貧乏探偵の俺は、よく本屋で立ち読みをする。たまに図書館でも調べものをするが、本屋の方が最新の本をタダで読めるので便利だ。

この間、面白い本に出会った。著者は、右翼団体のボス。「天照会」の須佐野会頭だ。

 

「天照会」は、国際平和、人権尊重、環境問題、伝統文化の保護、教育の機会均等などを目的としたNGO団体で、およそ右翼団体のイメージとはかけ離れたグローバルな活動を行なっているようだ。

『皇』を頂点とした国家作りを提唱している辺りは、さすが右翼という感じだが、ただ周辺国に対して虚勢を張る強権国家体制を唱えたりしない、特権階級だけが優遇される格差社会ではなく、平等で誰もが安心して暮らせる社会を目指すという方向性は、まるで左翼政党が提唱しているような内容だ。

 

 

俺は、この人が本心で言っている事なのか、猜疑心が拭えないまま読み進めた。

だが、日常活動の中で子ども食堂を運営したり、LGBTQのイベントを行なったり、里山復活活動や河川や海岸の清掃活動、伝承文化保護基金、あしなが育英基金など、本気で地道に取り組んでいる様子がうかがえた。

 

いつの間にか俺はこの人のファンになり、もっと為人を知りたいと思い始めた。

そこで他の書物を探してみると、対談集みたいな物が見つかった。これで、本人の信条や本音も分かるだろうと思った。

 

まず、『皇』の後継者は男系に限らず、第一子を据えることとの考え。すでに西洋の国では、多くの女王が存在している事を思えば、古いしきたりに縛られない先進的な思考である。

 

次に、世界平和と国民の安寧を祈念する『皇』の考えを尊重し「核禁止条約」を批准し、平和憲法に恥じない世界平和の牽引者となる事や平等で格差のない子供から老人まで安心して暮らせる政策の実現を提言するなど、政治家顔負けである。

 

 

特に、今懸念されている東アジアの有事については、

 

「見識のない政治家どもが、有事に備えて軍備を拡大することが、抑止力になるなどとほざいているが、それこそが仮想敵国の思う壺。緊張を高め、一触即発で先制攻撃などしようものなら、待ってましたとばかりに相手に戦争の口実を与えてしまう。先の大戦で、犯した過ちの二の舞になってしまう。相手は、喉から手が出るほど欲しかった日本の南西諸島をいとも簡単に奪ってしまうだろう。」

 

とかなり的確な指摘をされていた。

 

同じように国内の基地問題では、

 

「そもそも独立国である日本に、他国の軍事基地があり、領空の制空権を完全に握られたままの状態を放置している事自体が、主権国家としてこの上ない屈辱であるし、元首である『皇』にも国民にも申し訳が立たない。さらに、地位協定によって県民に長らく恥辱や辛酸を強いている事も許し難い売国奴的所業である。」

 

と憤怒の感情を隠さない。

 

 

氏は、異国のカルト教団に取り込まれた現政権や与党を快く思っていない。もちろん、利権に群がるだけの「安国会議」に対しても敵愾心を持っている。

しかし、その心根は弱きを助け強きを挫き、道理と正義を重んじる孤高の侍なのだ。

 

 

この人なら、もしかして腐りきって汚れきったこの国を、もう一度「大洗濯」してくれるのではないかと僅かな希望の灯火を見出した俺は、久々に清々しい気持ちで本屋を出て帰路に着いた。