俺日記 | やわらかな光 ~ヤングパーソンクラブの部屋~

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ヤングパーソンクラブ a.k.a. ヤンパクラ

駅から歌いながら来たの??ずっと?すごい大変だね.....えっ、楽しいから全然大変じゃないって??まぁ、そうなのかもしれないけど、やっぱりすごいよ、こんなに寒いのに。

俺は温かい紅茶を淹れながら、なるべく言葉を選んでそう言った。


!!!!!

ボーカルのパクラ君(あだ名かな?)がうなづく。

確かに場所によってはお客さんの反応も厳しいし、心が折れそうな時もあるよ、それでも音楽が好きだから、こうして続けてるんだ。
もちろん音楽だけで食べていくことは難しいから、バイトや株で生活はちゃんとできるようにしてね。

演奏中とうってかわって落ち着いた雰囲気の藤木君が紅茶をすすりながら、ゆっくりと話した。

水原公園で見かけた2人組(デュオ?)は、わくわくサポーターズと言うらしい。結成から五年くらい、ライブは毎週月木金、関西を中心に色んな街で演奏しているらしい。俺が気になってた曲は『ほっかほっか飯』という曲で、最近できたばかりのものだそうだ。雨の日も風の日も雪の日も、月木金は路上でライブをしているらしい。話によると昔、結構有名なフェスにも出たことがあるみたい。

そんなバイオグラフィーを一通り聞いたあと、メールアドレスを交換して二人とは別れた。
すっかり周りは暗くなっていたので楽器をしまっててくてくと駅のほうへ歩いていった。

なんか、かっこよかったなぁ。曲はともかく、好きなことを一生懸命やってるひとって格好いいもんなんだなぁ。

明日の営業で使う資料の打ち合わせをしつつ、親父に今日の話をした。

なんだ急に。しかし面白い子たちだなぁ、歌を歌いながら全国行脚かぁ、父さんも若い頃はボロボロのギターとボストンバッグ一つでアメリカに行ったもんだよ。向こうでメンバーを見つけてな、バンドを組んだんだ。音楽が鳴っていると人が集まってくるんだ、国籍なんか関係ないんだよ。俺が、俺の国の言葉で唄うだろ、でも会場にいる皆にはそれぞれの国の言葉で伝わるんだ、それがわかるんだ。心がロックするんだよ!俺は確かにあの時、ロックしてたんだ。

親父は一目でそれと分かる嘘をついた。親父は20代は板前をしていたが、30になってこの会社を立ち上げたと俺は知っている。俺は気づかれないように相槌をうち続けた。

時計の針は午後9時。
明日も朝は早い、今日はもう風呂に入って寝るか。

親父は押入れから、ボロボロのギターを引っ張り出してきた。