タイトル ピーター・パン

公開年

1953年

監督

ウィルフレッド・ジャクソン ハミルトン・ラスク

脚本

テッド・シアーズ アードマン・ペナー

声優

ボビー・ドリスコール

制作国

アメリカ

 

原作はイギリスの劇作家・童話作家のサー・ジェームス・マシュー・バリーの戯曲「大人になりたくないピーターパン」で、それをウォルト・ディズニーが1939年にアニメ化の権利を入手。フランク・チャーチルらとともに制作を開始したが、第二次世界大戦の影響で棚上げとなった。製作が再開されたのは1950年で「ふしぎの国のアリス」と並行する形でスタート。

アニメ化にあたり、原作にあったロンドンのケンジントン公園で乳母車から落ちたところをベビーシッターに見つけられず迷子となったことから年を取らなくなったというピーター・パン誕生の設定は割愛され、子供っぽい性格だったのが正義感あふれるヒーローへと変化した。またフック船長もずる賢く冷酷だが、マヌケな引き立て役へ変更されている。

ロンドン郊外にダーリング家の3姉弟は両親と住んでいる。父親のジョージは、子供たちが話すピーター・パンなどハナから受け入れない短気な現実主義者。母親のメアリーは夢見がちな子供たちとジョージの仲裁をすることが多い。

姉のウェンディは大人になるのがいやで、その事が原因である夜ジョージと喧嘩をしてしまう。その夜に、ウェンディたちの部屋にピーター・パンがしのびこみ、いつまでも子供でいられるネバーランドへ連れて行ってやろうといった。ピーター・パンがティンカーベルの妖精の粉を3人の子供たちに振りかけると、空を飛べるようになる。

ピーター・パンを先頭にネバーランドへ飛んで行った。

ヒーロー然としているピーター・パンだが、この時ティンカーベルへの態度はいただけない。年相応の美少女と友達になって、舞い上がっているのかもしれないが、その事が後に大変な事態を招くことになる。ただ、爆発に巻き込まれたティンカーベルを助ける時、「ティンクが世界で一番大切」と言うなど大切には思っているようだ。

ネバーランドに着いた一行だが、ピーター・パンの天敵海賊フックに砲撃される。何とか交わしたが、その際ウェンディに嫉妬したティンカーベルは、ロストボーイに「ピーター・パンからの命令」として、ウェンディを攻撃させる。危うくピーター・パンに助けられるが、その事からティンカーベルは追放されてしまうのだった。

ジョンとマイケルはロストボーイたちと、インディアン退治に出発。これは双方納得の遊びで、捕まってもすぐに解放されるのだが、娘を何者かに誘拐されて怒っていた酋長は、夜明までに娘が見つからなかったら死刑にされると言われる。

この辺りのインディアンの描写が今日批判されることが多いが、当時はインディアンに捕らえられたら頭の皮がはがれると本気で思われていたのだから仕方ない。実際にインディアンが捕虜の頭の皮を剝ぐことはあったが、それは白人がやったのをまねただけだ。

ある意味ピーター・パン被害者の会なのかもしれない

 

ピーター・パンとウェンディは人魚たちと遊んでいる時、フック船長が酋長の娘を捕らえ、ボートに載せ運ぶのを見つける。そこで、ピーター・パンはフックから娘を助け出す。

酋長は大喜びで子供たちを解放し、お礼のお祝いを始めた。ただ、ウェンディは女であるためそれに参加できない。その事もあって、次第にお母さんが恋しくなり、ピーター・パンから家へ帰ると大人になってしまうと言われたが、やはり皆を連れて帰る決心をした。その頃フック船長は、ピーター・パンから追放されたティンカーベルに近づき、ウェンディの悪口を言って彼女の信頼を得て、言葉巧みに隠れ家の場所を突き止める。

嫉妬深く腹黒な一面を持つのが魅力。そしてピーター・パンLOVE!なところもいじらしい

 

本作でのティンカーベルは、大好きなピーター・パンの関心をひくウェンディが憎いのは当然で、一貫してウェンディに嫉妬してその命を奪わんとするほど憎んでいる様に描かれているが、それが彼女の魅力につながっている事を忘れてはいけない。もしティンカーベルが物分かりがいい妖精だったら、彼女の存在価値すらなくなってしまい、ただの空気と化してしまう。それゆえ実写版でのティンカーベルは、人種の変更以前にキャラの改変が一番大きな問題なのだ。

 

本性を現しティンカーベルと監禁すると、フック船長は隠れ家に向かうのだったというのは大まかな粗筋で、ラストに父親のジョージの映画史に残る名セリフ「そういえば子供の頃、あの船を見た事がある」で大団円を迎えることになる。

ここは何度見ても泣ける

 

誰しも、子供のままでいたい、空を自由に飛びたい、夢の国に行って海賊と戦いたい、と言った願望は持っていると思うが、その夢をかなえてくれるのはネバーランド。ディズニーらしく、子供は絶対安全だから、自由に冒険の旅を楽しむ事が出来る。ただ、いつまで子供のままとはいかず、いつかは大人になる。本作ラストは見方によっては夢落ちとも取れるのが、現実主義者の父親の意外なセリフで救われる。誰しも心の中にネバーランドはあって、子供の頃は行く事ができたのかもしれないと思わせる、夢のあるラストだ。

ちなみに、日本でその夢をかなえてくれるのは22世紀からやって来た、猫型ロボットだけど。