キース・ジャレットの大阪公演が途中で中止になったニュースを読んだ。
録音が前提とされている演奏会だったのだが、無神経な客の咳などが酷くて演奏は何度か中断されたようだ。そして最後にダメ押しの大咳をかましたオヤジがいたらしく、ジャレットは二度とピアノの前に戻らなかったらしい。
「こっちは銭払ったんやさかい、時間内はちゃんと演奏しろや、ドアホ!アンタ、プロなんやろ?ええ加減にせな、しばくぞ、コラッ!!」
そんな大阪の方々の言い分にも一理ある。
例えばプロ野球の世界で、相手ベンチからの野次に気をとられて三振するようなバッターはやはり敗者だろうし、お金を取って演奏するのが仕事なのだから、雨が降ろうが槍が降ろうが、チケット代金分はきっちりピアノを弾くべきなのかもしれない。
それに、演者は客を選ぶべき立場にはない。

それでも、あえて俺の考えを言わせてもらえば、デリカシーのない人間はこういう音楽を聴くに値しない。スナックで「やっぱ好きやねん」でも歌ってなはれや。
1月に観たジェイミー・カラムのコンサート。彼はノリのいい曲には手拍子で応え、繊細な弾き語りには物音一つ立てない観客に感動して、最後はマイクを自ら脇にどけて地声で歌を聴かせてくれた。

「金を払ってるんだから」とか「こっちは客だぞ」ってな態度で、飲食店などで横柄に振舞う無粋な輩は多いが、概して小物である。サービスを提供する側も、それを享受する側も、お互いが気分よくいられるようなマナーは身につけておくべきだと思う。