ドクター中松氏、政治家に知財重視の教育ができるかも | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

日本維新の会:ドクター・中松氏が商標登録を出願
毎日新聞 2012年10月04日
http://mainichi.jp/select/news/20121004k0000m040117000c.html

>発明家のドクター・中松=本名・中松義郎=氏(84)が昨年12月、「日本維新の会」の名称を商標登録するため特許庁に出願していたことが3日分かった。同庁は今年8月に認めない決定をしたが、11月までは中松氏が異議を申し立てることが可能。橋下徹大阪市長率いる新党「日本維新の会」側は困惑している。

>特許庁によると、中松氏はセミナーの企画・運営や書籍の製作などの目的で使用するとして出願。仮に登録が認められていれば、第三者が中松氏に無断で「日本維新の会」の名称を用いてセミナー開催などを行うと商標権侵害にあたる恐れがあった。



まだまだ、やってくれますね!


チョイと調べたら、ドクター中松氏の「維新の会」関連の商標出願は:

東京都維新の会
平成維新の会
日本維新の会
東京維新の会


の4件で、いずれも指定商品(役務)は「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,教育研修のための施設の提供,電子出版物の提供,書籍の製作,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」となっている。


これら4件のうち、今回、「日本維新の会」は拒絶査定になったが、「東京都維新の会」「平成維新の会」についてはチャンと登録されている!!(「東京維新の会」は係属中)


やってくれますね!


「東京都維新の会」「平成維新の会」が登録になっているのだから、「日本維新の会」も登録になってもおかしくないように思えなくも無い。ドクター中松氏が拒絶査定不服審判を請求して、もうヒト暴れしてもいいのではないかと思えなくも無い。

ドクター中松氏が審判で勝てば、橋下徹大阪市長率いる「日本維新の会」はドクター中松氏からライセンスをうける必要が出てくるのだろう。これ、パッと見にはおかしいかもしれないけれども、実はそうではない。


ドクター中松氏の「日本維新の会」出願は、2011年12月16日。

一方、橋下徹大阪市長が率いるのはもともと「大阪維新の会」であった(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E7%B6%AD%E6%96%B0%E3%81%AE%E4%BC%9A)。
2012年9月12日の大阪維新の会の政治資金パーティで「日本維新の会」結成を表明したに過ぎない(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B6%AD%E6%96%B0%E3%81%AE%E4%BC%9A_(%E6%94%BF%E5%85%9A))。

すなわち、ドクター中松氏が「日本維新の会」商標の出願をした後、9ヶ月経過したところで、橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」が「日本維新の会」を使おうとしたのである。


毎日新聞の上記記事によると、

>中松氏は毎日新聞の取材に「景気回復させるため、90年ごろから講演や自著で『平成維新』を訴えてきた。最近、維新という言葉をまねする人が増えたので出願した」と主張。維新幹事長の松井一郎大阪府知事は記者団に「今から政党名を変えることはできない」と話し、出願を検討する考えを示唆した。

なるほど。ドクター中松氏の主張は悪くない。「東京都維新の会」「平成維新の会」が登録になっているのに、「日本維新の会」が拒絶になった理由はどこにあるのか知らないけれども、もし橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」の新党名が何らかの圧力になったのであれば、それは特許庁としてはやってはいけないこと。


一方、維新幹事長によると「出願を検討する」とのことだが、この発言はド素人もいいとこ。ドクター中松氏の出願より後に「日本維新の会」を採用しておいて、ムシがいいにもホドがある(笑)。知財を軽視した結果がこれだから、是非、政権をとることができたら、今回のことを踏まえて、知財重視の政策をとってほしいなあ。



この新聞記事を読んだときには、一笑して終わりかと思ったが、ちょっと内容に踏み込んだら、意外なものが見えてきた。面白いもんだ。



最後に、上記記事は、
>民主党や公明党は「無関係の人の名称使用を防ぐため」などとして商標登録を出願し、認められている。
と結ばれている。

で、そっちもみてみた。

さすが、菅直人弁理士を擁する民主党は「民主党」を商標登録していた。が、指定商品(役務)は、「セミナー・研究会・研修会・講演会・シンポジウムの企画・運営又は開催,電子出版物の提供、印刷物,紙製のぼり,紙製旗」のみ。菅直人弁理士からチャンとコンサルテーションを受けたのだろうか?


公明党の方は、指定商品(役務)は、

電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物 、貴金属,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計、 紙製包装用容器,紙製のぼり,紙製旗,紙類,文房具類,印刷物,写真,写真立て,紙製簡易買物袋,プラスチック製簡易買物袋 、 被服用はとめ,テープ,リボン,腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花、 技芸・スポーツ又は知識の教授及びこれらに関する情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催及びこれらに関する情報の提供,電子出版物の提供及びこれに関する情報の提供,図書及び記録の供覧及びこれらに関する情報の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの作成(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)及びこれに関する情報の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供及びこれらに関する情報の提供,図書の貸与及びこれに関する情報の提供

となっている。

宗教がかっていると感じられるほどに徹底されているなあ。民主党とは趣が異なり、こっちは、商品の出所表示のための商標とデザイン(意匠)とを混同した結果のように見受けられる。


ともあれ…

がんばれ、ドクター中松氏!
日本の政治家に知的財産の重要性をわからせてあげてほしい。