私は自分の子供が小さい時、食べる事に関して、とにかくしつけを厳しくした。箸の持ち方、食べ方、当たり前かもしれないが、彼らは私の前では今でも正座で、食べる。
そして子供にしつけができ、きちんと食べれるようになるまで、一切家族で外食をしなかった。
そして、一番上の子が、3歳の時、やっと初めて家族で外食する日がおとずれた。
彼の一番最初の外食。焼肉だった。
彼は初めての外食に、かなり興奮していたが、いつもの家でのとおり、座敷にあがり、テーブルの前できちんと正座して、焼肉を食べていた。
しかし、そんな彼の興奮をおさえられない出来事が起こってしまったのだ。
興奮した彼は喜んだような大声でこう叫びその声に周りの客が注目した。
「あー!あー!おとうたん!おとうたん!カブト虫!カブト虫!」
はっきりではなく覚えたての単語を並べてだったが、確かにカブト虫を訴える彼がいた。
彼の斜め前くらいの床にはでっかいゴキブリが鬼のようなスピードで去って行った。
それをさらに指で追いかけ、
「おとうたん!おとうたん!あっち!あっち!」
必死で言葉にならない言葉を連呼し、私に捕まえて!と言わんばかりの表情の彼。
「……」
ゴキブリ嫌い+余りの衝撃に私と周囲の客は凍りついた。
私はひきつった笑顔で
「ほんとだねーおとなしく食べようねー」
としか言えなかった
冷たい空気の中熱い焼肉を食べる若干27歳の父であった……
それ以来、しばらく焼肉屋さんが嫌いになった。
妖怪ヒデリン
※全て実話です。
