布で作った「グローブ」

布で作った「グローブ」


天国にいる「かあさん」

あなたは覚えていますか？


小学生の頃に

僕が「グローブ」が欲しい

「友達はみんなグローブを持っている」・・と

つぶやいたら


かあさんは

「国債の券」を持って

グローブを買いに行きましたね


でも・・戦時中の国債は紙切れのようで

グローブすらも買えませんでしたね


父が戦争で死んでから

貧しいかあさんは

４人の子供を抱えて

途方にくれていたんですね

かあさんはかじかんだ手で

小雪の夜に、一晩中かけて

「布でグローブ」を作ってくれましたね

本当に嬉しかった・・・ありがとう

でも「学校の友達」に恥ずかしいから・・と

枕元に置いてあった

「布のグローブ」を持たないで

僕は、学校に行きました


母さんは泣きそうな顔をして

学校まで僕の後ろを

雪の中を畑に隠れながら

必死で「布のグローブ」を持って

追いかけてきましたね

しかたがなく

「布のグローブ」を受け取り

学校に着くと

友達のみんなに笑われたんだ

だから

学校から帰るとき

山の中に捨てました

今日まで言えなくて

母さんごめんなさい


布で作ったグローブで

キャッチボールしたら痛かった

あれから「グローブ」がトラウマで・・

球技が苦手になったんだ

天国の母さんごめんなさい

内緒にしていて

ごめんなさい

いつか言わなければいけないと

心にしまっていました。

あの「布のグローブ」

ありがとう。

宮司の思い出です

今から６５年も前のことなのに・・・今でも鮮明に思い出す

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