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≪吉野は 寒い・・・人も自然も≫


コートの襟を立て

かじかんだ手を

口にあてて

息をかけながら

雪の降る中を

吉野神宮駅で

電車を待った

雪の寒さに

身体を丸くする

「ああ寒い・・」とつぶやく


駅の待合室には

先客の高校生が

4人座っていた

いや・・・?

3人と離れて1人

私は片隅で

寒さから解放され

ホット一息ついた

しばらくすると・・

「おい・・イボ!」と

一番端の男の子が叫んだ


うつむいた男の子が

顔を上げた

目の上をハンカチで 押さえている

血の流れるのを 痛そうにしている

次の男の子が言った

「おいイボ!・・ナイフでいぼ削ったんか?」

三人は囃し立てた

「アホや・・・イボはとってもすぐ出てくるぜ、イボはイボやんか!」

と笑った・・・・


宮司は

最初は 高校生の

ふざけ合いだと聞き流していた・・

でも、3人目の女の子が言った

「きしょい!そんないぼがあったら私だったら死ぬわ!」と言った

宮司は

立ち上がって血相を変えた

めったに怒らない私でも

我慢できなかった!

「いじめは、やめろ!」


両手に力がこもる

反撃があれば

受ける体制で

「私だったら死ぬは、とは、何事や!」

「この子に謝れ!」

段々声が大きくなる

「仮にあなた達にいぼが有って人から言われたら、どんな気持ちや!」

血圧が上昇していることに気がつく・・少し間を空けて

「この子は、我慢できても・・私が我慢できへん・・・謝れ!」

目にも顔にも身体にも怒りが満ちてきた・・阿修羅のように!


その時 はじめて

いぼと呼ばれていた子が 小さな声で

「おっちゃんありがとう・・もうええんや・・いつもやから・・慣れてるから」とつぶやいた

他の3人は・・黙って私の顔をしげしげと見た

「吉高の生徒か?おっちゃんは吉水神社の宮司や!いじめしたらアカン!」

謝罪の言葉も聞けないで・・電車が来た

雪はまだ降りやまず

人も自然も冷えていた


殴り倒したい衝動を抑えながら・・電車に乗った

勉強など教えなくっていいのだから

「人間としてのやさしさを教えろ!」と

車窓から叫びたかった

吉野は人も自然も寒かった

(素心宮司の心も寒い・・勉強の前に人間を教えろ!)


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