなく まずは直ちに現場で冷却を行い、深部体温が40℃以上である時間をできるだけ短くすることに努めることが命を救うための第一歩であることを知っておかなければなりません。冷却方法の比較や応急処置に関しては次回の【治療】で詳しくまとめたいと思います。
・熱中症の重症度はどのように判定するか?
ここでは前述した3区分の重症度が以下のようにまとめられています。
I度:現場にて対処可能な病態(熱失神や熱痙攣)
II度:速やかに医療期間への受診が必要な病態(熱疲労)
III度:採血、医療者による判断により入院(場合により集中治療)が必要な病態(熱射病)
アスレティックトレーナー(現場で熱射病の応急処置に携わる者)としてここで注意したいのは、前の項目でも書いたように「すぐに病院に搬送」ではなく現場で応急処置をすることが良好な予後につながるということを知り、適切な応急処置をするための準備をすることです。本ガイドラインは救急搬送された症例データをもとに救急医療の視点から書かれているため、アスレティックトレーナーと視点が異なる部分があるのは仕方がないのですが、病院で重症度を判定する前に現場で病態の鑑別(直腸温の測定)を行い迅速な冷却を現場の初期対応では必ず行われなければいけません。
英語(TedEd)のビデオではありますが、以下のリンクから労作性熱射病の対応においてなぜ冷却を優先しなければいけないのかをまとめた4分間のアニメーションがあります。興味のある人は是非見てみてください。ちなみにこのビデオは私が所属している研究所が監修したもので、私のアドバイザーの実体験も含まれています。
http://ed.ted.com/lessons/what-happens-when-you-get-heat-stroke-douglas-j-casa
