タイトル リロ&スティッチ(実写版)
公開年 |
2025年 |
監督 |
ディーン・フライシャー・キャンプ |
脚本 |
クリス・ケカニオカラニ・ブライト マイク・バン・ウェス |
制作国 |
アメリカ |
出演者
リロ(マイア・ケアロハ)フラダンス、サーフィンが好きな6歳のハワイ先住民の少女。変わり者で友達がいない
スティッチ(声クリス・サンダース)青いコアラのような違法遺伝子実験体「試作品626号」
ナニ(シドニー・エリザベス・アグドン)リロの18歳の姉で法的保護者。
コブラ・バブルス(コートニー・B・バンス)ペレカイ家の社会福祉士。実はCIAのエージェント
ジャンバ(ザック・ガリフィアナキス)違法な遺伝子実験でスティッチを作り出した自称「悪の天才科学者」
プリークリー(ビリー・マグヌッセン)銀河連邦所属の地球に詳しいエージェント
ケコア夫人(ティア・カレル)社会福祉士でペレカイ家を担当
トゥトゥ(エイミー・ヒル)70代のハワイ先住民で、ペレカイ家の長年の隣人
デイヴィッド(カイポ・デュドワ)トゥトゥの孫で、ナニに片想いをしている
議長(声ハンナ・ワディンガム)宇宙の平和維持を目的とする銀河連邦のリーダー
本作は、2002年のアニメーション映画「リロ・アンド・スティッチ」の実写アニメーションリメイク映画。
2025年5月23日に公開されるや否や、全米ボックスオフィスランキングによると、ディズニー制作の実写映画としては歴代3位となる1億4,601万6,175ドルの興行収入を記録。世界興収は3億6,120万626ドルとなった。
2025年にディズニーは「白雪姫」「キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド」「サンダーボルツ*」と立て続けに大爆死が続き、もうこれ以上失敗が許されない状況だっただけに、この結果に胸をなでおろしているはずだが、同時にここ数年のディズニーの映画製作のスタイルは、明らかに間違っていたということを如実に示す結果となった。
「白雪姫」はオリジナルにリスペクトしない、実写・リメイクは絶対に失敗するという貴重な教訓をディズニーに与えたわけだが、本作はその真逆を行くスタイルで大ヒットとなった。ディズニーにとってはめでたい限りだが、原作でリロが白人の少女だったらひょっとしたら変な改変が加えられ、大爆死作品のリスト入りとなっていたかもしれない。
映画の冒頭で、銀河連邦に違法な遺伝子操作で凶暴な生物兵器の試作品626号を開発した、悪の天才科学者・ジャンバ博士が捕らえられ裁判を受ける。スーパーコンピューター並みの驚異的な知能と破壊衝動をプログラムされた626は、追放処分となるが機転を利かせて脱出。地球のハワイ・カウアイ島に漂着する。銀河連邦議長はジャンバ博士を釈放し、その監視役で地球の蚊を研究するプリークリー諜報員と共に626確保へと向かわせる。ちなみにここで626号を逃がしたガントゥ大尉が、アニメ1作目のヴィランを務めるが本作の出番はこの程度。
一方ハワイのカウワイ島では、両親を亡くした少女リロと姉のナニの二人が暮らしている。リロと別れたくないナには奮闘するが、うまくいかない事ばかり。しかも肝心のリロは変わり者で友達もおらず、周囲から孤立している。
リロはある時、野良犬の保護センターで捕獲されたスティッチと出会う。破壊衝動に溢れ悪戯を繰りかえるスティッチ憑り路は意気投合し、すっかり仲良くなり、仕方なくなにも「明日まで」という条件で引き取ることにするが、行く先々で問題行動ばかり起こすスティッチによって仕事を失くし、いよいよ二人が離れ離れとなる事が現実味を帯びて来ていた。ナニはスティッチを追い出そうとするが、「オハナは家族。家族はいつもそばにいる。何があろうと」という両親の言葉を信じるリロの説得でスティッチを家に置くことにした。
実はスティッチの行動は大都市を破壊する破壊本能をプログラムされており、それに基づくためリロに取り入って大都市を目指すものだが、カウアイ島には大都市がないためがっかりする。ちなみにカウアイ島最大の都市リフエの人口は6500人と、とても“大都市”と呼べるものではない。しかも水に入ると自重が増加して動けなくなるので、他の島へ移動する事もできない。
破壊本能を果たせず意気消沈するスティッチだったが、次第にリロと仲良くなり家族のような感情をいだくようになる。626号にはそうした感情はプログラムされていなかったが、次第にスティッチにも感情が芽生えつつあった。
その頃、ジャンバ博士とプリークリー諜報員は地球人に変装してスティッチに近づくが、捕獲の機会をことごとく逃したことからジャンバ博士の機嫌は悪くなり、「地球人に危害を加えない」という議長を無視して、勝手に実力行使に出てしまい、サーフィンを楽しむスティッチを襲撃し、守ろうとしたリロがおぼれてしまった。幸い大したことは無かったが、保険に入っていないリロとナニだったので、それだけで高額の医療費がのしかかってしまう。その事から、二人が離れ離れとなるのは決定してしまった。自分の存在がリロを不幸にしている事に気が付いたスティッチは、元の犬の保護施設に戻っていく。
遂にリロとナニが分かれる朝を迎えるが、スティッチがいなくなったので、リロは探しに出てしまう。しかし、暴走するジャンバ博士はプリークリーを閉じ込めて、スティッチを捕らえ究極の破壊兵器として完成させようとする。
合計4作作られた、アニメ版の第1作をリメイクしたのが本作。基本的な流れはほぼ一緒だが、ところどころ改変が加えられ、登場人物も整理されている。特に終盤の展開はほぼ映画オリジナルで、それ故一部の熱狂的なファンからは批判されることになったが、アニメ版ではリロとスティッチだけに当たっていたスポットを、ナニを加えた“オハナ(家族)”として描くことは本作の主目的の様なので、このラストも問題があるわけではないし、幼い妹の為に姉が自分を犠牲にして夢をあきらめるという話は、あまり気色の良い事ではないのでこれはこれでよかったと思う。何よりここで、リロの成長を描くことが出来た。
元々アニメ版はそこまで大ヒットという訳でなく、製作費が8000万ドルと格安だったので大ヒットとなったのだが、興行収入は2億7000万ドルと言ったところだった。しかしその後、テレビ版が放送されたあたりから、キャラクターグッズが大ヒットし、グッズの売り上げがミッキー、熊のプーさんに続く第3位へと飛躍して、当時暗黒期に入っていたディズニーの財政を支える事になる。そして本作の製作費も1億ドルと、先日歴史的大爆死を遂げたあの「白雪姫」の半分以下であるにもかかわらず、公開初週で「白雪姫」の興行収入を超える大ヒットとなり、再びディズニーを救う事になった。
ただ一つ文句を言うのなら、ジャンパ博士の吹き替え版を担当したシソンヌの長谷川忍。最近の大作の吹替には、必ずお笑い芸人枠がある。何には玄人はだしでうまい人もいるものの長谷川忍ははっきり言って下手。本人は真面目に一生懸命やっているようだが、全く役に馴染めていない。特にコンビを組むプリークリーはアニメ版から引き継いでレジェンド声優・三ツ矢雄二がやっているので、その力量の差が歴然としている。アニメ版で担当された飯塚昭三は他界されているので、交代は仕方ないが、このキャラはクライマックスにもがっつり絡んでくるので、せめてプロの声優に任せてほしい。お笑い枠なら、出番の少ないモブでいいじゃないか?
さて、昨今続編やアニメ実写化を乱発しているディズニーなので、こんなおいしい企画を放って置くはずがなく確実に現時点でも続編の企画は立ち上がっていると思う。主役のマイア・ケアロハの年齢を考えると、かなり早く作る必要があるから意外と早く朗報が聞けるかもしれない。