sug life / baroque | 夕暮れビジュアル鑑賞会

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sug life/Fire Wall Division
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そんじゃbaroqueの「sug life」です!

このCD2枚持ってます()。最初は通常版を買ったのですが、中古屋で初回盤を発見!ついついね()。というか初回盤の存在を知らなかったのもありますが

紙ジャケの初回盤って多いじゃないですか、あれ好きなんですよね~。コスト的にはプラより安いらしいですが、紙だと複雑に折りたためたり色んなギミックがあったりもして楽しいですからね。アートワークと音楽性がリンクしてて見た目的にも好きだし、歌詞カードも普通とは紙質が違う(和紙っぽい?)など凝っています。

 

ま、そんなわけで

この作品を持って、baroqueは一度解散します。個人的には一番好きな音楽性だったので残念です。

初めて聞いたときはなんだこれ????ってなりましたが、たぶん最初に聞いた人はだいたいそうなりそう。しかし聴けば聞くほど好きになりましたね、全然キャッチーですし




sug life

01. -

SE。読めなければPCで絶対に表わせられない文字なので、iTunesなどではこの表記です。

 

02. style ★★★★

前曲から繋がる実質的な1曲目。エフェクティブかつ荒々しいギターに、ドラムンベース的なリズム隊、AメロではささやくようなボーカルがまさにV系シューゲイザーと言われる所以。ギターによるピロピロしたフレーズが浮遊感を出していて、別世界を漂っているようで気持ちいい。爽やかなんだけど、無機質な音使いが寂し気を醸し出す。声は張っていないし演奏もサラッと流れていくのに、サビはエモーショナルに響いてくる。

 

03. ガリロン ★★★★

こちらも方向性としては同じですが、こちらはラップ風でミクスチャーに近いか。轟音ギターと忙しないドラムは実に爽快。音に埋もれがちですが、サビもキャッチー。「病む事なかれ さあ歩もう」と歌う歌詞は前向きさがあり、耳にささるようなサウンドと共に、鬱々とした現実をぶち壊してくれそうなエネルギーに満ちています。見た目はクールだけどその中に熱いものを滾らせている感じ

 

04. 歪 ★★★★★

シングル盤と同じくガリロンとつながるように入るミクスチャーロック。といっても爽やかさはなく、ラップに乗のせたダウナーな歌詞が印象的。前曲以上にギターリフも重々しい。その分サビでは声の重ね方も相まって、マイナー調なのに高揚感がありエモーショナル。

社会の波に呑まれながらも生きていかなければならない人生を、辛辣に歌った歌詞もまた秀逸。「恨む事もあるだろう 恨まれる事もあるだろう」「意地になって心からの笑みを」など、やるせない日々も乗り越えて行かなければと思わされる。

baroqueの中で最も好きな曲

 

05. rump

ループするアコギのアルペジオと、スペイシーなアナログシンセが絡み合い、これまた別世界に入り込んでしまったかのよう。サイケなんだけど情緒があるというか

 

06. ヒトのイロ ★★★☆

単体で聴くと薄いイントロですが、前曲から続けて聞くことでグッと力強さが変わります。同じく坦々としたアルペジオに憂いのある歌声はどちらかというと暗めなんだけれど、サビでは穏やかなメロディとハモリが広がりを持たせます。歌も演奏もループしているように聴こえて、段々と表情を変えて包み込んでくれるような温かさがあります。

恐らく今作で一番地味ですが、それ以上に独特な曲。歌も演奏もいいのですが、あまりにBGM的な聞こえ方なのが少しもったいない

 

07. exit ★★★★☆

ひたすらリムショット(カッカッって音)を続けるドラムが印象的なバラード曲。終始優しい音使いの中にノイズも垣間見れる。2分半でようやくサビになり、そこからは演奏も力強さを増して壮大な音世界へ。楽器の音はとてもシンプルでそこまで音が詰まってるわけでもないけど、歌詞にも あるように宇宙空間を漂うようなスケールの大きさがある。ラスト再び穏やかな余韻を残し終わっていく。憂いを帯びたサビの歌声もスッと体に入る様な透明感がある。言ってしまえば雰囲気一本勝負で6分半と長いけれど、もう終わり?ていう物足りなさがある、いい意味で

 

08. ila.  ★★★★★

レゲエ・ヒップホップの要素も交えたシングル曲。これもサビまでは穏やかですが、イントロのクリーンギターの絡みや跳ねるベースラインは楽し気。倦怠感のあ るラップから包み込むようなサビへ、これがまた穏やかで美しくて、癒しすら感じる。次のラップパートは力強く前向きに、心に訴えるメロディと音です。

日々募る疲れや寂しさを受け止めてくれているかのような、抽象的だけれ前向きな歌詞もとても好き。「此処に在る。何処にでも在る。今を生き 日々積もる幸せ。」、そんなことも気づかせてくれるかもしれません

 

09. bug

インスト。シングル盤にも同じ流れで収録されており、次曲のイントロの役割を果たしている分普通のインストよりも好き

 

10. nutty a hermit. ★★★★

浮遊感のあるイントロから囁くようなAメロ…っていうのは他もそんな感じですが、こちらは音もメロディも明るい。疾走感のあるサビはとてもキャッチーで聴きやすい。スクラッチなどヒップホップ要素を取り入れたミクスチャーロックだけど、簡単にカテゴライズしにくいロックです。でも今作では最もシンプル、それが逆にこのアルバムでは際立ちますね

 

11. sound of respire ★★★★

アコギをメインにした優しいミディアム曲。ラップ調の歌やバックの雰囲気としては「ila.」や科インディーズ時代の「baby baby」に近く、メロディの起伏は少なく終始穏やかで3分半と短め。かといって物足りないというわけでもなく、良い箸休め的な役割

 

12. キャラメルドロップス ★★★★★

インディーズ時代の音源を、今作風に録り直したバラード曲。この作品では珍しい、ストレートな恋愛系の歌詞。未練たらたらな失恋ソングですが、メロウな歌と演奏はどこか枯れた味わいがあり、切なさを引き立てる。特に間奏後の「でも 今でもキミが…好きだよ~」の部分は、つらい別れを経験している程、感傷的な歌声が心に響いてくるんではないでしょうか。特に男は。聴いてるとマジで色々思い出してきます(笑)

ビジュアル系では美点とされる"劇的さ"ではなく、等身大の想いを乗せた美しくもノスタルジックなメロディが最高です。

 

13. グラフィックノイズ ★★★★☆

再びアップテンポになり、「style」と同系統なものの、更にアッパーで爽快。キャッチーなサビの歌声は伸びも張りもあり、豪快なギターも心地よい。まさにライブのラストに相応しいノリの曲。

 

14. -

SE。部屋で適当に録ったようなアコギと鼻歌が、タバコに火を付ける音や物を置く音も入りつつ、余韻を残しラストを飾ります。

 

 

総評[お気に入り度 99 / オススメ度 82]

難しい演奏もしていないし、歌もさほど技量があるわけでもない。でも、ビジュアル系バンドのアルバムとしてこれ以上の完成度を誇る作品はあまりないと思います。

言葉で伝えるが凄く難しい音。色んな音がてんこ盛り、だけどそこにあるべきしてあるような。入り込んでしまえば場所も時間も忘れて音に漂っていられる心地よさがある。感覚で聴く音楽というか

もう、大好きです(笑)。普段好きな曲だけでプレイリストを作ったりしますが、これはアルバム全体で一つの曲というか。CD1枚として聴いた時の強さが半端じゃないです


「我伐道」の荒々しいギターサウンドは残し、新たにシューゲイザーサウンドへ踏み入れた。

Dragon Ash的なラップロックもあったり所謂ビジュアル歌謡ではないから、これを受け入れられない人も多いかもしれない。でもメロディの良さは間違いないと思いますよ。ただボーカルも楽器と同じような位置づけになっていて結構聞き取り辛い点が多いかな

クラブに入り浸って音を研究したと語る通り(遊んでただけだろって気もしますが笑)、リズム面でもかなり作りこまれている。ドラマー不在を逆手に取ってか、人間ではあまり叩かないようなリズムの洪水。実際は生ドラムも多いですが

ギターやベースだけに執着するのでなく、音楽を作ることが楽しくて仕方がなかったんだろうなと思わされるほど、意欲的な作品。この音楽性は圭のソロ作品でも濃く見られます

 

もともとユーロビートとか聞いていたりしたので、バンドサウンドに囚われることはないので思うのだけど、もっともっとこの手のV系が増えたら面白いなあ。もちろん今のbaroqueの音楽も大好きですが。今作で音楽制作面での高みに登ったからこそ、現在の歌モノ路線を思いっきりできているのかも

 

最近baroqueを聴き始めた人に限らず、多くの人に聞いてもらいたい作品です。