真夜中の救出

真夜中

午前3時過ぎ

犬達が激しく鳴いた

神社境内で

何か異変が起きたのだ

「スワ・・・一大事 !」



宮司は、剣道5段教師

何をこれしき・・恐れるに足ろうか?

懐中電灯と木刀を持ち

音の方向に足音を忍ばせて近付く

ごと ごと ごと

ゴト ゴト ゴト

宝物殿の方から大きな音がする



さては、最近神社やお寺を荒らす

怪しい侵入者か?

懐中電灯で、施錠を確かめる

壊されていない

犬の弁慶は、私の後ろを恐る恐るついてくる

不甲斐ない「内弁慶」である

番犬の役に立たない



本殿と書院の間

更に大きな音がする

懐中電灯で音の方を照らすと

二匹のムササビがこちらを見ていた

ムササビの親子だ

屋根の樋に

ムササビの子が暴れている


宮司が近付くと

ムササビの子が歯をむいた

傷だらけの足を

針金に絡ませている

手にバスタオルを巻いて

ムササビの子を救い出そうとするが

宮司の気持ちが伝わらない


真夜中のムササビの子の

救出は終わった

ムササビの親と子は

大きな檜の枝に飛んで行った

ムササビの子のために

そばから離れなかった

ムササビの母の愛に

何だか胸が熱くなった



いつの日か

あのムササビ親子の感謝状が

木の葉となって舞うだろう


(素心宮司のある出来事)


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