YU-A
あなたにある物語のあらましを話します。
主人公は小さな男の子です。
彼は、人生に失望して旅に出るのです。
なんだかピンと来ないでしょう。
子供の人生は希望でいっぱいなはずで
失望や絶望とは無縁のように思えるから。
でも、子供だって失望するのですよ。
大切なものを失ったら、誰だって深い悲しみに心を侵されてしまうのです。
少年は、パパとママを亡くし、独りぼっちになってしまったのです。
引き取られた先の親戚のうちには
彼の居場所はなかったのです。
彼の願いはただ一つ、
パパとママがいるところに行きたい。
少年は家を飛び出し、小さな足で歩き続けました。
どれくらい歩いたのか、少年の目の前に深く大きな森が現れました。
昼間でも暗い森の中では
傷つき、疲れ果てた種々様々な生き物たちが
冷たい土の上に横たわり
永遠の眠りが訪れるのを待っています。
生き物たちはみな、
我が身に訪れたあらゆる事柄
悲しみであれ、苦しみであれ、その全てを
静かに、穏やかに、受け入れているようです。
少年は森の中でも特別大きな木の根元にしゃがみ込み
他の生き物たちと同じように
その時が来るのを待つことにしました。
傷つき、疲れ果てた種々様々の生き物たちと
今の自分は似ているように思えたからです。
時折、生き物たちが今際の際にあげる声が、森の静けさをやぶります。
少年の小さな体、傷ついた心は、未知の恐怖に震えました。
形容しがたい孤独感が、今にも正気を奪っていきそうです。
少年は瞼の裏にパパとママの姿を描きました。
そして、いつもママが歌ってくれた歌を
か細い声で口ずさみました。
その時、少年の頭上で木の枝がバサバサと動いたのです。
綺麗な羽を羽ばたかせ、舞い降りてきたのは一匹のカナリアでした。
歌を奪われたカナリア
カナリアは戦乱の激しい彼の地で
平和のために歌い続けました。
硝煙の匂いの中で、人々の悲痛な叫び声の中で
カナリアは歌い続けたのです。
けれど、カナリアの声は
誰の耳にも届かなかったのです。
恐怖や混乱に侵された人々は
むやみやたらに乱射される銃弾で
美しい物を美しいと感じる心を殺されてしまったのです。
争いが奪うのは“いのち”だけではありません。
もうこの世界に、平和が訪れることはない。
カナリアは絶望し、彼の地を旅立ちました。
私はもう歌えない
嘆くカナリアに少年はささやきました。
それでも
誰も君から、その美しい声を奪えなかった。
誰も君から、その美しい声を奪えなかった。
カナリアの瞳から、青いガラス玉のような涙がこぼれ落ちました。
カナリアにはその言葉だけで十分だったのです。
カナリアは自分から歌を奪ったのは
自分自身だったのだと
そのことに気づいたのです
自分自身だったのだと
そのことに気づいたのです
どんな苦境に立たされても
どんな窮地に追い込まれても
固く心に抱いた意欲や信念は
誰にも奪えない。
どんな窮地に追い込まれても
固く心に抱いた意欲や信念は
誰にも奪えない。
それを奪うことができるのは
他でもない自分自身だけなのです。
他でもない自分自身だけなのです。
カナリアは歌いました。
大地を吹き抜ける涼やかな風のように
透き通った美しい声で
歌い、羽ばたきました。
大地を吹き抜ける涼やかな風のように
透き通った美しい声で
歌い、羽ばたきました。
ありがとう坊や
カナリアは囁きました。
声の限りに歌うわ
たとえ誰の耳にも届かなくても……
もう二度と、私は私から歌を奪わない
たとえ誰の耳にも届かなくても……
もう二度と、私は私から歌を奪わない
カナリアの姿を見送った少年は
立ち上がり、再び歩き出しました。
立ち上がり、再び歩き出しました。
物語は続きます。
少年の旅はここではまだ終わりません。
少年の旅はここではまだ終わりません。