ここは殺人の数だけ、彼らの名誉となる世界。
ここはレイプの数だけ、男の誇りとなる世界。
法などない。


カズは、もう立派な大人である。
なのに、まだ1人も人を殺していない。

とっくに百人斬りを終えた同士たちもいる。

カズは立派な大人である。
しかし、まだ童貞である。



カズは、人前に出るのがさらに怖くなり、
1人で岩山の洞穴に隠れてしまった。


カズ「くそぉ!何が百人斬りだ!俺だって、やるときはやる男なんだよ!今はまだ充電中なんだよぉ!!」

カズの声は虚しく、洞穴に響く。


カズ「ん?こだまが少し遅かった。まだ奥があるのか?」

カズは歩いていく。
すると、奥に行けばいくほど、
光のようなものがカズを包んでいくのだ。


カズ「なんだなんだー?!」


カズは光の向こうへと吸い込まれてしまった。



ここは目には目を代償とし、
命には命を代償とする世界。
一般的に浮気は罪である。
しかし、婚前交渉くらいなら、
まぁ、範囲内。


よしきは童貞である。
しかし、それは彼自身がそうありたいと思っているからだ。

よしきの友達はいう。
「自分の意志とかいって、お前、単に女が怖いだけだろ?言い訳だろ?」

よしき「だったとしても、お前には関係ない」


ある日、
よしきは、カフェでくつろいでいた。
大便を済ませようとトイレに入ると、
そこで、男が倒れていた。

よしき「大丈夫ですか?!」

男「はい、なんとか。」

男は目を覚ました。

男「こ、ここはどこ!?あなたはだれ?!」

よしき「私はよしき。ここはカフェのトイレです。恐らく、強く脳を振動させてしまったのでしょう。救急車を…」

男「あなたは、私を殺さないんですね」

よしき「はい?」


救急車が来て、男は介抱された。
特に異常はなさそうだったので、運ばれることもなく、そのまま、よしきとカフェをすることになった。


よしき「ところで、カズさんは、先ほど、私を殺さないんですね、とおっしゃいましたね」

そう、この男はカズだ。

カズ「はい。というか、ここはなんなんですか?!こんなにも人が密集していて。私みたいなよそ者がいるのに、だれも私を見ようともしない!」

よしき「あなたはどこから来られたんですか?」


カズは、自分の世界の話、また自分が童貞であり、人を1人も殺していない話をした。

カズ「いや、よしきさん。僕だってやるときはやりますよ!今がタイミングじゃないだけで、いつか人を殺し、たくさんレイプするんです!」

よしき「カズさん。何言ってるんですか」

カズ「はい?」

よしき「人を一度も殺めず、女性を犯さず、しかも、童貞ときたわけです」

カズ「べ、べつに今だけだよ!」

よしき「今のままでいいんです!!」


カズは、ポーカーフェイスだったよしきが、かなり目を開いて大きな声を出したことに驚いた。

よしき「童貞?いいことじゃないですか。誇りましょうよ。例え、あなたがね、ヘッポコで、臆病だったとしても、よかったじゃないですか。」

カズ「はぁ」

よしき「それにねぇ、人殺ししなかったんですよね?」

カズ「こ、これからだって」

よしき「もうしなくていいんです!!!」



よしき「この世界では、人を1人殺したことで、生きる場所さえも失うんですよ。あなたは、たまたま人を1人も殺してない。それは、ラッキーなこと!いや、この世界では、みんなそうですよ。人を殺さなかったということに、へたれで、臆病なその性格を感謝したらいいですよ」


カズは戸惑った。


カズ「で、でも、かっこわるいだろ?」

よしき「あなたは、最高にかっこいい!!」