クレアランス クレモンズ(Clarence Clemons)

 1942-2011 サックスフォン奏者 

 

 

元ブルース スプリングスティーン イーストリートバンドメンバー

 

クレアランス クレモンズ-Who Do I Think I AM.は、クレモンズの親友だった監督 ニック ミード (Nick Mead)が 2009年にクレモンズと共に中国の万里の長城に訪れた時に起った出来事から発端した企画と聞いてます。

 

僕がこのプロジェクトに関わったのはクレモンズ氏はすでに他界したあと2016年の事です。監督と会った当時はブルース スプリングスティーンは知ってましたがクレモンズ氏のことは全くの無知でした。多分他の日本人の方もそうではないかと思います。 ですが本場のアメリカではかなり有名だったかたで、当時は”BIG MAN" と言えばクレモンズ氏の事を指すぐらいだったとの事です。(彼の身長は198cm)

 

 

晩年はロックンロラー生活での不摂生や巨体に耐えきれなかった膝の故障などで大分苦労をしたようです。最後のメディア出演は2011アメリカンアイドルでのイベントでレデーガガの熱望で実現したコラボ演奏でしたがその時はすでに脳卒中に苦しんでおり、とても痛々しい出演となっていました。そして、その出演後すぐに脳梗塞が起こり亡くなったそうです。

 

そのため、ニックと作り上げるはずだったこの作品は半ばで頓挫するかと思われましたが、ニックの情熱と友情で灯火を繋いで2019年の春に僕が最後の映像編集者として終わらせました。

とても長い道のりでの作品完成でした、2011年から2016年の僕が編集する前に既に2名の編集者が編集してましたが監督とのビジョンが合わず作品の完成はかなり厳しかったようでした。

 

僕にプロジェクトの打診が会った時は、とても驚きました。ニックはスコットランド出身で、僕は日本人でドキュメンタリー対象ははアメリカを代表するバンドのメンバーに関してだったので当初は何回も、なんで僕なのかとよくニックに聞いていました。(結局いつも答えはウヤムヤで今でも分からずじまいですが。。。)

ドキュメンタリーの主軸は、2つあり 一つは、クレモンズ氏が生前に親しかった友人達からのインタビュー 二つ目が彼がニックと旅した中国の旅行記から成り立ってます。

 

素材のインタビューは、約60人ほどあり、そこから40人に絞り込み、作品の前半はクレモンズ氏が中国に旅する前までの軌跡を親友と知人の思い出とともに語るというスタイルにしてみました。幼少期から始まり、ブルーススプリングスティーンとの出会い、そしてバンドでの活動と解散、再結成 そして、後半は自分を見つめ直す旅として中国へ旅立ちそこで気付かされた本当の心の中の渇望を導き出す話へと進みます。

 

難関は、かなり有りました。ストーリーを繋ぐ素材自体が、2009年からのものが多くまだ、HDに対応してないDVやまた、YOUTUBEからの映像を使用しなければならない状況でしたので画像のクオリティーが通常の作品より低くなることを覚悟しなければなりませんでしたが、幸い殆どのインタビューをして下さった方々は、とてもクレモンズ氏に思入れがあり、その気持ちが画質や編集、作品の構成の穴などのディスアドバンテージを乗り越えた気がします。

作品でストーリーで特筆すべき所は、インタビューアーで前大統領であったクリントン氏、のクレモンズ氏への思いを語るエピソード、クレモンズとブルース スプリングスティーンとの出会い、如何に黒人ミュージシャンが白人ロックバンド社会で活躍できトップまで昇りつめたかの考察と中国でのスピリチュアルな体験の部分ではないかと思います。

 

音楽面では、ブルース スプリングスティーン の代表曲 ”ジャングルランド”のクレモンズのサックスフォンの存在感の再評価、そして彼の最後に創り上げた集大成の曲を紹介が見所になると思います。

 

しかしながら、やはり日本人であり彼の活躍を知らない自分がその名声を肌に感じる事はほぼ不可能だったと今も感じています。仮編集中に、クレモンズ氏と交流のあった方や監督が作品を見られて泣かれてる所を拝見する時など、少し複雑な気分でした。

そういう中で、自分と作品に感情の温度差を感じ悩んだこともありました。映像の中に彼らには見えて僕には論理的にしかわからない物があると、そしてその感情が僕に分からないとなると作品的に不成立に終わってしまう事も予想できたので、色々僕が少しでも、彼らの思いを感じれる方法を模索し続けてる日々もありました。

 

そして僕が出したこの作品の役割は、亡きクレモンズ氏へ友人達がラブレターを贈るために必要な代筆者という感覚で作品を編集する事でした。

基本的に、僕の映画へのスタンスは、100人いたら99人を楽しませる媒体と思って今まで編集者として従事してきましたが、この作品は一人の為に捧げる作品のような感覚で編集を終らすことになりました。そこの部分は、今でも自分の中では葛藤がありますが、クレモンズ氏の友人達や監督がすぐそこに彼がいるような気がするという事コメントを頂くと作品として成り立つ部分もありこれはこれで良かったかもしれないと思えるようになりました。

昨今、コロナ、パンデミック BLMの問題で人種差別の話題が、また強くなってきましたが、クレモンズ氏は、近代初期の人種差別の渦中から、全米のの代表するロックバンドのメンバーとなり、白人社会の中でも成功活躍できた数少ない黒人の方です。その人のすこしの時間のストーリを編集できたことはとても、僕の人生の経験になり現状のBLMの作品の受け止め方にも役立っています。

長文読んで頂き有難うございました。

 

10月27日 2020 ロサンゼルス