この本は、主としては昭和天皇だが、「天皇家」とあるように他の皇族についても書かれている。
時代としては昭和20年に入ってから、マッカーサーが失脚して帰国するまでを描いている。
昭和天皇についてはよく書かれている本は良くあるのだが、その当時他の皇族は何をしていたのか、ということについて知れて良かった。
特に朝鮮併合後の李王朝は皇族になっていて、そのことについても書かれていてためになった。
とはいっても、終戦を迎えてからは昭和天皇オンリーになりましたが・・・
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この本で知ったが、皇太子は10歳を過ぎると少尉になるべく定められている。
が、当時の皇太子(現今上陛下)は任官していない。
皇族身位令第17条は、「皇太子、皇太孫は満十年に達したる後、陸軍及び海軍の武官に任ず」と規定していた。
天皇は、明治天皇が崩御して、皇太子になると、満11歳で海軍少尉に任官している。
ーー中略ーー
皇太子はなかなか任官しなかった。
昭和20年に入ってから、杉山、阿南両陸相は何回か、
木戸内大臣に軍の士気に関わるといって、催促したが、陛下は「うん」と言われなかった。
春頃から、天皇は連合国がカイロ宣言によって軍隊の完全解体を要求していることについて、木戸と話し合っていた。
皇太子は結局、軍服を着なかった。
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終戦時の皇室財産は、膨大なものだった。
皇室が所有していた土地は135万町歩におよび、面積にして日本の面積の3%を超え、
神奈川県の5倍以上に相当するという広大なものだった。
この中で、林野は帝室林野局が管理、経営したが、5億6千万石という木材の蓄積高は、
日本の総蓄積量の8%にあたった。
このほかに、御資財本と呼ばれ、日銀、横浜正金、日本興業銀行、日本郵船、王子製紙、関東配電、満鉄など29社の株、社債、国債、地方債などの有価証券が、終戦時には現金を合わせると約三億四千万円あった。
終戦時の日銀券発行高が286億円であったことを考えると、いかに大きなものかがわかる。
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枢密院が、憲法改正案について賛否を問うたのは、これが二回目だった。
憲法改正案は政府によって、6月20日から始まった第90臨時帝国議会に上程されたが、
それに先だって、6月8日に天皇の親臨を仰いで、枢密院で評決が行われたのだった。
そのときには、美濃部だけが、明治憲法の改正条項である第73条のもとでは、このような全面的改訂を行うことは許されない、といって反対し、賛否を取ると、立たなかったのだ。
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