生成AIの著作権 | よしぞう日誌

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漫画家・イラストレーター因幡よしぞうのブログ
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生成AIはここ数年で急速に広まりましたが、急すぎて法整備が整っていない部分もあり様々な問題が浮き彫りになっています。

 

今回はこのAI問題を……

 

・AIが学習用データを無断で収集することの可否

・AIが生成した創作物は著作権侵害になるのか?

・AIが生成した創作物に著作権が認められるか?

 

の項目ごとに解説していきたいと思います。

なお、こちらは文化庁が令和5年6月に発表した〝AIと著作権〟という資料をもとに2023年10月9日に書かせていただいた記事になります。文化庁の方でも「今後の検討課題」としている部分もありますので、後に変わる場合あります。その点は予めご了承ください。

 

※この画像はLINEのAIイラストくんで生成したものです。

 

 

AI創作物の作り方

生成AIの問題を語る前に、まずはAIでどのように創作物を作るのか、その手順を紹介しておきます。

 

AIではイラストなどの画像生成の他にも音楽や文章なども作ることができますが、僕がイラストレーターということもあり、とりあえずはLINEの〝AIイラストくん〟を使ってAIイラストを作ってみます。

 

まずはLINEのAIイラストくんを開いてどんなイラスト作るか決めます。

今回はイラストを生成するので〝イラストを作る〟を選択。

そしてイラストの内容は初音ミクをイメージして「緑色の髪の毛でツインテールの女の子」と指示(プロンプト)を入れる。

 

そして〝画像を生成する〟を選択してしばらく待てばできあがり。

 

AIイラストくんは簡易的な生成AIソフトですが専門的なソフトだともっと細かい部分まで指示(プロンプト)を入れて作ることもできます。

また、海外のソフトだとこの指示部分に英語を使わなくてはいけないものもあるので難易度は少し上がりますが、基本的には

「文章(プロンプト)で指示を入力し、それを元にAIが創作物を生成する」という流れは同じです。

そして画像(イラスト)だけでなく、音楽や文章なども生成可能です。

 

  AIが学習用データを無断で収集することの可否

AIは既存の著作物データを元に生成するので、創作物を作るには元になるデータが必要です。

その学習データをネットから〝著作者に無断で〟著作物を収集しているのですが、この〟著作者に無断で〟の部分がAIで問題になっている事柄の一つです。

 

文化庁の発表では、新しく法制化された著作権法第30条の4をもとに……

AI開発のための情報解析のように、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用行為は、原則として著作権者の許諾なく行うことが可能

としているので、一応は著作者に無断で使用しても法的には問題無いのですが、無断で作品データを収集されてAIで自分の作品そっくりなモノを作られて世に出されたらクリエイターとしたら堪ったものじゃないですよね。

 

なので海外ではAIソフトの制作会社を「自身の作品を無断で盗用された!」としてクリエイター達が集団訴訟をおこしています。

※判決はまだ出ていないみたいですが……。

 

そして日本でもネットで頻繁に広告が流れているゲームが、とある漫画家・イラストレーターさんの絵を無断で取り込んでAI生成して使っているのでは? という疑惑が流れ、こちらも訴訟準備中とのことです。

 

AIにはまだまだ法整備が整っていない部分もあるのですが、先ほどの著作権法第30条の4には〝著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、本条の規定の対象とはなりません〟とのただし書きがあるので不利益を被っているクリエイターさんへの救済措置は真摯に考えてほしいですね。

 

  AIが生成した創作物は著作権侵害になるのか?

生成AIでは著作者に許可無くで著作物を学習データとして取り込むことは合法となっておりますが、そのデータを元に作成した創作物はどうなるのか? ですが〝著作権侵害となるか否かは、人がAIを利用せず絵を描いた場合などの、通常の場合と同様に判断〟されます。

具体的には既存の著作物との「類似性」及び「依拠性」が認められるとそれは著作権侵害となります。

「類似性」及び「依拠性」の有無は、最終的には司法により、個別の作品ごとに判断されるものとなりますが、文化庁は……

 

◆AI利用者が既存の著作物を認識しており、AIを利用してこれに類似したものを生成させた場合は、依拠性が認められると考えてよいのではないか

◆AI利用者が、Image to Image (i2i)で既存著作物を入力した場合は、依拠性が認められると考えてよいのではないか

 

との見解を出しています。

 

ですので先程の〝ゲーム会社がとある漫画家さんの作品を無断でAIに取り込ませている疑惑〟については、もしこれが本当なら著作権侵害になる可能性があります。

※最終的には司法の場で個別具体的に判断されることになりますが……。

 

ただし、AIで生成した著作物を使用するのは既存の著作物との「類似性」又は「依拠性」が認められない場合は既存の著作物の著作権侵害とはならず、著作権法上は著作権者の許諾なく利用することが可能です。

なのでAIで生成した作品を使うこと自体は法的に全く問題ありません。

 

ですが、自身にそのつもりが無くても知らない間に(AIが勝手に既存の著作物に似せた作品を作ったりして)著作権を侵害してしまうケースもあり得るので細心の注意が必要です。

 

  AIが生成した創作物に著作権が認められるか?

こちら、文化庁の見解では……

AIが自律的に生成したものは、 「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではなく、著作物に該当しないと考えられます。

(例)人が何ら指示※を与えず(又は簡単な指示を与えるにとどまり) 「生成」のボタンを押すだけでAIが生成したもの

※プロンプト等

 

とあり、基本的にAIで生成したものは創作物としては認められない(著作権が無い)ので、先に掲載したAIで生成したこのイラストも創作物として認められないということになります。

 

ですが同じ文化庁の見解では「人が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したものと認められれば、著作物に該当し、AI利用者が著作者となると考えられる」、ともあり、このことから「短いプロンプトはダメだけど、長いプロンプトを入力すれば著作権が発生する可能性がある」と考える方もいます。

 

僕的には「じゃあ何文字までは著作権が無くて、何文字から著作権が発生するんだ?」と考えてしまうし、もし何文字から著作権が発生するというのが決まればその文字数まで指示を入れたらいいだけになる。

文化庁的には(曖昧な部分は今後の検討課題になるので)現在絶対に不可と断言できるケースで「簡単な指示」と入れただけだとだと思いますが、この曖昧な部分もAI問題の一つですね。

 

現在のところ、AIが生成した創作物については〝基本的に著作権は無いが人間による創造性が認められれば著作権が認められる。〟という立ち位置になります。

でもこれ、創作物としてはかなり微妙な感じになりますよね。

 

というのも通常の創作物なら生成した時点で作者に著作権が発生しますが、AIの場合は司法の判断が下りるまでは著作権が無い(有ると言えない)、つまり創作物としても認められないということになります。

作品を作る度に司法に判断を委ねなければならないのでは、創作物としての価値が著しく低くなります。

 

更に海外ではAIで生成された創作物については著作権を認めないという判決が相次いでいます。

なのでもし仮に日本で長文プロンプトで著作権が認められたとしても、海外では著作権を認められないのならば、海外展開を考える企業からしたら著作物としての価値はゼロになります。

 

更には著作権侵害の危険性もあるので、現在は多くの会社でAIを禁止している感じです。

※僕も仕事の相談でAIの使用は禁止ということを示されたことがあります。

 

ただし、先ほどの無断学習疑惑のゲーム会社のように、創作物としての価値は問題にしない(その会社はいわゆる使い捨ての広告イラストに使っていました)場合はコスト削減にもなるので使う企業も出てくるでしょう。

ネットの広告でも「AIイラストでは?」と思うような画像をよく目にしますし……。

 

AIの使用自体は法律的に問題無いのでそれ自体(使うか使わないか)はそれぞれの会社が決めることですが、クリエイターの立場としては既存の著作物及びクリエイターへの配慮はしていただきたいです。

 

 

さて著作権に気を付ければ使用自体は問題ないのでAIの利用方法についても意見を述べようと考えていましたが、もうすでにかなり長くなってしまったので利用方法についてはまた後日語らせていただきます。

(∩´∀`)∩

 

最後に一言……

 

僕的にはAIに対して正直面白くない部分もあります。

目指す作風が被る部分やお仕事が減ってしまう懸念などなど……

ただもうAI導入の流れは止められないと思うので、著作者の権利を守る使用ルールなどはきちんと決めてほしいです。

AIは既にある著作物を再構築することしかできないので、創作人がいなくなったらAIも廃れてしまいます。

なので創作人を守ってほしいです。

 

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因幡よしぞうは漫画家・イラストレーターです。

 

 

現在は漫画やイラストのお仕事の傍ら、YouTubeチャンネル〝因幡よしぞうCH〟にてアニメ動画を公開しています。

【ジャングルもんぐ】釣り好き虎キッズがろ君と釣り♪(アニメ動画)

 

 

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