株価の乱高下(裏で躍動する某証券)や上場維持容認発言などいろいろあったこの2週間であったが、オリンパス・ウォッチャーとしてもっとも看過できないネタが出てきた。


オリンパスの粉飾疑惑、金融庁が12年前に黙殺



さすがにこれが事実だったら、日本の金融市場の信頼が地に落ちる。昔の行政の不始末とはいえ、いくら金融庁が銀行証券の監督機関に過ぎず会計制度の監督が茶番とはいえ、そうゆう問題ではすまされない。


今回の問題は、色々なメディアが本当の意味でのスクープを抜いてくれている。上記の東洋経済しかり、FACTAしかり、問題の確信である中川氏(元野村、アクシーズ代表)の居場所(香港)をつかんで突撃したロイターしかり。これらが本当の意味でのスクープであろう。何度も例に出してすまないが、日立と三菱重工統合とかゆうインチキスクープを抜いた某経済紙、単に明日報道される企業広報を前夜に抜いたりすることなんか、大したバリューは無い。


ガバナンスを担うべき社外取締役と監査役、監査法人、証券会社(セルサイドとして、バイサイドとして)、そして会計制度や金融市場を監督する金融庁、いずれもが適時の問題解決には無力であった。よく監査法人は何をやっていたんだとか、社外役員を義務づけろとか、そんな議論が決まって出てくるのだが、経営陣が結束して秘匿すれば、まぁ問題は露見しないであろう。残念ながら、それが現実だ。


ではどうしたらいいのか。施策として、ひとつの案がある。近年アメリカでずっと話題になって、5月に法案化されたドット・フランク法がそれである。ご存知ない方もいるだろうから、参考資料を掲示しておく。


Protivity

モリソンフォスター


要は内部通報者にもっとインセンティブを出して、社内でよく不正を知る人から、直接監督機関に直言してもらう仕組みづくりである。こんなの会社忠誠心の低いアメリカ社会には有効だけど、ムラ社会・事なかれ主義の日本になんか馴染まないという意見もあるだろうし、そうゆう側面は否定しない。制度が整備されたからといって、内部通報が即日わさーと出てくるとは思えない。


ただ、忘れてならないのは今回のオリンパス騒動の発端は、FACTA誌への社員からの内部通報だったことだ。個人的には、この内部通報を報酬で報いよう、というのは不正発覚に有効だと思う。社員としては現在いる会社の膿みを出すことで、会社業績が悪化し自分の待遇が悪化することにつながるとしたら、普通は通報しないことが経済的には有利なのだが、だからドッド法は報酬インセンティブでバランスさせようとするものである。


日本でこの制度が定着するのはあっても当分先の話だろうが、内部通報をうまく機能させようとするのはいいアイデアかと思う。そして、監査している監査人からの通報も受け付けて欲しい。監査業務を被監査会社との関係のみで完結させるという前提がそもそもおかしいのである。監査人が不正の尻尾をつかんだら、経営者との(出来レース)ディスカッションや監査(閑散)役への連携という不毛な手段に出るのではなく、金融庁への通報による強制力のある調査に打ってでるのはどうか。


政策提言ぽくなってしまったが、現状では経営者不正に対する有効策は無い、という結論を以って筆を収めたい。