頭が痛い。
どうやら夢でも見ていたらしい。
誰か、大事な人を呼んでいる夢。
その人は私が止めるのも聞かずどこかへと消えた。
私は酷い絶望と喪失感に襲われて――
そこで、目が覚めた。
「おぅい、そこの君、そんな所に居ると風邪引くよ?」
後ろの方から声がする。
何故か――少し懐かしい。
「おーい!聞こえてる?」
誰だろう。振り向いてみると、
「きゃぁー!」
ポケモンだった。
「な、何でここにポケモンが居るのよ!ここは…あれ」
見渡すと、森の中だった。
少し開けた土地に、少し小さめの綺麗な湖がある。
「ここは…どこ?」
頭でも打ったのか、何も覚えていない。
私に声をかけてきたポケモンが、ふぅ、と小さなため息をついた。
「君…まさか次は『私は誰』、とか言い出さないよね?」
混乱してただただ呆然とする私に、そのポケモンは呆れ顔だ。
「ここは洸胡(ひかりこ)。夜になると銀色の月が湖面に映って綺麗だよ。
ところで…君、誰?名前は?どこから来たの?」
「洸胡?そんな所聞いた事が…それよりあなたこそ誰?何で人間の世界に
ポケモンが居るの?何で??」
そう聞くと、そのポケモンはくくっと笑った。
「人間の世界?君、本当に何にも覚えて無いんだね。ここはポケモンの世界さ。
ボクはヒノアラシの焔雅。で、君はイーブイ。」
「え?」
「だーかーらぁ、君はイーブイなの。ポケモンのイーブイ。」
湖面には、確かにイーブイの姿の私がゆらゆら揺れている。
「私…ポケモンになっちゃったの!?」
「そうそう。やっとわかった?」
焔雅はにやりと笑う。私は怒る気すらわかなかった。
「それで?君の名前は?」
「わ、私は…」
その瞬間、自分が名前すら覚えていなかった事に気付く。
「名前――」
ぽろぽろと涙がこぼれる。
「わわっ、泣くなよッ。もしかして…名前、覚えてないの?」
頷く私を見て、焔雅は考え込む。
「よしッ、決めた。ボクが名前付けてあげるよ。
君は――」
「琉々香」
「どう、いい名前でしょ?君はこれから琉々香ね。
っと…こんな所に居るのもアレだし、ボクの家に来なよ。
その様子だと、帰る所無いでしょ?」
「ありがとう」
私は琉々香、イーブイ。
名付け親は、ヒノアラシの焔雅。
これから、新しい生活が始まる。