タイトル カーズ

公開年

2006年

監督

ジョン・ラセター ジョー・ランフト

脚本

ジョン・ラセター ジョー・ランフト

声優

オーウェン・ウィルソンポー

制作国

アメリカ

 

「トイ・ストーリー2」以来製作に退いていたジョン・ラセターが、7年ぶりに監督に復帰したディズニー配給とピクサー製作によるアニメーション映画。ディズニー・ピクサー間の契約とその契約更新の破綻に伴い、ディズニー配給としては最後のピクサー制作作品になる予定であったが、すでに稼ぎ頭となっていたピクサーを手放すことに、ディズニーの株主たちが猛反発。結果、ディズニーによるピクサーの買収により完全子会社となった。

当初、2005年の冬に公開予定であったが、2006年の公開となった。その結果、日本では公開時期がスタジオジブリ製作の「ゲド戦記」と重なったこともあり、興行収入は前作「Mr.インクレディブル」の半分程度となってしまう。もっとも現在、この2作のどちらが面白いかと聞けば、狂信的なジブリ・フリークを除き大半は本作をあげるだろうが。

映画の始まりは、カーレース「ピストン・カップ」シーズン最終レース「ダイナコ400」で、新人天才レーサー、ライトニング・マックィーンが激しいレースを繰り広げるが、自分のしくじりからゴール寸前でパンクしてしまい、1週間後カリフォルニアにて再レースとなるところから始まる。マックィーンは無名から支えてくれたスポンサーである錆取り用クリーム会社「ラスティーズ」のイメージキャラクターとされていたが、錆びた車が嫌いという理由で、優勝後はダイナコ石油への移籍を考えていた。

目下マックイーンのライバルは伝説のレーサーとストリップ・ウェザーズと、万年2位のベテランレーサー、チック・ヒックスの二人。

ここだけでマックイーンがどれだけ嫌な奴かが良く分かる。そしてディズニーの常として、ここから「いい奴」に変わっていくことになり、その過程を観客として見守ることになる映画だと分かるわけだ。余談だが、以前聞いた事があるが一流レーサーを除いて、大体のレーサーの車のメンテナンスはすべて自腹。クラッシュしたりすると目も当てられない事になるので、たいてい金持ちか強力なバックがないトレーサーになれないそうだ。その意味でGTアカデミーは異例だった。

誇り高いレーシングカーとしては屈辱的な仕事。

 

専用トレーラーのマックに、無理を言って一晩中走行させるが、マックは居眠り運転をしてしまい、さらには暴走族のイタズラが原因でマックと離れ離れになる。慌てて、探し回るうちに”ルート66”沿いの田舎町「ラジエイター・スプリングス」に迷い込み、ひょんなことから町のアスファルト道路をボロボロに壊してしまい、保安官のシェリフに逮捕される。

翌朝、交通裁判で判決により、社会奉仕として「道路の舗装」を命じられることに。

一刻も早く町を出ようと突貫工事で補修すると、かえって悪くなってしまった。

ドック・ハドソンからやり直しを命じられて、反発したマックィーンにドックは町への退去と道路の舗装を賭けたレースを申し込む。

楽勝かと思われたが、急カーブを曲がり切ることが出来ず、サボテンだらけの崖下に落ちてしまう。結局負けたマックィーンは、道路の補修に取り組むとともに、ダートでの自主トレーニングに励むようになる。そのころから、根は素朴でやさしい町の住民たちと、次第と交流するようになる。特に、レッカー車のメーターとは深い友情で結ばれ、サリーとは惹かれ合う様になる。

やはりカーナビは必要だよね

 

ドック・ハドソンの声は、自ら熱狂的なレース好きを公然と表明しル・マン24時間レースに出場したことがあるポール・ニューマンが務めている。また、ミハエル・シューマッハやマリオ・アンドレッティも本人役?でカメオ出演している。

 

マックィーンはドックが実は1950年代に大活躍した伝説のレーサー、ハドソン・ホーネットだと知る。また、サリーとのドライブで、今ではすっかりさびれてしまったラジエイター・スプリングス往時の栄光の事を知らされる

翌日、住民たちが目を覚ますと道路の舗装は既に終わっていたが、マックイーンの姿はなかった。すでに立ち去ったと思い寂しがる一同だったが、そこにマックィーンは姿を現すと、町の店でタイヤや燃料などを購入するまた、町中の電灯を直したことで夜はこれまでより賑やかになり、住民たちは「昔の頃に戻った」と大喜びする。するとそこへマックィーンを捜索していたマックや調査隊、マスコミが現れ、半ば強引にマックイーンをカリフォルニアに連れて行ってしまう。ドックからの連絡を受けたのだった。

再レースに挑むマックイーンだが町での事が気になって、集中することができない。そんな彼の元に、ドックをはじめ仲間たちがサポートとして付くのだった。というのが大まかな粗筋。

かつては栄えたが寂れてしまったラジエイター・スプリングス

 

本作の成功の陰に「車の擬人化」という、荒業ともとれる意表を突いたアイデアがあったことは間違いない。それ以外は、意外と鉄板で特に新味のないストーリーとなっている。

天才レーサーともてはやされ、鼻持ちならないマックィーンがひょんなことから田舎町でただの車に成り下がり、自業自得とはいえ道路の補修をやらされる。だが、そのどん底ともいえる環境から自分を見つめなおし、大きく成長するまでの物語。そしてその陰に、かつて伝説のレーサーと呼ばれたドック・ハドソンの教えがあるというものも鉄板。そして、彼も心にトラウマを抱えていて、かつての自分の姿をマックィーンに見て、自分のしくじりを繰り返さないため、彼をサポートすると同時のトラウマを克服していくストーリーは王道そのもの。だから、自動車の擬人化に成功しなければ、本作は失敗していたことだろう。それを成し遂げたこの頃のピクサーは本当に神がかっていた。その本作の肝と言っていい車の擬人化は「チョロQ」を参考にしたと言われている。

ちなみに本作に登場する、「ルート66」は実在する。ラジエイター・スプリングスは架空だが、この沿線にある建物や風景は実際のモノを参考にした様だ。