タイトル 劇場版 ダーティペア

公開年

1987年

監督

真下耕一

脚本

星山博之

声優

島津冴子 頓宮恭子

制作国

日本

 

本作はSF作家でスタジオ・ぬえ創設者の高千穂遙によるSF小説シリーズ「ダーティペア」を原作としたアニメ。原作は、80年代のアニメファンなら誰でも一度は目にしたことがあるであろう名作で、「クラッシャージョウ」とともに、高千穂の代表作でもある。

原作だと「クラッシャージョウ」と「ダーティペア」は同一世界で「ダーティペア」の方が、20年程先になっているが、その事から本作のケイと、後にクラッシャーダンのチームのバードと結婚する「ケイ」が同一人物という説がある。時間の経緯からあり得ない話ではないが、詳細は不明。またケイのモデルは当時スタジオぬえ所属だった少女漫画家、瑞原芽理。ユリのモデルはスタジオぬえの事務員、秋津由利。そして「ダーティペア」の名前の由来は、女子プロレス好きだった高千穂が、当時人気があった女子プロレスの「ビューティペア」から取ったというのは有名だ。

このセクシーでカッコいい衣装が見られるのは冒頭とラストのみ

 

原作の挿絵は安彦良和が担当したことから、アニメ版も同氏がキャラクターデザインを担当するものと思われたが、キャラクターは土器手司。コスチュームは細野不二彦が担当することになった。これは高千穂と安彦。そして制作のサンライズが協議して決めた様だ。劇場版でもキャラデザは土器手が担当している。ただ、ユリのデザインは若干変わっているようだ。

ずっと劇場版が先でテレビ版やOVAはその結果を受けて作られたと思っていたが、今回調べて逆だったことを知ったが、その結果は意外でもなんでもなかった。というのも当時、劇場で見に行ったしVHSも見たにもかかわらず、本作の事はすっかり忘れていた。今回ブログの為見直してみたが、ワンシーンも思い出す事が出来なかった。いや、本当に見たのかと自問自答したほどだが、だいたいの粗筋は覚えていたので間違いなく見ているはず。

集合体恐怖症の方はご注意を

 

映画は超光速航行に不可欠な希少鉱石・ヴィゾリウムの密売現場に、二人が踏み込むところから始まる。一人は逃がしたものの、首謀者は捕らえめでたしめでたしかと思ったら、ヴィゾリウムが爆発し取引現場の宇宙ステーションは崩壊し、大量の犠牲者が出てしまう。

原作でもこの二人は見事事件を解決するが、その際大きな被害を出すのがお約束。しかし、原作だとそれらは不可抗力か、放置すればさらに大きな損害生じたと思われる事故。その為、二人が処分されたことは一度もないが、本作の場合冒頭は明らかな失態だし、ラストは明らかに過失が原因だから、この設定に反するように見える。もっともアニメ版だとその限りではないのかもしれないが。

ダーティペアならお約束

 

その後ヴィゾリウムを埋蔵している鉱山惑星・アガーナの採掘プラントが、謎の怪物サディンガに襲われ採掘が停止してしまう。アガーナにある二つの国ウルダスとエディアは緊張状態となる。この両国はアメリカとソ連をモデルにしていることは明らか。それとサディンガだが、現場には武装した兵士がいたにも拘らず為す術なく蹂躙されている。ダーティペアの二人ならともかく、コソ泥のカースンでさえサディンガを重火器なしに退治できているのだが...。だいたいSFに出てくる軍隊はマヌケに描かれているが、この描写は整合性がとれていない。

 

なんやかんやあって、二人はこのカースンと協力し事件を追い、サディンガを作り出したマッドサイエンティスト・ワッツマン教授の研究所へと忍び込む。このカースンは冒頭でヴィゾリウム取引現場から脱走した男だ。若いイケメンだが、入浴中に襲われほぼ全裸で逃走することになった二人に身包み剥がされ、終盤までパンイチで過ごす羽目になる。その為ダーティペアの二人も、お手製の衣装で過ごすが、いつものかっこよくてセクシーな衣装でないだけにテンション下がる。サービスのつもりかもしれないが、余計な事だ。

中盤もなんやかんやあって、ヴィゾリウムの原鉱石は古代生物サディンガの化石と判明。これは石油が古代生物の分泌物とされていた当時の知見が元ネタだろう。ワッツマン教授はサディンガを化石から蘇らせようとしていた。彼はサディンガの進化系が人類の後継者となる超人類になると考えていたのだ。いや、全然わからんのですけど。

本作のヴィランがこのワッツマン教授だが、所謂学者バカの典型。何か悪だくみをしようと思っているわけでもなく、ただ自分の理論を証明するためヴィゾリウムの精錬工場を襲っているだけ。その際、工員や警備兵に少なからず犠牲者が出ているのだが、そんな事知ったことではないという御仁。なお部下はブルーノ一人だけで、マヌケに描かれているが、教授に絶対的な忠誠心を持ち、研究に必要な機材や教授の料理作りに戦闘などもこなす、万能召使。仕える相手間違えたね、あんた。

更に捕らえたケイとカースンを、サディンガの進化系と勘違いしたからさあ大変。というのが大まかな粗筋。読んで分かっただろうか?私は自分で書いていてもさっぱり分からない。自分の文章力で、本作の粗筋を分かりやすいように説明することは不可能なので、気になられた方は各自ググってみてほしい。すみません…。

こんな召使は欲しいところ

 

監督は、タツノコプロ出身で当時フリーだった真下耕一。80年代のアニメファンなら、「未来警察ウラシマン」の監督と言えば、本作を見た事が無くてもだいたいどんな作風か想像がつくのではないだろうか。

見るまで、ここまで意味のないストーリーとは思わなかった。すっかり記憶から抜け落ちているのは当然で、本作のストーリーを整合性をもって記憶するのは不可能に近い。ただひたすらケイとユキの二人を、そして土器手キャラを楽しむための映画だろう。この二人が画面狭しと大暴れするのだから、二人が大活躍する映画を見たい人にはたまらないだろう。ただ、そこまでファンでない人にとっては、最後まで頭を?で埋め尽くされることになるのは確実。アニメで「ダーディ・ペア」を楽しむのならテレビアニメ版か「ダーティペアの大勝負 ノーランディアの謎」「ダーティペア 謀略の005便」等OVAを見る事をお勧めする。