新しい利用者さんがきた。

 私は、理学療法士になってから、30年ぐらい経っている。けれど、今も、新しい患者さん、利用者さんに会う時はとても緊張する。

 実際にそのひとを見るまでは、本当に憂鬱。私がその人とスムーズにやり取りできるかな、急に怒ったりする人かな、とか、考えてしまう。


 施設に入所する人は、基本的にはずっとここに住むわけで、本人が来られる前に、私たちスタッフが事前にもらった情報を元に、本人にあった環境を準備する。

 そして、前情報は、シビアなことが多い。

 今回も、周囲の人とうまく折り合わなかった云々、申し送られていた。

 前日晩から私はビビってて、朝職場に行く時、めっちゃ嫌な気分だった。


 お昼前に、食堂でその人を初めて見た。

 車椅子に座ってキョロキョロしておられる。

 そりゃ初めてのとこだしな。

 穏やかな雰囲気。聞いてたのと違うけれど、今はまだ緊張してるのだろうな。

 お互い様か、と思うと、少し肩の力が抜けた。

 

「こんにちわ〜、職員の〇〇です。よろしくお願いします」


 結構大きな声が出た。自分でも少し驚くぐらい。吉本新喜劇で玄関前の挨拶する場面で、言っているような、ちょっと間延びした、こんにちわ〜。掠れてもこもってもない、スッキリと通った声。

 なんか‥朗らか系の言い方ができた!びっくり

 ここに来て7年、7年イチのベストなこんにちわ〜が言えた気がする。めちゃ嬉しい。爆笑


 その新しく来た方は、こちらを見て、よろしくお願いします、と言って、また周囲を見回していた。


 私は、元々関西人でもなく、くちごもりやすい癖がある。パッと言葉がでないし、緊張するから早口で何言ってるか分からない。「え?」と聞き直されることもよくある。特に出会って最初のあいさつが、本当めちゃ緊張する。

 何がどうなって、あんな風に言えたのか分からないけれど、私にもできるんだ照れと思うと、こわばっていた口周りと肩が軽くなった気がした。