洗いたての洗濯物のいい香りのするホテルの部屋で、「中国の巡視船4隻が尖閣諸島の領海域に侵入し…云々」という、中国でも見られるNHKの緊迫したニュースをボンヤリと見ながら、オレはというとまるで他人事のように「ケンカすんじゃねぇよ。仲良くしろ」と、猫のケンカでも見るような風情でつぶやいたものである。
中国全土なのかどうかは分からないのだけれども、ホテルやその近辺にはいわゆるコインランドリー、というものがないので、洗濯物はスーパーで買ってきた樹脂製のバケツでホテルの自室でひとり、シコシコと手洗いをしていた。手洗いって生まれて初めてしたかも。まあ別に他にやることもないしどちらかというと楽しい作業ではある。
そう。ホテルではNHKを見ることができた(BBCとかCNNとか中国の放送とか全部で60チャンネルくらいある。でも日本のビジネスホテルによくあるピンクチェリーみたいなのがないのが大いに不満だった)ので当座の政治的な問題についての情報は入ってきていたのだけれど、実際中国にいたオレとしては、どうにも違和感があるというか、日々自分の感じている感覚と噛み合ってこないのだ。
というのも、仕事の関係の人もほぼ毎日のように行っていた小さな中華料理屋(ほとんどが中華料理屋なわけだが)の人たちも日用品店のおっさんもとても親切で、紳士的だったからだ。
関係ないけど、奇しくも中国も政権交代の時期で、共産党の党大会みたいなニュースもNHKで流れたんだけど、そのニュースになると決まって途中でプツって切れるんだよな。。終わった頃に再開される。
アレ、中国国内の人に見せたくないんだと思う。
「素敵な話じゃないか。これが俺たちのシビリアンコントロールってヤツさ。」と。。
ええと。閑話休題。
オレはパソコンは普段デスクトップを使っていてノートやタブレットは持っていないので、ネカフェ(网吧、ワンバーっていうらしい)を探して入ってみたのだけれど、「未成年不可」なんて書いてある。当然身分証が必要なわけで、うーん。。5秒ほど考えたあとおそるおそる日本のパスポートを見せてみたのだけれど、「ノー」みたいな顔と手振りをされてしまった。そーか、じゃあ外国人はネカフェに入れないんだな。。
と、トボトボ帰ろうとしたら「ウェイトウェイト」と声をかけてくる。
「お前は日本からきたのか?」
「(ドキ)…そ、そうだけど」
「…そーか。入れてあげられなくて申し訳ない。政治的な問題はいろいろあるけれど、でも俺たちは政治家じゃないんだし、個人的にはフレンドシップを持ちたいと思っているよ」
日本語はおろか英語もカタコトしか通じない(オレもだけど)から分かんないけど、ポリティカルプロブレムとかアイウォントゥテークアフレンドシップウィズユーとか言っていたからだいたい合ってると思う。
ミートゥーミートゥー。ありがとう!といって握手して店を出る。
大学が近くにあったりして、ネカフェは割とたくさんあったな。ゲームばっかしてるみたいだけど。
日用品店(コンビニも1軒もなかった)のおっさんも「毎日ビールばっか買っていくな。おまえはどこからきたんだ?」なんて言ってくる。
「レーベン。日本だよ」
「…そーか大変だな!」と肩をバシバシ叩いてきたり。
中華料理屋のお兄さんは大盛りにしてくれたり、日本語で「ありがとうごぜえます」とニヤニヤ。
「グッドジャパニーズ。シェイシェイ、ハオチーハオチー」
「ブクーチー」
なんか覚えたての中国語を喋るとみんな笑うんだよね。なんだろ。
「外国人がつたない日本語を喋るとすげーカワイイじゃん。たぶんその逆バージョンでは。」とは某トチのんの言。
買い物は買いたいものをレジにもっていったり陳列してあるもの(タバコとか)を指差したりすれば電卓を叩いて値段を示してくれる。定食屋とかはメニューは全然読めないから壁に貼ってある料理の写真を指差して「コレコレ」って言えばだいたいダイジョブ。
だから写真のある店だけね。テキトーにメニューを指差したりするとジョジョのポルナレフ登場の回のように「ドーン!おじいちゃん全然チャウよ」ということに相成る。
数だけは覚えておいたほうがいいかも。麻雀するひとは分かると思うけど、イーアルサンスーウーリウチーパーチウ、シュウ。0はリン。
ゴハンは何食べてもスゲーおいしかったなー。ただ白飯だけはクソ不味い。昔タイ米ってのがあったけれど、アレのもっと先にあるような感じ。固くてパラパラ。チャーハンにするとすごく美味しいのだけれど。
一緒に行った係長の義姉が中国人らしいのだけど、中国に帰るときには日本米を買って帰るんだってさ。おいしいから。
だから「この不味い米をどうすれば美味しく食べれるのか」と考えてチャーハンが作られた、っていう誕生秘話がかつてあったのであろう、とオレは考えている。
あと1部の肉料理は骨付きで出てくる。調理場をチラ見したらナタみたいな中華包丁のゴツイやつでドン!ドン!と骨ごと切っていたぜ。始め知らなくてガリっといってしまい、銀歯が取れてしまった。。
みんなどうやって食うのか見ていたら、器用に骨だけプッと床に飛ばしていた。なんか吸殻とか骨とかみんな床に捨てちゃうんだよね。
…オレは椅子の下に置いていた鞄をそっとヒザの上に乗せた。
辛い料理は本当に辛かった。何だか分からないけど真っ赤な色したソイツを口に入れて2秒後。
…バーン!
ハアあれは何と言うべきか。辛いというか「口の中をピストルで撃たれたような味」がした。そしてその弾丸は脳天にまで突き抜けていくのである。
車の運転は日本人からみたら「乱暴だな」という印象だけれど、1ヶ月いるあいだフシギと事故ってるのは見なかったし、まあルールが違う、っていうことなんでしょうね。道路を渡るのがすげー怖かったな。
あと電動スクーターがたくさん走っておりました。アレいいわ。連想するのはAKIRAの金田のバイク。「モーターのコイルがやっと暖まってきたところだぜ!」みたいな。イカす。なんで日本であんまり見ないんだろ。まああんなデカいのはなかったけど。
客先の会社のスタッフもみんな親切で協力的、中国語をいろいろと教えてもらった。一応日本の企業の工場なので日本語学校に通い始めてる人もいたりして、その人が結構グイグイくるのだ。
オレは星というのだけれど、中国語読みでシン、と読むらしい。ドラゴンボールのイーシンチュウのシンね。
だからなぜか「シンシンさん」と呼ばれていたのだけれど、「シンシンさんはー、日本人、なんですか?」
とか「スモモモモモモモ…」とか「ナマグミ、ナマゴメ」とか言ってくる。
「おはようゴゼエマス」とか「いらっしゃいマシェ」とか「テンピュラ」とか。
まあいい年のオッサンなんだけどすげえカワイイんですよ。
急に脈絡もなく「バーゲン会場!」とか叫んだりする。
…まあとにかくワタクシが言いたいのは、行く前は相当ビビってたけど、中国の人も日本人と同じで、全ての人が日本を敵対視しているわけではない、というのが分かった。ということ。みんなニコニコ平和だった。
実際に行ってみないと分からないことってあるな、と思いました。
これを読んでいる皆様はオレがとんでもない目に会うのに期待していたのかもしれないけれど。
イヤそんなことはないですか。
本当に?マコトに?
…まあいいでしょう。写真もいくつかあるのだけれど、また次回。
全く関係ないけど、海外での出来事をどう伝えればいいのだろう、と思ってモリカナ氏の日記を見たのだけれど、全然違う話題、ラムネ論が面白すぎてソレをずっと読んでしまった。。
なんだあの人。文才あるわー。