REAL ME -121ページ目

不完全。

君は憔悴しきっている。
今日も言葉を発することなくふらふらとどこかへ出かけていく。
その背中をただ見送ってから、ある事を思いついた。

彼は着物が好きだ。
着付けもお手の物で、前に近所に住む女の着物が走り回ったせいで乱れたときもすぐに着付け直していた。

普段滅多に着物など着ることないが、君に少しでも元気になって欲しくて、
いや、それはあくまでも綺麗事で本当は少しでも自分を気に掛けて欲しかったんだと思う。

箪笥から母の着物を引っ張りだして、遠い昔に教わった記憶を掘り起こしながら着てみる。
途中までは順調だった。
帯が無いことに気付くまでは。

箪笥の中を散々ひっくり返して探したけれど、帯は見つからなかった。

ひどく落胆した。
所詮私は何をやっても中途半端になってしまう。

君を慰めることも、自分を見てもらうことも叶わない。

私が今出来ることは、彼が帰って来る前に着物を脱いで、箪笥に元通りにしまう事だけだ。

一度終わった物語の続きは‥

悲惨なものだった。

どうしても彼の周りには不幸が付き纏うらしい。

心の闇は一層深くなり、誰の声も届かなくなる。

毎日のようにあの娘が絶命した砂浜に通い、海を眺めるわけでもなく、冷たい砂の上に腰を下ろし、俯いている。
その姿は亡霊のようで、近所の住人達からも気味が悪いと様々な嫌がらせを受けたが、彼は何をされても無反応だった。

私は彼が気の毒すぎて声をかけるどころか近付くことさえ出来なかった。

少し前までは幸せそうな笑みを浮かべていたのに。
運命は残酷だ。
またしても彼から全てのものを奪っていった。

こんな結末なら、知らずに死ねたほうがよかっただろうに。

日々痩せ細っていく彼は、生気を無くしかけているのが一目瞭然で、近い内にあの娘や彼の親友のように息絶えるのが目に見えている。

私は静かに彼を逝かせてあげようと思う。

人間にも発情期ってあるの?

えっちしたいえっちしたいえっちしたい。