夏休み2日目の日曜日、

父が携帯ショップに用事があるというので

付き添うために実家に行ってきた。


駅前にあるお店までは

普通に歩けば10分ほど。

去年、足を骨折してから

ゆっくりしか歩けなくなった父と歩くと

30分ほどかかる。


骨折するまでは駅前のコーヒーショップに

よく出かけていた父だが

ほとんど外出しなくなってしまった。


久しぶりの歩いての外出に

父は時々立ち止まって

まわりの景色を堪能しているようだった。

「ここの陸橋も久しぶりやなぁ」

の父の言葉に少し寂しい気持ちがよぎる。

家が近ければもっと頻繁に来れるのに。


携帯ショップで用事をすませると

予想通り「コーヒー飲んで帰る」と父。

夕方の店内は運良く席が空いていた。

夕飯の準備をしてくれている母に

寄り道して帰ることを電話で伝える。

アイスコーヒーを飲みながら

30分ほど他愛もない話をして店を出る。


父の希望で、来た時と違う

少し遠回りの道で帰ることにした。

家まで無事に歩けるか心配だったが

一度歩いたことのある道だと言う。


歩きながら私は普段心配していることを

父に話す。

毎日少しでもいいから外を歩くこと、

歩けない日は家で体操をすること、

お酒や甘いものを摂りすぎないこと、

(血糖値が高いのだ)

父は素直に、うんうんと頷くが

おそらく守られないだろう。

少し認知症が出ているらしいのだ。

何に対してもやる気が出ないようだ。

元気で長生きしてほしい、と思って

あれこれ言うのは、

私の勝手な押し付けなのだろうか。


帰りは40分ほどかかった。

私は初めて歩く道だった。

途中、一度も休憩せず、

小学校や中学校、そして新しく建った建物の

前を通る時は説明もしてくれた。


父は昔から自分の好き勝手に生きて

家族、特に母に苦労をかけてきた。

母はよく離婚をしなかったなと思う。

父が好き勝手さえしなければ、

普通にしてくれていたら

(普通という言い方も抽象的だが)

我が家は平凡ながらも

幸せな家庭だったと思う。

それでも私は父を嫌いになることが

できない。


父といろいろ話せる散歩に

また行きたいと思った日曜の夕方だった。