大西の残りソフトタイヤは
Q3で配給される1本を除けば
新品が1本あるだけで残りの2本はQ1で使ったお古だった
そんなわけで1回目のアタックはお古で走ってもらう事になった

 



Q2の1回目にお古を履くのはいつものことだったが
レースで2回ストップになった場合
考えられる戦略はソフト2回とミディアム1回なので
これはこれで問題だった

セッションが始まってすぐに、
ピアストリ、サインツ、サージェントの順で
コースに入っていく

 



1回目のタイミングとしては
この辺が良いだろうと思い
サージェントの後方10秒くらいのところで
大西をコースインさせた

 



大西はアウトラップでコーナーひとつひとつを確認するように
ターンしていく
そのたびに、大歓声があがる
ピットウォールからはモニターで確認しなくても
大西がどこのコーナーを走っているのかわかるくらいの歓声だった

大西がホームストレートに戻って来る
コントロールラインを超えて
アタックラップに入っていく



スプーンの立ち上がりで
ストロールに追いついたときには
少し心配したけど、問題なく譲ってくれた

 



後は誰にも出会うことなくアタックを終えることができた
それでもタイムが伸びず 1:28.929だった
Q1よりも遅いタイムだった
1回目だし、中古だし
ということで納得することにした

アタックラップを終えて、インラップに入ったところで
ピットから出てきた角田の後ろについてしまうかたちになり
そのままランデブーするかのように2台がそろって
1コーナーから2コーナーに入っていき
そのままS字に入っていった

そこにアタックラップに入っていたストロールが追いついてしまった
S字コーナーで抜かせるのが難しいところだった
S字の後半を大西が、逆バンクで角田がストロールを妨害するようなかたちになった
ペナルティになるかと心配したが、その後スチュワートから
何の連絡もなく、画面上にも記録された情報はなかった

 



そのまま何事もなかったかのようにピットに向かう
そんな中、突如モニターにイエローフラッグが表示された
誰かがコースアウトしたと思ったが
大西はインラップなので、ほのぼのしていたら
大西の前でアウトラップを走行中の角田が
シケインの入口で盛大な白煙をあげているリプレイが表示された

 



大西が何か関係あるのかと
頭をよぎったが、角田の単独だった
ホームレースの緊張感かもしれないな
と、そんな事をぼんやり考えていたら
藤本が次のタイヤをどうするか聞いてきた

正直、悩ましいところだった
ここで新品を使えばレースで2回ストップになった場合に
お古のソフトを使うか、ミディアム2本になってしまう
もともと、2回交換なら、ミディアム2本を使う予定だったが
思いの外、ソフトが使えそうだということになったが
後の祭りだった

フリー走行で雨が降ったおかげで、ドライタイヤを温存できると考えていたが
2本返却するルールは生きていて、インターミディエイトを返せばいいと思っていたら
返却はあくまでドライタイヤを返却しなければならず
ソフトの新品を返却してしまっていた
この事が、ここにきて非常に難しい状況を作り出していた

ここで新品ソフトを使ってしまうと
Q3に行けなかったとしても
レースで使える新品ソフトは1本しかない
しかし、中古のソフトでQ3突破を狙えるはずもなかった
そして、ここ鈴鹿は抜きづらいコースで
モナコほどではないにせよ、予選結果が大事なサーキットだった
予選で後方に沈んでしまえば
ポイントを狙うのは難しくなる

ここではポイントを取っておきたかった
ファンのためにも、スタッフのためにも
ドライバーのためにも
そして、僕のためにも

「中古でいこう」
と、藤本に伝えた

メカニックが大西のマシンに中古のソフトを履かせている間に
リカルドが2回目のアタックに入っていった
Q2残り6分だった
その直後にストロールもでていった
残り5分でアルボンが出ていき
そこから5秒ほどして、ハミルトンがコースインしていった
その後に続くようにしてマグヌッセンも出ていった

その間も、僕はずっと大西のタイヤについて
藤本と相談していた
藤本が
「大西なら中古ソフトでスタートしてもソフトで繋げますよ」という言葉に
”ストン”と音を立てたように納得がいったので、
急遽新品ソフトに履き替えるように指示を出した

残り3分25秒
少し早いかとも思ったけど
ノリスの後を追うように大西をコースインさせた

アウトラップを終えてアタックラップに入る
1コーナー、2コーナーと抜けてS字に入っていく
ここでインラップを走行中のニコ・ヒュルケンベルグに追いついてしまった
そして、ニコ・ヒュルケンベルグは何を思ったのか
S字コーナーから逆バンク出口まで、そのまま大西の前を塞ぐように走行した

 


さらに、インラップのアルボンが130Rで前を塞ぐようなラインで走行し
大西のアタックラップは散々なラップとなってしまった

 


結果は、 1:31.505
トップのサインツとのタイム差は 4.623秒
ありえないタイムだった

僕はすぐにスチュワートに無線を入れて抗議し
レース後審議ということになった

結局、大西は1回目のアタックタイムで15位となった