ファンでなくても読みたくなる!? 東野圭吾作品解説

ファンでなくても読みたくなる!? 東野圭吾作品解説

東野圭吾の大ファンである著者が、実際に読んでものから、読みたくなるような作品解説をしていきます。

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初めまして。大手出版社にて編集の仕事を経て、独立したフリーの編集者兼ライターです。

東野圭吾作品が大好きで、皆さんに少しでも東野圭吾作品の魅力を伝えたくて、このブログを作ることにしました。

 

たくさんの東野圭吾作品を読んできた訳ですが、まずは昨今読んだものから、作品の紹介をしていきたいと思います。

 

今回は、「聖女の救済」です。

この作品は、東野圭吾作品の「ガリレオシリーズ」第5弾に当たります。

そう、今回も帝都大学工学部物理学科准教授「湯川学」こと「ガリレオ先生」が挑む事件なのです。

※)ドラマや映画などでは、湯川学は福山雅治が演じていますが、実際、東野圭吾が「ガリレオシリーズ」を書く時にモチーフとして考えていたのは佐野史郎だったそうです。

 

湯川学は、他の作品でもそうですが、大学時代のバトミンサークル仲間であり、警視庁捜査一課刑事の「草薙俊平」から持ち込まれる難事件の捜査協力依頼をされると、必ずといっていいほど断ります。

 

今回も同じ。この作品では、湯川学に捜査協力を依頼するのは、草薙の部下である内海薫ですが、彼女にも「今回、君から電話をもらった時、僕は一旦断った」と言っています。

※)内海薫はドラマや映画などでは柴崎コウが演じていますが、作品から察するに、内海はもっと冷静沈着で頭のキレる女性という印象。個人的には少しキャスティングミスかなとも思います。

 

では、なぜ今回も湯川が事件の捜査協力をすることになったのか?

それは「草薙が容疑者に恋をしているから」と内海から知らされたのです。

草薙が恋をするという設定は、他のどのガリレオシリーズにも登場しません。

 

草薙は容疑者に恋してしまう。

そのために、事件に個人的な先入観を抱いてしまうのか?

はたまた、名刑事として、理性を失わずに事件解明に取り組むのか?

それを探りながら、この作品を読むのも、この作品ならではの面白さのひとつだと言えるでしょう。

※)少しネタバレになりますが、それは草薙が事件後、自らの机の引き出しに所持し続ける、容疑者に関係する「あるもの」で分かります。

 

 

また、東野圭吾作品は、必ずと言っていいほど、本の装丁が内容に関連しています。

 

この「聖女の救済」もそれが当てはまります。

パッチワークが表紙を飾っていますね。

そう、今回の事件もパッチワークが事件に関連しているのです。

 

物語の主人公であり、容疑者としても疑われる真柴綾音(ましば・あやね)は、作った作品が1枚100万円の値がつくほどの有名なパッチワーク作家。

 

ただ、それだけではなく、真柴綾音が作った、「ある1枚のパッチワーク作品」が、あるキーマンと容疑者とを結びつけ、また殺人に使われた毒物「亜ヒ酸」の入手経路が分かるなど、事件の真相を握る重要なカギとなります。

 

さて、今回の作品で殺されるのは真柴綾音の夫であり、IT企業の社長である真柴義孝(ましば・よしたか)。

 

この男、「女は子どもを産むための機械である」と憚らず言い放つ最悪の男。

「この女には子どもが産めない」と分かると、すぐに交際を破棄してしまうほど、彼のライフプランは徹底しています。

 

事件の真相は、彼のこの一貫しているともいえるほどの偏った考え方が原因となります。

 

そしてこの作品が素晴らしいのは、「理論的にはあり得ても、実行することはあり得ない」※湯川談)という「完全犯罪」だということ。

 

「普通の人間は、どうやって人を殺すかに腐心し、労力を使う。だが今回の犯人は逆だ。殺さないことに全精力を傾けた」※302p湯川談)

 

そう、犯人は「いつでも殺せる状態」をあらかじめ作っておく一方で「殺せない状態」を、ある方法で維持するのです。

このトリックは見事としか言いようがありません。

 

では何故、容疑者は「いつでも殺せる状態」を作っておきながら、「殺せない状態」を維持し続けたのか。

 

それは、作品の最後のほうに明らかになりますが、容疑者の殺しに対する執念と殺さないことへの配慮は、まさに「救済」とも呼べるでしょう。

そう、それがタイトルにもある「救済」なのです。

 

では、「聖女」とは誰なのか?

 

東野圭吾作品の共通点とも呼べるものとして「タイトルが内容を見事に言い当てている」というのがあります。

 

この作品も、最後まで読み終えた時、タイトルの「聖女の救済」とはどんな意味を持ったものなのかが明らかになります。

 

その意味がわかった時、それまでモヤモヤしていた感情が一気に晴れ渡るとともに、人間の、はたまた女の、持つ性(さが)を感じ、悲しい気持ちになることでしょう。

 

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