行為計算否認の背景と地裁判決(オウブンシャホールディングス事件その4) | 元国税・税法研究者・東大卒税理士の圧倒的税制解説~税理士の武器~

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先日の続き。我が国の法人税法の歴史を見た

場合、その条文数は、



平成12年ころから莫大に増えている



ことに気が付く。従来は、大改正にはリスク

が大きいこともあり、



少ない条文と、場当たり的な

租税特別措置の改正



が中心であった。このため、当時は法人税法

が時代の流れに即していないとの指摘があっ

だけでなく、



適切な個別否認規定を

設けることができなかった



という事情もあったのだ。このため、条文数

が増える以前の税務行政においては、



伝家の宝刀の適用例は多かった



わけである。もちろん、現代は納税者の権利

保護の流れも相まって、伝家の宝刀を振り下ろす

ケースは、それほど多くはないと考えられる。





話を戻そう。法人税法22条2項の「その他

の取引」で課税ができるか微妙、というとこ

ろもあって、本件の地裁判決においては、同

会社の行為計算否認規定で争われたわけである。

この判決においては、



第三者割当増資の問題は、原告と

関連会社の問題ではなく、子会社と

関連会社の問題



と指摘されるとともに、



本件において、行為計算否認規定の


適用対象となるのは原告であり、

子会社や関連会社までその範囲を

広げることは妥当ではない



と指摘され、国側の敗訴となった。





この判決について、仮に子会社等に同族会社

の行為計算否認が適用されないとすれば、



より安易な節税につながるのでは?



といった指摘もあるものの、行為計算否認

定は、条文を読む限り、



グループ会社を前提とした規定

にはなっていない



と考えられる。あくまで、



行為・計算を行った法人に対して

是正を行う



という規定内容であるところ、条文に即する

限りにおいては、地裁の論旨は妥当であるよ

うに考える。



もちろん、現代の社会経済情勢を踏まえれば、

むしろグループ会社を単位として経済活動を

行うことが、企業活動の通例であるため、



単体を前提とした条文構造には

疑義がある



ことも事実。ただし、現代の法人税法の在り

方から考えれば、



なるべく個別否認規定を充実させる



方向性が妥当なのかもしれない。



(以下次回)




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