Hondaにて車の修理に来ているが、修理ったって大袈裟なものではなく後のナンバープレートを照らすランプの一つが落っこちて垂れ下がり、まるで夏祭りの提灯のようになっており、車なんて家電と同程度にしか考えていない俺はしばらく放っておいたのだが、そうすると提灯もやがては点かなくなり、俺の車の後ろを走る方にお祭気分を提供出来ないどころか、整備不良で捕まるなんてのも嫌なので、オートバックスでタイヤ交換した際についでに直してくれと頼んだら、ディーラーでないと部品がないから無理だと断られ、「普段、アンタら、クルマの事なら何でもお任せ的なこと言ってんじゃないの?」などと言おうものならスパナで殴られかねないとすぐさま察し、わざわざ提灯の件を忠告してくれたことに礼を言うと、さらにそれから数週間放置した五月晴れの日曜日、ようやく来店に漕ぎ着けたわけだが、案内係のネーチャンに「ついでにフロントガラスのコーティングをしてはいかが?普段は6千円以上するのが今なら千五百円ですよ」と勧められ、いつもならあっさり断るところだが、費用のお得感より何よりも、制服のタイトスカートからスラリと伸びた脚に迂闊にも心を奪われてしまい、気づいた時には「是非、お願いします」と口にしており、よくよく考えると修理に加えて撥水加工すれば待ち時間も伸びるわけで、それを悔やむ理由は他でもなく眠いからであって、これから東船橋まで出て車を停めて秋葉原まで電車となると一時間少々かかるわけで、どうしたって面倒くささは否めないが、翌週末から三週連続でどうでもいいけど断れない用事があるために、どうしても今週末は彼女に会っておかねばならないと、「ジョージアの香るブラック」を片手に遠路はるばる向かうつもりでいる俺を、職場の仲間たちは「それは恋だ」と笑うが、恋と呼ぼうが何と呼ぼうが構わないけれど、とにかくわざわざ車と電車を乗り継いで通うのに十分に値する、個人的にはかけがえのない人であることは揺るがない事実で、途中のコンビニでうんこした以外はロスもなく秋葉原までコマを進めると、うっかり開店時間よりも早く着いてしまい、仕方ないからタワレコを覗いてブラームスを一枚買ってから店に入ると彼女の気配がなく、違う女の子と少し話してからポツンと一人にされた瞬間に、幾度となく感じてきた酷い惨めさと自己嫌悪に陥り、「もうダメだ。帰ろう」と思った矢先に俺が一人だけを目当てに通う事情を知る女の子から「もうすぐ彼女が来ますよ」と言われ、心に一筋の光が差し込むやいなや彼女が現れ、割と長いこと話が出来て楽しい時間を過ごし、やはり眠いのを我慢して来てよかったと思うと同時に、彼女から受けるバイブレーションは特別であり、純粋で心地よく、俺が前向きになれる何かをくれるんだと改めて悟ると共に、さらには弱冠二十歳の新人さんから「おじさん好き」であることを打ち明けられ、年齢的にもこのクソ中年がど真ん中であるという衝撃の事実が告げられるともなれば、もう心の中は「喜びの祭典」、「希望のカーニバル」状態と化し、甚だ気分を良くして帰路についた俺は、やはり店側からすれば格好のカモなのだろうが、同じカモなら愛されるカモになりたいと心から願う、一夜明けた月曜日の午後ですぅ。