今回は④会計制度について。公認会計士という職業上、監査の現状から入っていきたい。


<監査報酬>
これは単純に監査受任時の報酬多寡のみを問題とするのではなく、巷で噂されているオピニオンショッピングの可能性がある点が最も重要である。

※オピニオンショッピングとは、都合の良い監査意見をもらえる監査法人に監査を依頼することをいう。



09年まで:あずさ監査法人(KPMG)単体233M・連子174M
10年から:新日本監査法人(E&Y)単体約100M・連子約100M

※同時に、海外子会社の監査もE&Yに変更している。なお、後段の連子の報酬は「国内」子会社のみであり、「海外」子会社の報酬は非開示である。メンバーファームといっても法人格は別々だから、こうなっている。


新日本に変更後、ご覧の通り約半額となっており、ダンピングと問題視された監査人交代であった。監査を適切に行いコスト増加を自社努力で賄うような低価格戦略は正当化される経済行為であるが、不当なダンピングは業界を消耗に巻き込む行為でもあり論外であり、さらに問題なのはそもそも監査水準を下げてしまっていたのでは、さらに経営者の意向に応じるような監査だったのでは、と3重の問題があったのではないかとの疑念が生まれる。

粉飾が90年代から行われていたとのことで、前任のあずさ(旧朝日)はやばい。変更の経緯や現任ということで新日本もやばい。上場廃止かどうか知らないが監査は継続する必要があるので、その際はトーマツかあらたが「割と良い」報酬で監査業務を受注していくだろう。


<監査制度>
制度という大枠での問題に話を広げると、新日本・オリンパスに限った話ではなく、残念ながら氷山の一角と見ざるをえない。それほど、ここ数年の監査法人と大企業とのパワーバランスは崩れてしまっているし、監査人交代していなくても報酬切り下げを堪えているところも多い。この点は、監査業界としての構造問題であり、であるとすれば構造的な改革、具体的には監査報酬を被監査会社から受領する点や監査法人を指名する点などを是正すべきという古くて新しい課題に取り組む時勢なのではないか。


強調しておきたいのは、監査に携わる会計士は「オリンパスの監査法人は大変だなぁ」なんて傍観していられないことだ。構造的な問題を理解していないと、公認会計士制度というのは根底から揺らぐことになる。90年代末の不良債権問題、05年のカネボウ、11年のオリンパスと、浮上しては沈没する日本の会計制度と言えようか。まぁ、その点は海外も似たようなもんだが、それで日本が救われるわけではない。



さて、監査人の責任という点にもズームインしていきたいと思ったが、紙面と時間の関係上、明日以降に。