「肌寒い朝だね」

「でも、もう雨は止みましたわ。午後からは晴れるみたい」

「そうですか」

「何か音楽をかけましょうか」

「では、ドビュッシーを。こんな曇天の朝にはよく似合う」

「あなたもドビュッシーがお好きなの?」

「君も好きなのか?」

「ええ、子供の頃からずっと。パリで育ったせいかしら」

「サティもラヴェルもいいけれど、やはりドビュッシーがいいねえ」

「意外と繊細なご趣味ですのね」

「意外とだなんて、ずいぶんじゃないか!?」

「だって。もっと大胆な方だと想像していたから」

「人は見かけによらないものさ。ところで、君の一番好きな曲は何だろうな」

「あら、当ててくださるの?」

「アラベスクの一番、ではないかな」

「まぁ、わたしのことをずいぶんお分かりなのね」

「じゃあ、今度は僕の好きな曲を当ててみてくれないか」

「月の光、かしら」

「それもいいけれど」

「亜麻色の髪の乙女?」

「それもいいけれど。実はね、僕は『レントより遅く』が一番好きなんだ」

「・・・そうなの」

「どうしたんだい?」

「だって、何だか悔しいわ。あなたにばかり見透かされてしまっているようで」

「そんな風に悔しがる君の表情、たまらなく愛おしいよ」

「もう、あなたの馬鹿。意地悪・・・」

「拗ねていないで。さぁ、こっちへおいで」

「もう、嫌いよ。あなたなんて・・・」

「ほーら、もう君は僕の腕の中だぞ」

「いやっ、離して」

「離すもんか。一生、君のことを離したりはしないぞ」

「・・・もう怖いくらいに、あなたが好き」



「隊長、何ですか、あいつら!?」

「・・・知らねえよ」