“管釣り王国”といわれる栃木県には40カ所を超えるマス類の管理釣り場がある。その中で異彩を放っているのが昨秋、リニューアル・オープンした「尚仁沢アウトドアフィールドだ。新オーナーの阿久津裕さんが殆ど独りで釣り池やクラブハウスなどの付帯設備を約3カ月の突貫工事で完成させた。


昔の名前は「レイク塩谷」。この時代は殆ど手入れがされず野池のような状態だったうえ、魚の追加放流も少なかった。こうした管理釣り場の人気は釣果に比例することが多いのだが、もう数釣りの時代ではないだろう。マスを100匹釣ってどうするの? それより魚との会話を楽しむような釣りが人生を豊かにしてくれる。


少しずつだが、釣果至上主義が薄れ「オトナの釣り」を模索し始めた方が増えつつある。ここも“量から質の遊び”をコンセプトにしている。イトウが養殖に成功して以来、各地の管釣りから引く手あまたの希少魚になっているが、尚仁沢では一日に数尾コンスタントにヒットしている。


このほか、ロックトラウト(イワナとニジマスの交配種)、ヤシオマス(県水試が作り上げた美味なマス)など60㎝以上の大物がふんだんに放流されている。イトウは大体70㎝前後が中心。1mクラスになると1尾2万円は下らない超高級魚となり、養殖魚とはいえ入手困難になる。


そんな尚仁沢アウトドアフィールドで先日、ミニクランク(ルアー工房「彦」製の同釣り場専用モデル)でイトウを釣る機会に恵まれた。無論キャッチ&リリースだが、なるべく魚にダメージを与えないように放すことが大事である。

どう魚を扱うかで釣り師の品格が分かるというものだ。


巷でプロとかトーナメンターと言われる御仁たちの中には、それが実行できない“名人”がいる。大魚を抱えてハイポーズの写真撮影は時代遅れ。それを助長しているメディアは、ここらで自重してほしい。


さて、この尚仁沢アウトドアフィールドだが、5月いっぱい営業して6月から9月まで夏期休業に入る。気温&水温上昇のため、魚の生息条件が悪化するからだ。そこでオーナーが考案したのが「エサ釣りによる魚の総ざらえ」。5月26日、27日の2日間はエサ釣り限定で好きなだけ釣って持ち帰れる。


そして、6月からは更なるリニューアルに着工する一方、その名の通り、キャンプ(オートキャンプも含む)が楽しめるアウトドアフィールドになる。子供たちの夏休みシーズンには天体観測や昆虫採集(周囲はカブトムシの宝庫)などがエンジョイできる。釣り場の再開は9月中旬以降。どんな風に変貌するか、乞ご期待である。