タイトル 宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち

公開年

2021年

監督

安田賢司

脚本

福井晴敏、岡秀樹

声優

小野大輔

制作国

日本

 

本作は名作アニメ「宇宙戦艦ヤマト」をリメイクした「宇宙戦艦ヤマト2199」「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」シリーズの続編で、1979年放送のテレビスペシャル「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」をモチーフに描いた作品。

実を言うと私は、「星めぐる方舟」が終わった時点で、もう続編が無いと思っていたので勝手に続編の小説を構想して7割がた書き上げた事がある。その後に「2202」の製作が発表されたので、中断してそのままになるかと思っていたが、「2202」に不満があったので再開し、一応書き上げた。完成してもうだいぶたつが、どこかの投稿サイトにでも乗せようかと思っていたが、2次創作物にはかなり条件が厳しいところが多く、いまだに撃ち捨てられていてすっかり忘れていたが、本作を見て思い出してしまった。

土門は今後、古代に変わり主人公枠になるのか?

 

以前「宇宙戦艦ヤマト2199星めぐる方舟」で書いたとおり、私は「2199派」で「2202」にはかなりネガティブな感想を持っているので、本作も公開時にはスルーしその後レンタルにて視聴していた。その後、U-NEXTやAmazonprimeでも配信されたが、有料だったこともあって長いことスルーしていたが、この度、ポイントがたまったので再度視聴することにした次第。ここまで読まれたらあまりいい印象を持っていないと思われるだろうし、事実それ程、熱中してみたわけではないが、割と丁寧に「新たなる旅立ち」をリメイクしていたので、「2202」の時の様な悪い印象も持たなかった。ただ、いくつか気になる点があったのもまた事実。そしてその一つは、とてつもないほどデカいが

「旧新たなる旅立ち」では、テザリアムの軍服が全裸と揶揄されたが、本作はまさに全裸

 

その一つが、上映時間95分だったオリジナルに対して、本作は前章97分に後章101分と倍以上の時間がある事。それだけ物語を膨らませてあるわけだが、正直オリジナルは特にかつかつ感はなかったので、どこをどう膨らませて2倍にするのか見る前まで疑問があった。これに関して、前章では冒頭のガルマン解放の話や、中盤のヤマトの芹沢、山南、バレルとVIPを乗せること。新乗組員や土門の両親の事などでうまく処理していた。特に土門の父親の事は完全に逆恨みだが、それだけに厄介なこと。これを乗り越えてどう土門が古代を認めるようになるのか、興味が引かれる展開が予想さる。とまあ、前章はまずまずだったが、後章になるとかなり特に膨らますところもなかったらしく、テンポが悪くなっていた。特に中盤、デスラー砲が不発になって以降は、完全に中だるみを起こしている。

話の大筋は変わっていない点は、評価する人としない人がいるだろう。特に冒頭でガルマン解放が出てきたことから、デスラーのガミラス再建のための戦いを見たいと思う人もいるだろうが、そうなるとヤマトの出番が限られるから私は変えないでよかったと思う。本作も,終盤はほぼヤマトなしで決着がつくなど、ヤマトの出番はあまり多いと言えなかったが。

人間ドラマはなかなか面白かった。特に中心となったのがデスラー総統のドラマ。そして土門と古代の確執と和解。これは完全に和解に至っていないのも、今後の含みを持たせて良かったと思う。そして見ごたえがあったのが、藪のドラマ。ヤマトに配属され針の筵状態の中で、家族を思う姿には素直に引き付けられた。ただ、ヤマトの旧乗組員たちとあまり絡まなかったのは残念。新見さんと二人っきりになった時、彼女から一言「ごめんなさい」と言われたら、それだけでもうムネアツなんだが。いや、その一言でいいんだよ。

一方良く分からなかったのが古代とスターシャ。本作で一番迷走していたのがこの二人で、メインになるはずの二人が物語の中心にいないので、色々と気になるところが目に付いてしまう。この理由があると思うが、これについては後述する。まあ、「細けえところは気にすんな」と思えれば、見ごたえありかな?

そして、ついに明らかとなるガミラスとイスカンダルの関係だが、これが受け入れられるか否かで本作の評価は180度変わると言っていい。そして本作で描かれたイスカンダルを素直に解釈すれば、ガトランティスすら善良に思えるほどの、腹黒極悪自己中な星となってしまう。

本作で描かれたイスカンダルとは、この宇宙に存在する全ての星々や生命の情報を"儀式(波動砲を使ってぶっ壊す)"によって、本星の広大な地下保管庫『サンクテル』にある記憶装置「星のエレメント」に記録させ、永久に保管する

やがてイスカンダル人も外の世界に興味を無くし、サンクテル内部に入り浸り始めた。わかりやすく言えば、「マトリックス」みたいなものか。そしてその世界を永続させるため天の川銀河のガルマン星に住んでいたガルマン人を連れてきて、イスカンダルの隣にあった惑星をコスモリバースシステムを使って、ガルマン星そっくりに改造し住まわせ番犬にした。ただ惑星改造の副産物で、星としての寿命が偉く短くなったというもの。

「2202」の時も、デスラーの名誉回復のため、相当な力技を使っていたが、本作は名誉回復どころかがさらに闇落ちさせている。これまでガミラスとイスカンダルの関係について、様々な考察がファンの間でなされたが、ここまでイスカンダルを貶めたものはなかった。ちなみに私は受け入れがたい方だった。やはり、昭和世代のファンは、どこかにイスカンダルを崇高で神々しいものと考えているのかもしれない。もっとも、聖書に登場する神様も、同性愛を理由に二つの町を消滅させるほど結構わがままだが。

思わず「撃て」と思ったのは秘密だ

 

困ったことにこれは公式が決めた事なので、今後別のリメイク作品が作られるか、本作を「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」のように、パラレルワールドにしてしまわないと、決定事項となってしまう。

なお、イスカンダル人はイスカンダル星がなくなると、消滅するらしいが、これに関してはオリジナル「宇宙戦艦ヤマト」の初期設定の一つに、近いのがあったので特にひどいとは思わなかった。この設定は、石津嵐の小説にも投影されている。

余談だが、松本零士先生の初期デザインだと、イスカンダル人は素肌が見える極薄のドレスを着ているという設定で、ひおあきら版のコミカライズに反映されているが、いつかこの設定復活してくれないかと思っていたのは秘密だ。

ひおあきら版のスターシャ。あっけらかんとしているので、エロさは感じないが、相手が朴念仁の古代で本当に良かった?

 

本作で見られる様々な問題点だが、これは恐らく脚本の福井晴敏の個性が反映されていると思う。イスカンダルの設定なんて、いかにも福井氏が考えそうなものだし。そして福井氏は古代は不明だが、スターシャやイスカンダルに親近感を持っていないのだと思う。嫌いなものに魅力的に描けなんて、ちょっと無理だろう。それに福井氏は「機動戦士ガンダムUC」を見た時も感じたが、あまりオリジナルの設定を尊重しないことが多いように感じる。ただ、「~UC」の場合は、ご本人が富野由悠季の小説にインスパイアされ作家になったと公言している通りのガンダム好きだったので、ファンの怒りを買うような改変はなかったが、ヤマトの場合はかなり暴走しているように感じる。

「2202」以降の作品で私が良かったと思う点の一つが芹沢の扱い

 

そうしたことも含め、それほど悪くは思わず面白い部分も多かった。特にデスラーの人物描写は良かったと思う。本作に熱中させられたという方もいるだろうし、感想は人それぞれなので反論する気はない。ただ、やはり熱中させるほどではなかったというのが個人的な感想だ。ただ、本作でも芹沢さんが短い出番ながら、おいしい所を一番持っていっているあたり、やはりスタッフに芹沢押しがいるなと実感した。

続編ではこの中のシロモノが雪の座を脅かすことに?今度あっさり殺したら、本当に見限るぞ!

 

それとどうでもいい話だが、本作では「前章」と「後章」という、あまり使わない単語が使われているが、そのおかげでパソコン変換で偉く苦労して、結局単語登録する羽目になった。かっこつける為か、こうしたことをよくやるが普通に「前編」とか、「第1部」とかどうしてしないのか?特に本作はサブタイトルが付いているから、「前編」などすら必要ないと思う。あまり使わない言葉使っても、特にかっこよくはならないと思うのだが。