sanshiroのブログ

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大門句会勉強会のブログです

今回の兼題ははなさん出題の「無花果」です。

◇野里子
無花果や分家に男児誕生す
無花果や精久君(あきちやん)は吾を好きと言ひ
⇒無花果の実った実を見ながら分家の嬰児を思っている。すこやかに育ってほしい。
精久君(あきちやん)とは珍しい名前だ。作者の幼馴染だろう。無花果を一緒に食べたとき好きだと言ってくれた。

◇馬空
無花果や皮剥き苦手食ふは好き
馬市よ府中に国府屋敷跡
⇒無花果の皮はすぐに破れて剥きにくい。私は皮は剥かずに半分に割ったままなかみにかぶりついていましたが。
国府は奈良・平安時代の地方の役所。今は府中競馬場があるが昔は馬市が立っていたのだろう。

◇さら
ヒール脱ぎ無花果上る乙女かな
待ちかねし風の冷たし九月尽
⇒無花果の木に登って実を捥ごうとしている若い女性。裸足で大丈夫だろうか。ストッキングがぼろぼろになりそう。
残暑が長引き涼しい風が吹くのを待ちかねていた。やっと吹いた。「冷たし」はちょっと言い過ぎ、「涼しき」くらいでは。

◇蒼月
無花果の一つ残りて夢の跡
マンチカンと言ふ猫居る秋彼岸
⇒食べていた無花果が器にひとつ残っている。「夢の跡」がなにを指すのかわかりにくい。ひとつ残っているだけの描写でいいのでは。あるいは「友去りぬ」とか。
マンチカンとはアメリカ起源の短足の猫だそうですね。「居る」だけではわからない。どこにいるのかのヒントがほしい。「路地に」とか「塀に」とか。

◇夢路
イチジクを掴む指先吾子の頬
無花果の涙珠のごとき若き実や
⇒指先と吾子の頬の関係がわからない。イチジクをつかみながら頬にさわれない。
涙珠とは辞書を引くと涙の玉とありました。無花果の実を涙の玉のようというのはふさわしいかどうか疑問。無花果は若いとはいえかなりの大きさですからね。

◇遊介
大き葉に隠れぬ無花果熟しけり
無花果の茎に滴り乳の如
⇒無花果の葉はかなりの大きさですね。アダムとイブが腰を覆ったというイチジクの葉を思い出しました。
イチジクを切ったときに軸から白い液が垂れて茎にかかったのでしょう。

◇はな
出迎いの夫に無花果手渡して
熟したる無花果捥ぐや割烹着
⇒無花果はどこかのお土産でしょうか。駅まで来てくれた夫にはいといって渡した。「出迎い」ではなく「出迎へ」でしょう。
無花果は捥ぐときに汁が出たりして手や衣服がよごれる。それを防止する割烹着でしょう。用意周到ですね。

◇勝山
無花果のフランスパンを噛むテラス
せり出たる無花果へ手の届きさう
⇒この無花果はドライフルーツかジャムになった無花果でしょう。加工されたものは季語にはならないのでは。年中ありますからね。
これは木に生った無花果ですか。捥ごうとして手を伸ばしている。

◇三四郎
無花果をお上品には食べられぬ
無花果やお稲荷さんは朽ちてをり