白紙に戻した二人の男の精神力 | 知財業界で仕事スル

知財業界で仕事スル

知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

新国立競技場 首相「計画を白紙に戻す」
NHK News Web 2015年7月17日

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150717/k10010156301000.html

>安倍総理大臣は、総理大臣官邸で、記者団に対し、東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる新しい国立競技場について、「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直すと決断した」と述べ、計画を見直す方針を表明するとともに、下村文部科学大臣らに新しい計画を速やかに作成するよう指示したことを明らかにしました。

国のトップが失敗をいさぎよく認めて、白紙に戻す。できそうで、なかなかできるものではありません。

エライと思います。


もう一人、いさぎよく白紙に戻した男がいました。将棋の羽生名人。

将棋界のトップ棋士が、棋聖戦というタイトル戦で、失敗をいさぎよく認めて白紙に戻す手を指しました。

棋聖戦の公式ブログ
http://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2015/07/post-653c.html
には、

>69手目▲6三歩から△6一金▲6二歩成(図)と進みました。以下(1)△6二同金なら68手目の局面で先手の持ち歩がなくなった形と同じ。先手に得は一切ありません。羽生棋聖は▲6三歩の非を認め、1歩損でも68手目からやり直す覚悟を決めたわけです

とあります。羽生名人は、失敗をいさぎよく認めて白紙に戻す手を即座に指したのです。

その他、ここ
http://shogi1.com/kiseisen-86-4/
の「▲6二歩成!反省する羽生棋聖」とサブタイトルが付された箇所にわかりやすい解説があります。

とは言っても、将棋をまったく知らない人にはよくわからないかもしれません(笑)。が、ブログページに挿入された将棋盤のイメージを追っていけば、なんとなくわかると思います。

このブログの解説を引用させてもらうと…

>後手が△同金とすれば盤上は4手前の局面になりますが、羽生棋聖の駒台からは歩が消えるという、純粋な歩損。しかも貴重な最後の一歩。

>これは羽生棋聖自らが自分の失敗を認めて反省したような手。余程持ち時間がない時は、こうやって1歩を犠牲にして時間をかせぐ時もなくはないですが、羽生棋聖は約1時間を残してこの一手を選択。相当やりにくい手のはず。

>棋譜コメントには以下のように書かれています。

“これはなんと! 思わず目を疑う手だ。(中略)だがそれでも、自身の間違いを認め、反省して成り捨てるしか、この将棋を戦う術がないと判断したのだろう。苦渋の決断に要した時間は27分。”



私は、ライブでみていたわけではないのですが、翌日に棋譜を追っていて驚きました。鳥肌が立ちました。


羽生名人は、20代の頃からずっと「羽生マジック」と呼ばれる数々の天才的な絶妙手を生み出してきましたが、この“6二歩成”は、不惑の年齢に達した羽生名人ならではの新しい種類の「羽生マジック」といってよいのではないでしょうか。

“6三歩”と歩を金の頭に打って、その次の手が“6二歩成”。単なる無駄手なのです。その「恥ずかしい」手を、それがその局面での最善手なら指す。タイトル戦という衆目の的の大舞台で、失敗をいさぎよく認めて白紙に戻す手を指す。

すごい精神力だと思います。



安部総理の白紙に戻す決断、羽生名人の白紙に戻す決断。いずれも、強い精神力がなければ出来ないことだと思います。

勉強になりました。