昨年キム・ナムギルが制作に携わって韓国で話題となったドキュメンタリー音楽映画「アンサンブル」。誰もが楽しめるクラシック音楽の大衆化のために演奏活動する7人の韓国次世代演奏者 “OLYMPUS ENSEMBLE”の姿を描いて、釜山国際映画祭などで特別上映された後、今月には日本でも限定上映され、ホットな話題のひとつと注目を集めたばかりの7月28日、東京オペラシティコンサートホールで「Kim Nam Gil Presents“OLYMPUS ENSEMBLE”Classic Concert」が開催された。
クラシックファンでなくても聴き慣れた、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第4楽章から第1部がスタート。重厚なオーケストラの演奏に比べ、ピアノの奏でる旋律と咽び泣くヴァイオリンに重なっていく音たちが、アンサンブルの繊細さと華麗さをドラマティックに印象付けた。クラシックの革新と大衆化のパイオニアとして、スタイリッシュなビジュアルを撒き散らし洗練されたステージは、彼らが誇るレベルの高さと、その真髄を語るに不足がない。
会場いっぱいに沸きあがった拍手と歓声を搔き分け、黒のタキシードで登場したキム・ナムギルにファンから「カッコイイ~!」のラブコール!カリスマ交じりの特有のオーラが、ドラマ「赤と黒」のゴヌク、「善徳女王」のピダム、そして「サメ(原題)」のハン・イスなど、たぎる思いを“孤独”という世界に閉じ込めた、抱きしめたいほど愛おしい“悪い男”のキャラクターたちとオーバーラップ!客席を一瞬で釘付け!「以前、ジャパンツアーの時に約束したことがありました。その約束を守るため、声援に応えるために公演することになりました。」と、今年の1月、ドラマ「赤と黒」のコンサートイベントでファンと交わした約束を振り返り、メンバーを簡単に自己紹介。具体的には2部で、としながら「今日はクラシック音楽のコンサートですが、 ラクな気持ちで格式に拘らず、 楽しんで下さい!」と挨拶。「アンサンブルの皆さんに大きな声援をお願いします!」と演奏へ導いた。
3曲続けての演奏が終わり、会場から喝采が送られと、キム・ナムギルは先ず「このアンサンブルのメンバーが出演する映画の製作者であるということが誇らしいです。」とし、クラシック映画を製作する事を関係者など周囲に話したら、「君、クラシックの事知っているの?」と皆同じ質問をするのに対し、自信を持って(!)「知らない…」と答えたと言うと、会場は大爆笑!「 クラシックは寝る前に聴く素敵な音楽という程度です。」と明かしながらも、彼らは実力ももちろん秀でているが、演奏する彼らの姿を見ていて魅了されてしまい、クラシックは耳で聴くほかに目で観る音楽だと感じたことを付け加え、「今日はそういうところにもポイントを置いて楽しんで欲しいです」と“誰もが親しみやすいクラシック水先案内人”らしいコメントで客席を和らげた。
続いてナビゲーター、キム・ナムギルは1曲目「ツィゴイネルワイゼン」について、サラサーテの最も代表的な曲、本来は華やかなヴァイオリン曲を、OLYMPUS ENSEMBLE がファンのために再編曲したものと解説。2曲目バガニーニの24のカプリース(奇想曲)の中から「24番」では、「パガニーニのカプリースは、作曲された時代には演奏できる人がいないほど難しい曲と、リーダーが言っています。でも!自分は弾ける!と…自慢ですね!!」と、エピソードを紹介するなど、3曲について話した後、「あ、『コメントが長すぎるから早く戻って来い!』と言われたので、皆さまこの後の演奏もお楽しみ下さい!」と、袖に戻った。本人が一旦舞台から退くときや演奏者が戻るときにも、アイコンタクトやハイタッチでメンバーのひとりひとりとコミュニケーションを取る姿が印象的で、安心感と信頼感溢れる楽しい雰囲気を醸し出した。
中盤に差し掛かると、 独自の編曲でヴァイオリン、ヴィオラ、チェロにピアノの旋律が絡み合う、 ショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲より、第3楽章が演奏された。キム・ナムギルが彼らのコンサートを初めて聴いた時に感動し、映画を作るきっかけになった20世紀ロシア現代音楽の中でも屈指の傑作であり、それ以来ショスタコーヴィチが好きになったと熱っぽく語り、タンゴ曲で有名なアストル・ピアソラの「リベルタンゴ」を1部のラストとして、多くの人々に愛されている名曲をどこまでも劇的に締めくくった。
韓ラブでもすっかりお馴染みの古家正亨がMCで登場し、第2部が始まったとたん、場内の空気がガラッと楽しい雰囲気に変わった。そして世界的に有名なアーティストたちがこぞってリサイタルを行う東京オペラシティ、コンサートホールで今回素晴らしい実力のある演奏家の演奏を聴けること自体が光栄と話し、再びファンから大きな拍手が送られ、自らメンバーの紹介し、MCがさらに付け加える形で親近感を演出。
メンバーのプロフィールは次の通り。
韓国最年少で音楽大学の教授になったリーダーのヴァイオリニスト、クォン・ヒョクジュは、カール・ニールセン国際コンクールで韓国初、しかも19才という若さで優勝。音楽性とテクニックは自他共に絶賛する、世界でも注目を浴びる奏者。
韓国では美人ヴァイオリニストとして有名なスタープレイヤーのキム・ジユンは、韓国芸術総合学校に主席で入学。ニーマン国際コンクールなど有数の大会で1位を占め、韓国の番組「私は歌手だ」にサプライズ出演し、実力のみならず美貌も認定されるところ。ピアニストのパク・ジヌは繊細で且つパワー溢れる豊かな感性の持ち主。指が命のピアニストだが、格闘技も親しむワイルドな面も。イタリアAlcangelo Speranzzaなど、世界有数のコンクールで素晴らしい成績をおさめ、Pietro Argento 国際コンクールの審査員としても招待された。
クラリネットを純粋な感性で美しく響かせるチャン・ジョンソンは、パク・ジヌの格闘技練習相手でもある。が、一方、ミュンヘン国立大学院で修士、最高演奏者課程を卒業、オーストリアザルツブルグ国立音大大学院の課程も修了するなど、目を引く輝かしい音楽歴を持つ。世界を舞台に活動中の、ヴィオリスト、イ・ハンナは、これは絶対に外せない!として明かすほど、キム・ナムギルが彼らとのプロジェクトについて話したとき、スター俳優の彼をメンバーの中で唯一、知っていた人物!イ・ハンナが直接 「『キム・ナムギルが私たちをプロデュースするのよ!』と嬉しくメンバーに言うと、帰ってきた答えが『それ 、誰 ?』で…」と、当時を振り返って話すと、客席にもドッと笑いの渦が。
日本でも大人気のガールズグループ2NE1のメインヴォーカル、パク・ボムが実妹の、チェリスト、パク・ゴウンは、ウィーン国立音大に最年少入学、4年後に主席で卒業。そして世界の名門ジョンズ・ホプキンズピーボディ音楽大学院で専門演奏者課程を卒業。その他、様々なコンクールでも 受賞するなど、その実力の認知度も世界的。
言葉が微妙でセクシーな演奏者、コントラバスのソン・ミンジェは、世界的権威のダブルベース国際コンクールでの16歳最年少優勝など、独自の境地を繰り広げる“ダブルベースの皇太子”。音楽の世界でだけ生きてきた彼らを、語る合間に盛り込まれた様々なエピソードが終始笑いを誘った。
特に「ナムギルさんの歌手としての可能性は?」との質問に、「厳しい質問ですね…」と、言葉を濁して見せるメンバーへ、拗ねまくるキム・ナムギル。ファンは笑いと共に微笑ましい視線を送った。また、3年ぶりの新作ドラマ「サメ(原題)」では、役を演じるに当たって最大のライバルを自らの人気ドラマ「赤と黒」のゴヌクだと明かし、ファンの関心と興味を集めた。来年には韓国版「パイレーツ・オブ・カリビアン」の映画主演を控えているとの発表もあり、日本のファンのラブコールが届けば、日本を皮切りに展開できるだろうと、アジアから世界へと羽ばたくキム・ナムギルを彷彿とさせた。
1部とは打って変わって、キム・ナムギル自身が大好きな曲を観客に届けたかったという、映画「セント・オブ・ウーマン夢の香り」の中から、アル・パチーノがタンゴのデュエットを踊る名シーンで使われていた、”ポル・ウナ・カベーサ”。そしてOLYMPUS ENSEMBLEからは、韓国と日本のファンを強く繋ぐきっかけとなった代表的ドラマ「冬のソナタ」を始めとする、韓国ドラマのOSTメドレー。「天国の階段」や「シークレット・ガーデン」、そしてキム・ナムギル出演のドラマ「赤と黒」「サメ(原題)」のOSTなどが、流れるようにしっとりと演奏され、クライマックスでは、キム・ナムギルの日本デビューシングル、「ROMAN」を披露!
「僕がアンサンブルという映画を作ろうと思ったのは、強い個性が1つの場所に集まる事は様々な困難が伴いますが、集合したら素晴らしい音楽が生まれ、音楽を創作し演奏する姿は自分の演技にも大きな影響を与えました。韓国と日本も同じです。お互いの違う部分をきちんと認識して理解を深め、自分のものとして受け入れて両国が力を合わせれば、アジアの人々はひとつになり、世界中が仲良くなれるのではないでしょうか。それぞれが持つ良質の文化は和解のための素晴らしい道具となり、共有できるようになる事が自分の夢です」と、熱いメッセージを伝えた。
新進気鋭のアーティストたちが、世界が絶賛に裏打ちされた実力を惜しみなく生かして、ひとつの思いを音色に重ねていく。フリーダムな編成と緻密な編曲で、正統クラシックから現代音楽、ポップにいたるまで、幅広いレパートリーを独創的なステージで聴かせていく。全く新しいクラシックステージの展開こそが、“OLYMPUS ENSEMBLE”の“新世界”。
今回、その真骨頂を発揮したOLYMPUS ENSEMBLEを通して、キム・ナムギルのすべてのファンに、クラシックの風が優しく、しなやかに、心地良く、吹いていった。そして、 彼らの色に染めきった韓国の愛唱歌「アリラン」で、コンサートは別れを告げた。[文:KOREAREPORT INC]