「ところで君たちは何でうちに入ろうと思ったの?」
運ばれてきたカツ丼をかきこみながら、吉田係長はそう言った。
「いや、もともと興味があった分野の仕事ですし、鶏口となるも牛後となることなかれっていうか、、、大きい組織だと自分がやりたいこともできないかなって思ったん・・・」
「!!!!!!」
「そうか、実家が駄菓子やさんだったんだ!?へぇ、どこの??西沢4丁目の交差点の??もしかして『はんだ屋』?」
「!!!!!!!」
「えええ、そうなんだ!?俺も小さいとき、お小遣いもらったら行ってたよ!!あそこのおばさん優しかったなぁ、、、え、じゃああのおばさんがパクラ君のおばあちゃん?」
「!!!!!」
「そうなんだぁ。あれから大体20年くらい経つけど、、、おばあちゃんは元気?」
「!!!」
「そりゃたまげた、102歳で現役バリバリとはすごいや、恐れ入ったよ。また今度お店に行ってみるよ。」
伝票を持って席を立とうとすると
「これは新人研修だから」
と言って吉田係長がおごってくれた。ありがたい。
「午前中は会社の説明ばっかりだったけど午後は何をするんだろうね」
「!!!」
「はは、それだといいね。」
「いやいや、吉田係長、それは困りますって」
そんな軽口をたたきながら、俺たちはボロボロのハイエースで午後の研修場所兼取引先である極楽物産(有)貝塚西倉庫に向かった。
研修前に辞職してしまった子の名前は結局わからないままだったけど、楽しい同期に楽しい上司、思った以上にいい社会人デビューになんじゃないかな。
「え~っと、これから午後の研修先でありうちの重要な取引先でもある極楽物産さんの倉庫で簡単な作業をしてもらう。作業って言っても、箱をトラックに積んでいくだけだから安心して。丁度人手が足りなくて困ってるんだ、この時期忙しいから。あとこれは一つ忠告。絶対に、箱の中身の話はしないこと。それだけ守ればとってもいい人達だし、楽な仕事だから。」
「は~い」
箱の中身を聞かない、それだけ注意すればいい。なんて簡単な仕事なんだ!