タイトル チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ

公開年

2022年

監督

アキヴァ・シェイファー

脚本

ダン・グレガー ダグ・マント

声優

ジョン・ムレイニー

制作国

アメリカ

 

本作は、1989年に放送されたテレビアニメ、「チップとデールの大作戦」の後日談に当る。テレビシリーズはシマリスのチップとデールとその仲間達が活躍する冒険アニメで、ディズニー制作だが東京ムービー新社(現:トムス・エンタテインメント)も製作を務めた。本作の舞台は、アニメや映画などの架空のキャラクターが人間と共存している世界で、テレビアニメの登場人物であるチップとデールらは実在し、人間達と共に生活している。その為、実写とCGアニメーションが併用されている。「ロジャーラビット」に似ているが、アニメのキャラの中には、現代の技術を反映して、3D手術でバージョンアップしているものもいるという設定。その為、普通のセルアニメ風のキャラと、3DCGキャラが併存している独自の世界観の中で、物語が進行する。

右がチップで左がデール。デールはCG手術を受け3D化

 

映画の始まりは1982年。小学校の食堂で出会ったチップとデールはたちまち意気投合。長じてスターを夢見て、ハリウッドでCMやショーにエキストラとして出演していた。そんな二人に転機が訪れるのは1980年代末にテレビシリーズ「チップとデールの大作戦」に出演し、憧れていたスラーとなるのだ。しかし、デールが自身の番組「ダブル・オー・デール」に出演をきっかけに、2人は仲違いし、結果両方の番組が打ち切られることになる。

このチップとデールは前述の通り、テレビアニメの主役だがそれが初登場ではない。初登場は1943年の短編アニメ「プルートの二等兵」というから相当古い。それ以降も様々な作品で脇役として登場していたのが、テレビアニメ「チップとデールの大作戦」で主役として抜擢されたという経緯をたどっている。本作でのチップとデールのプロフィールにはそうした裏の事情が反映されている。

ヒロインのエリー。ただ二人とは恋愛はなし

 

舞台は30年後の現在に移る、チップは保険のセールスマンとして成功し、デールはCG手術を受けた後、ファンミーティングに明け暮れていた。あの件以来、二人は疎遠となっていた。そんなある日、かつての共演者であるモンタリー・ジャックから、チーズ中毒彼は、犯罪集団であるバレー・ギャングに金を借りていた。モンタリーは、アニメキャラたちが誘拐され、改造された挙句、一生自分の作品のバチモンに出演させられる人身売買組織の噂を二人に聞かせた。まともに取り合わないチップだったが、その夜モンタリーが誘拐されたとの知らせが入る。慌ててモンタリーの自宅に戻る二人は、捜査を担当するパテ警部と新米警官であるエリー・ステックラーから事情を聴かれたが、その中でエリーはかつてのテレビシリーズのファンだったと告白した。彼女は、スウィート・ピートの偽造版施設へ立ち入る令状の作成が何故か滞っている事から、チップとデールにも捜査に協力するように依頼する。

チップとデールはモンタリーが好物だったチーズを販売していた、ビョルンソン・チーズを訪ねが、正体がばれ、ギャングのリーダーであるスウィート・ピートと彼の子分であるボブとジミーに会う。

このスウィート・ピートは、かつてのピーター・パン。今は中年オヤジとなり、やさぐれてギャングのボスとなり、バチモン映画を作ろうと企んだという設定。ピーター・パンの造形が絶妙にキモくて、よくディズニー上層部がOKしたなと感心するレベル。

こいつが出てきたときは爆笑した

 

ピートは、2人のバチモン映画を作るため、捕まえようとするが、間一髪で脱出に成功する。二人はエリーの助けを借り、ピートの行動を暴く歩数計を盗むために浴場に潜入。アクシデントはあったが、何とか盗み出すことに成功する。そこから得た情報で、港湾倉庫が浮上したが、警察が到着した時にはすでに無人で、中には、大きな手術機とモンタリーの口髭などキャラクターたちのパーツが保管されていただけだった。

モントリーの事で激しく言い合う二人だったが、警察署でモンタリーが使っていたコロンの香りに気が付く。パテ警部とエリーのどちらかがピートと共犯であるから、もう警察に協力は出来ない。そこで、アグリー・ソニックにFBIの知り合いに助けを求めるよう説得するが断られ、そこにピートとその子分が到着、追跡劇となった。チップは捕まり倉庫に連行され、改造手術を受けそうになる。そこにエリーが到着するが、パテがギャングの一員で捕まってしまった。エリーを使いデールを倉庫に誘い出そうとするが、エリーはテレビシリーズの好きなエピソードを言い、彼にメッセージを託す。その事に気づいたデールは、かつての仲間ガジェットとジッパーに助けを求めるのだった。というのが大まかな粗筋。

本作を一言で言えば、やばいパロディのオンパレード。ディズニーネタがメインだが、他も結構ある。

「美女と野獣」のルミエールがさりげなく登場したかと思えば、「リトル・マーメイド」のフランダーがオキアミ借金を返せなくなって売られたり、「ジャングル・ブック」のバルー等々。他にも「アラジン」の魔法のじゅうたんや、プーさんにラプンツェル。終盤ではダンボネタが出てくるし、色違いのバンビ。本当に油断していると、おなじみのキャラがすっと横切ったりする方、一刻も気を抜く暇がない

ダンボに改造されたモンタリー。いやよく公式が認めたな

 

最大のネタオッサンと化したピーター・パン。いや、よくディズニーの幹部がOKを出したなと感心するレベル。パロディにはこれだけおおらかなのに、〇リ〇レには厳しいのはどうしてなんだろう。

ただ、こうしたパロディネタを除くと、本作で描かれているのはいわゆる中年の危機。かつて大人気だった二人が、解散により疎遠となり年月を経て復活するのだから、かなりベタな話となる。それに今の時流を意識してか、同性愛的な要素も加味している。今は疎遠となったとはいえ、かつて兄弟でもない二人の同年代の男が、仲良く暮らしていたのだからそんな感じもする(一応かつては二人のと女性キャラとのロマンスもあったが)。本作でも二人の別れ方にビジネスというより、恋愛の別れ話めいた雰囲気もする。

ロストボーイの1人カビーかな

「美女と野獣」のルミエール

魔改造されたバンビ

実写版で呼ばれず、こっちで小遣い稼ぎするフランダー?

 

ただそんな事はどうでもよく、バカバカしいまでに面白いディズニー映画を見た人に見てほしい映画。ただピーター・パンを永遠の少年と思い、固く信じている人は絶対に手にしてはいけない映画だ。全く余計なお世話だが、本作をディズニー100周年記念として、今年公開していたら大ヒット間違いなしだったのではないだろうか?

漂うバチモン臭がたまらない実写版もこれくらいしてくれたら大ヒットしただろう

「キャッツ」?

「ジュラシックパーク」?

本作で一番笑ったのがこれ。あえて何も言わないが