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書院の縁側で

長い 長い時間

貴方は 独り

鳥の綺麗な

鳴き声を 聞いていた


白藤が檜の上で

芳しく 香り

風が 爽やかに

吹いているのに・・・・

貴方は無表情に

悲しみに耐えていた

後姿を見て

宮司は 肩の震えを見た


「どうかしましたか?」

宮司が 聞くと

貴方は うつむき 黙っていた

「・・・・・・・」

言いたくない事もあるだろうと

私も 黙ってそばに坐る

白い藤の花を見上げながら

「宮司の石笛 聞く?」

返事はなかったが

沈黙を破りたかったので

石笛を吹きはじめた 

「希望と勇気を与えて下さい」

と神々に祈りを込めて吹いた

貴方の目から 涙が溢れ出した

宮司の手を握り 貴方は泣いた

日焼けした顔から

とめどなく涙がこぼれた


宮司の膝で泣いた

「いいんですよ!泣きたいだけ泣いて」

あなたは、静かに心を開いた

「宮司さん、すみません

選挙に落選し 失意のあまり

吉野をふらついていたら

ここにいたんです」

と貴方は言った。


出会えてよかった

「ああ、やはり神さまが貴方を導いたんだ」

宮司の膝で休みなさい

「妻や子に 涙は見せたくなかったんです」と

貴方は照れながら笑った。

宮司は、貴方の背中を撫でた

この出会いを神に感謝する。

次に向けて「さあ頑張れよ!」

吉野の風が 吹いている。

貴方の為に

「良知を致す」と

色紙に書いて


坂を下る 貴方の

後姿に元気があった。

手を振る

貴方に 笑顔があった。