このひと月、私は「何が起こるんだ?一体、何が待ってるんだ?」と期待ばかりに胸を膨らませておりました。魔法のような何かの訪れを本気で待ち続けていたのです。そして、楽しい時間を過ごしながらも何らかの成果や進展が得られないことに気を揉んでいました。「こんなはずではない。もっと劇的な展開が待っているはずだ」と、過剰な思い込みの中に自ら陥って抜け出せずにいたのです。

そこで、少し冷静になってみることにしました。彼女への一方的な思い入れを一旦放棄してみることにしました。毎週の店通いも止めようと思いました。内在するヒートアップし過ぎた感情の暴走を減速させる必要があったのです。

そんな中、職場のシゲル君と話しました。
「今週は、どうするんですか?」
「いや、行くの止めようと思ってんだよね」
「どうして?」
「何かさ、このまま店に通っていても変わらない気がしてさ」
「そうすか?」
「うん。そりゃ彼女は可愛いし、何もかも好ましいし、行けば楽しいんだけど」
「じゃ、いいじゃないですか」
「こっちの期待ばかりが大きくなっちゃってね。結局、自分で勝手にハードル上げてるんだよね」
「なるほど」
「だから少し、クールダウンしようと思うんだ」
「そうですか。でも、これで終わりにしたらつまらないですよね」
「うん。ま、このまま終息させるつもりはないけどね」

そんな中、ふいにシゲル君が以前に話していた言葉を思い出しました。

「最近、近所にガールズバーが出来て、可愛い子がいるんですよ。で、結構、通ってるんです」

かれこれ一年くらい前だったでしょうか。私は話ついでにシゲル君に尋ねました。
「そういえば、あのガールズバーって、どうした?」
「え?」
「ほら、ずいぶん前に『通ってる』って言ってたじゃん?」
「あぁ、あれ。通ってますよ」
「マジで!?」
シゲル君は、私の驚いたような反応に照れ笑いを浮かべました。

さらに話を聞くと、かれこれ一年、月に二、三回ほどのペースで本八幡のガールズバーに通い続けているそうです。そしてオープンからラストまでなんて長時間、バカみたいに長居しては、バカみたいに金を使っているそうです。

私は目から鱗が落ちるような気分でした。

「それで、いいじゃん」

親くらいの歳の男が毎週、自分を求めて店を訪れる。立場を変えて見れば、これは相当にキモい図であるに違いない。
そんな風に自分を客観視していたのですが、それはそれでアリかもしれません。
いや、むしろそこで「え?何すか?何か問題でも?」と開き直るくらいの「オヤジ道」を貫くべきなのでしょう。

もう過剰な期待は止めます。彼女と接することで大きな自己改革のようなことが起こらなかったとしても構いません。
好ましいから会いに行く。
それ以上の理由や動機など、そもそも必要ないのでしょう。

また週末、顔を出すぜ!





I was blind
Now I can see
You made a believer
Out of me

I'm movin'on up now
Gettin' out of the darkness
My light shines on
My light shines on
My light shines on

何も分かっちゃいなかったけど、今なら分かる

お前は俺を妄信させたんだ

動き出すぜ

暗闇から抜け出して

俺の光が輝いている