朝起きると目がはれていて


熱も出て、唇と目が腫れて、火傷も負っていたよしきはさすがに不安になった。



親に電話したら帰ってこいやらなんたら面倒くさいこと言われることは目に見えている。


しかし不安だ。


ということでよしきが相談することに決めたのは高校の頃の応援団仲間のかおりん。


すぐ出てくれたかおりん。
後ろで笑い声が聞こえるのは援団だ!!


そーか今皆で北海道旅行中かー。
と朦朧とする意識の中でラベンダー畑を思い出していた。


「ものもらいってどんな症状だっけ」


「えっ、よくわからないよ。ってか病院行った方がよくない??」


そーいや保険入ってた私。


でもカンボジアの病院ってなんだかこ・わ・い


けれど損保ジャパンに何とか電話し、病院を紹介してもらった。


私は戦時中に使われるようなボロッボロな病院を想像し、多少不安をかかえながら病院に向かった。


着くとそこにはインド人もビックリの美しい病院が。


何やらそこで働いてる人達もやたら立派な人達に思えてくる。


カンボジアで一番キレイな場所は??と問われたら私は真っ先に病院と答えるだろう。


日本人スタッフもいて完璧な設備の病院。


私は熱も腫れも火傷もおっていたので医者は呆れていた。


ユーハブメニープロブレムとね。


結局血液検査や尿検査までした。


私は病院のベッドの居心地の良さにグースカ寝ていて看護師達からは苦笑されていた。


しかし血液検査のとき看護師が注射があまりに下手だったので何度も針をぶっさされた私は「これは針マッサージ」と自分を騙すことに専念した。


プラス『ナースのお仕事!!』松下由紀と針をぶっさす練習をしていた観月ありさこと朝倉いずみを思い出さずにはいられなかった。


この日は何にもせず寝た。


一日もったいなかったけど、むちゃばかりしてたので一日ぐらい体を休めるのもありですなと思った。


よしきは寝ていたよ、援団が薄すぎるよしきの唇が腫れたなんてちょうどよくなったんぢゃないかと笑っていたことも知らずに。

夜、前日デートしたカンボジア人が取り付けた一方的な約束をすっぽかし、日本人の男の子2人と夕飯を食べに行った。


私はカレーを食べていた。

カレーを食べたせいか身体がホットになっていく。


うーん、このカレー味はマイルドめだがなかなかホットにさせてくれるぜ


うん、身体まで熱くなってくる。


うん、身体までスパイシーに。


うん、身体がもう赤とうがらしに





熱い


熱い


熱い






うん??


カレーってこんなにも私を熱くさせるくれるホットな野郎だったっけ??







ううん、カレーにそんな興奮したことない
カンボジアにて発熱。






カレーなんて悠々と食べてる場合じゃないことに気づいた私は仕方ないのでお金払おうと20ドル札を出した。


するとウェイトレスのお姉ちゃんが私の20ドル札を見るなり顔をしかめた。


なんですか、私が偽札でも持ってるといいたいのですか。


そんなこそどろに見えますか私は。


と思い、ムカついたのでお札をもう一度差し出してやった。






するとお姉さんは私の20ドル札を指差しテープで補正されてるところを見せてきた。


どうやら補正されてると使えないらしい。


えっ、私20ドル札以外日本円しか持ってないんですけど



夜なので両替所は全しまり。


どこかでくずそうとしてもこのお札は断られるばかり








金がねぇ!!


とりあえずどうしようもないので日本人の男の子に借りることに。


よしきは裕福でない現地人にもおごってもらっていたし


あわよくば




あわよくばね、





日本人だし裕福だし私より年上だしたった2.5ドルだし私熱出てかわいそうだし


おごってもらえるのではないかと


淡い期待を持ちつつ


「もーしわけないんですけどお金貸してもらえませんか??」
と聞いた。





おっ、いいよ!!


とさわやかに貸してくれたので


次にくるのは





たった2.5ドルだし返さなくていいよー





という言葉かな??と思ったら


熱で意識が朦朧とし始めた私に




ところでいつ返してくれるの??と聞いてきた。


明日は??と聞いてきたので

今こんな状態ですし、明日は一日中寝てるかもしれませんので


と言ったら


じゃあ明後日6時にここにまた来てよ


と言われた。


明後日まだ寝込んでるかもしれないし元気になったとしたって観光でいつ帰ってくるかもわからないのに


一方的に約束してきたので


本当、この熱がいつ治るかもわからないし、絶対に絶対に返しますから住所教えていただいてもいいですか??日本帰ったら郵送します。


とフラフラになりながらかろうじて言ったら


日本じゃなくてここでいつ返せるの、2.5ドル?!

とフラフラしている私にひたすら聞き続けた。




あーーー本当ちいせぇ男だよ!!


てめぇカンボジア来て心が雄大になったとか熱く語ってただろ??


どこが雄大なんだよ??
米粒よりちいせぇぢゃねぇか!!


それで雄大になったならカンボジア来る前はお前はノミぐらいちっさかったんだろな!!


熱で歩くこともままならず一文無しの憐れな女の子に…


たった250円。




顔もさえないが、根性もさえない男である。


しかししょうがないのでとりあえず3人でゲストハウスまで歩いていると、後ろから声をかけられた。


do you remember me??


ガーン







あーーー




ヤバイヤバイヤバイ








一方的な約束をしてきたカンボジア人登場!!


何て言えばいいかわからなかった私はとりあえず「Im sick」をひたすら連呼。熱も手伝ってめまいがしてくる。


雰囲気を察した小さい男が彼女は風邪だと彼に告げ始めた。


しかもその小さい男がなぜか喧嘩ごしにカンボジア人の彼につっかかったので


日本人とカンボジア人との言い合いに。


修羅場!!


結局私は日本人に助けを求める!!と彼に告げた。


少し怒った表情で去って行った彼。


約束破った上に男2人とフラフラしてた私は完全にやな女になりさがった。


結局私が歩けないということでゲストハウスまでトゥクトゥクに乗ることになった。


しかしお金がない。


小さい男じゃない方がお金を出してくれてしかも返さなくていいと言う。


まだいつ返せるか聞いてくる男に、俺金残ってるしそれも出しますよ


とまで言ってくれた。


私がいや、返させてください


と誠意を持って言うと


いや、日本なら缶ジュース2本より安いお金だよ??
気にしないで


と言ってくれたのに


小さい男が、いや、返してくれるよね??と阻止した。

出してくれると言った方はなかなかイケメンだった。

日本でもたいがいおごってくれる人ってイケメンが多い気がするし、そういう話もよく聞く。


ベトナムでも何人かおごってくれた日本人の男の子いたけど


みんなイケメンだったなぁ


しかも断るとこっちに気ぃ使わせないようなこと言ってさらっと払ってくれて


モテるだろうなって思った。




お金を出し惜しみしたいわけじゃなくて優しさが欲しいわけよ、女は。


イケメンの人って女の扱い慣れてるし、こういうとこでモテるモテないの差が出るのではないかしら。





熱あったけどその人のゲストハウスまで返しに行ったんだよ、後日。




ゲストハウスに戻る道中、熱で明らかにダウンしてる私に今夜会えないかひたすら聞いてくるくそめんどくさいトゥクトゥクのドライバー


かろうじてゲストハウスに戻り


汗だくの身体だったのでシャワーを浴びたら水が出てこなくて、石鹸がついた泡だらけの身体のまま服を着るしまつ。


寝てたら熱で動けない私を

チャーンスとばかりに刺しまくる蚊たち。


足だけで30ヶ所くらい喰われてかゆくて眠れない。


この日は唇も腫れていたし、火傷もおっていた。


朝起きたら目もはれていた。


どんだけバチを被れば許してもらえるのでしょうか、カンボジア人のいたいけな青年を裏切ったことを。
遺跡に向かうと子供達もついて来るといい、ドライバーのランも来たのでみんなで行くことになった。


みんなで楽しく遺跡に向かっていると、パーという男の子が来ないことに気づいた。


パーは何やらしゃがみ込んでいる。


パーの元へ歩み寄ってみると、パーの履いていたサンダルが壊れてしまい、一生懸命直しているところだった。


私はそれを見て初めて気づいた。


ボロボロ過ぎてはけたようなサンダルじゃない。


結局サンダルは直らなく、パーは始めひきずって歩いていたが、途中持って歩きだした。


女の子達を見るとサンダルすら履いてなく、何人かは素足だった。


服を見ると破けて汚れてボロボロだった。






どうかどうかこの子達が明るく元気に大きくなりますように。


と何度も思った。








パーは猿みたいな男の子で気がつくと木や高い遺跡に登っている。


みんながこっちだよ、こっちだよと色んな所を指差し、導いてくれるので目が周りそうになりながら遺跡巡りをした。


この遺跡はタ・プロームと言って、木がタコのように遺跡を覆い、自然の力強さを感じられ、少し崩れた遺跡との雰囲気がなんともすばらしい。


日本人にも人気の遺跡だ。


そんな素敵な遺跡の中で子供達やランと遊びながらまわったのは、この上ない楽しさだった。


ロープが張り巡らされて入っちゃいけないところにも入る子供達。


なぜか怒らない監視員達。
そして今にも崩れそうな遺跡に登れと言ってくる子供達。
私はヒーヒーいいながら登ったよ。




日本人観光客ばかりいたのだが、現地人と遺跡巡りしてしかも変なところに登りまくってる私はかなり異端児な感じで見られていたでしょう、間違いなく。


子供達と手を繋いで歩いてると女の子達が「for free!!」と言って私に摘んだ花をたくさんくれた。


その花をもちながら素晴らしい遺跡を見た。


パーが得意げに何度も私の写真を撮ってくれた。


上手だったよ、ナイスカメラマンだね。


途中、4人組のキャピキャピしたかわいい日本人の女の子達が「かわいい~」ってずっと子供達に絡んできたんだけど、子供達は彼女達に笑顔を見せないどころか完全シカトしてた。


ビックリした。


カンボジアの子供って本当人懐っこくて、すぐくっついてくるんだけど、彼女達がなでても話し掛けても、完全シカトなの。


何か子供とは思えない表現しがたい表情で彼女達を見るの。


私に悪いと思ったのかな。



子供達に「明日もNo8に来なよ!!」と何度も言われた。
No8とはタプロームの前の食事する休憩所のうちの一つだ。


できない約束はしたくなかったので私は微妙な顔をしていた。


その雰囲気を察して子供達は何も言わなくなった。


遺跡終盤にさしかかるとみんな笑わなくなった。泣くわけでもなく、笑うわけでもなく見せたあの微妙な表情は、もう私が来ないことを悟っている表情だった。


みんなが楽しそうに遺跡に登ったり走ったりしてる姿を今でも思い出す。


あの時は気づかなかったけどすごくすごく幸せな時間だった。


あの子達は私をまだ覚えているだろうか??


私は一日に何度も思い出すよ。


素敵な時間をありがとう。


またカンボジアに行けば会えるだろうか??


あの子達はNo8にいるだろうか??


また笑顔を見せてくれるだろうか。