タイトル カールじいさんの空飛ぶ家

公開年

2009年

監督

ピート・ドクター ボブ・ピーターソン

脚本

ボブ・ピーターソン ロニー・デル・カルメン

声優

エドワード・アズナー

制作国

アメリカ

 

本作はピクサー・アニメーション・スタジオが製作したアニメーション映画。劇場公開時に見に行ったのだが、内容をすっかり忘れていたのに驚いた。13年も前の映画だから仕方ないのだが、忘れるほどつまらない作品でもないのにどうして忘れたのだろうか。ほぼ同時期に見た「塔の上のラプンツェル」は覚えていたのに不思議な気がする。

原題は「Up」ときわめて素直なタイトル。何かスラングでほかの意味があるのでは調べたが、特に見つからなかったから、意味としてはそのままでいいようだ。これは邦題のほうがいいような気がする。

映画の冒頭は、幼い頃のカールの憧れの冒険家チャールズ・マンツが、冒険先から持ってきた怪物の骨が捏造の疑いをかけられ、汚名をそそぐべき再び旅立っていくところから始まる。

その後カールは1軒の空き家で、同じく冒険好きの少女エリーと運命の出会いの後、大人になると結婚。いつかマンツの後を追いパラダイス・フォールへ向かうことを夢見て幸せな家庭を築くが、子供は授からなかった。そのことに寂しさを感じる二人だったが、やがて年老いた二人はもう冒険をあきらめ、渡航チケットを手に入れた。だがその直後エリーは病に倒れ、亡くなってしまう。ここまでが回想シーンとなっている。これを挿入することで、カールが単なる意固地な爺ではなく、彼の人間性とその後の行動を分かりやすくしている。

この二人の若き日の冒険を描いたスピンオフを見たい!近所のお化け屋敷探検でいいから!

 

周囲を高層ビルに取り囲まれたカールは、エリーとの思い出が詰まった家を守るため、立ち退き拒否していた。そんなある日、工事関係者が誤ってカールの家のポストを壊してしまい、怒りのあまり工事関係者を殴って怪我させてしまう。裁判の結果立ち退くこととなるが、これをきっかけに、妻との約束を果たす事を決心し、多くの風船を結びつけた家ごとパラダイス・フォールに向けて旅に出る。

余談だが、カールの容姿は、名優スペンサー・トレイシーの晩年をイメージして作られている。

晩年のスペンサー・トレーシー。左はキャサリン・ヘプバーン

 

首尾よく旅立つが、自然探検隊員の少年ラッセルが家に入り込んでいた。彼は、“お年寄りのお手伝いバッジ”を手に入れようとしていたのだ。仕方なく同行させ彼の助けもあってパラダイス・フォールにたどりつく事が出来た。しかしそこは滝から離れた場所だったので、家をロープで引っ張って移動することにした。その最中、ラッセルが巨大な怪鳥ケヴィンと追っていた人間の言葉への翻訳機を付けた犬ダグと遭遇し仕方なく4人と2匹の奇妙な旅が始まる。

犬語翻訳機の元ネタは、タカラトミーから発売された玩具バウリンガルである。もちろんおもちゃだから正確なものではないが、本作の翻訳機はまさに万能で、どんな言葉も翻訳できる。

余談だが、積乱雲の中で家が雷雨に襲われるシーンは「天空の城ラピュタ」を参考にしているという。

やがてここに行方不明となったチャールズ・マンツがいることが判明。彼は自分の汚名をそそぐべく怪鳥をしつこく追っていたが、それこそケヴィンだった。目的のために手段を択ばぬマンツに危険を感じたカールは、ラッセルとともに逃げ出そうとするが、すでにマンツはケヴィンとカール達に狙いを定めていた。というのが大まかな粗筋。

映画の冒頭でエリーとの出会い。成長し結婚。いつか冒険に出かけようとお金を貯めると、生活の為に使ってしまう。それを繰り返し、そして二人は子供ができないことを知り、それでも楽しく過ごす二人。いつしか年を取り、冒険ではなく旅行に行こうとチケットを買うが、もうその時はエリーの寿命が来ていた。葬儀で悲し気にたたずむカール。もうここだけで涙腺崩壊してしまった。そして意を決しての風船の旅に出かける。ここまでで1本映画が作れるほど。いつかスピンオフで、二人の幸せな青春を描いた作品を見たいと思った。「カールじいさんのデート」よりもそっちを作れよ!ピクサー!

ここで盛り上がりすぎたせいか、その後がいまいちに感じた。特にラッセルは見ているとうざく感じ、またストーリーに貢献することもあまりないから必要性を感じない。マスコット枠ならダグで十分で、現地に着くまではマスコットはいらないと思う。それに常に宙ぶらりんの家をカールじいさん一人でさせるという、老人虐待めいたことをさせるのも疑問。家が何かに引っかかり動けなくなったので、カールじいさんとダグだけで徒歩で滝を目指し、後半引っかかったのがとれで家に乗って飛行船を追うという展開でも良かったのではないかな。

本作を見たのをすっかり忘れていたのも、後半があまり刺さらなかったからじゃないかと思う。それぐらい前半は無条件に良かった。

こんな文章出すな!目から汗が止まらないじゃないか!!

 

マンツはともかく犬はどうして生きているのかとか(多分何世代目かなんだろうけど)、色々突っ込み所もあるがそれなりによくできていた。監督は終盤のアクションをクライマックスに設定したつもりなのだろうし、確かに面白かったけど、個人的には前半でピークを迎えてしまったためいまいち乗れなかったと言うのが感想。無論、終盤のカールとマンツの年寄対決は笑ったし、飛行船と空飛ぶ家の追いかけっこも面白かったのだが。