「何ですか、『あひん』って」

「新メンバーってキーボードで打とうとしたら、『新』が『あひん』になっちまった」

「で、そのままですか」

「どことなく可愛いだろ、『あひん』って。音も字面も」

「ま、いいですよ、それはそれで。で、新メンバーって?」

「ほら、EXILEの新メンバーが決まっただろ?」

「隊長、興味ないじゃないですか、EXILEなんて・・・」

「うん、興味はないが関心はある」

「なんで?」

「お前も知ってるだろ?俺の元嫁と娘が熱狂的なEXILEファンだってこと」

「知ってますけど」

「俺がこれまできちんきちんと毎月払ってきた養育費がさぁ」

「はい」

「おそらくEXILEのチケットやグッズ購入代金に変わってるんだよ」

「それで?」

「たまらんだろ?苦労して稼いだ金の一部が、あんな男芸者衆の懐を肥やしてるんだぞ」

「ま、そうは言っても、仕方ないですよね」

「うん。どうすることも出来ない。だけど・・・」

「だけど、何ですか?」

「それも、もうしばらくの我慢だ」

「どういうことですか?」

「今年の12月に娘が18歳になる。そこで、俺の養育費の支払い義務が終わるわけだ」

「ようやく解放されますね」

「まぁな」

「そう言えば隊長、週末にお店に行ったんですか?」

「行ったよ」

「どうでした?」

「ま、焦らずに、ゆっくり構えて通うことにするよ」

「そうですか」

「最初の頃はもうわくわくして、ポジティブな気持ちしかなかったんだけど」

「はい」

「ひと月も通って変化が見えないと、気持ちもネガティブな方向へシフトしてきてね」

「そうなりますか」

「なるんだねぇ。ま、いずれにせよ、単に俺の頭の中だけの問題でね」

「ま、最初から彼女には何の責任もないですからね」

「そうそう」

「週末にだけ通ってくるお客さんに、彼女なりに誠実に振舞っているだけですから」

「そうそう」

「隊長が一人で偶然の一致に舞い上がっているだけですよね」

「そうそう。そうなんだけどさ」

「で、自分の勝手な妄想を押し付けて一喜一憂してるだけですよね」

「・・・・・・・・」

「・・・どうしちゃったんですか、黙っちゃって?」

「もうそれ以上、言うな」