草刈り、嫌い?
草刈り最盛期の夏は暑い。ただ暑いというだけで、単調な作業が恐ろしく厳しい仕事になる。
ホコリがすごく、またエンジン工具を使うのでうるさい。地面は平坦とは限らないので、場合によっては膝や腰を痛めてしまうこともある。クオリティの高い仕事をしようと思えば思うほど、事故の危険が増す。特に多いのが石はねによる事故。ものを壊しちゃった、人にケガさせちゃったというもの。たぶん一番事故の多い仕事なのに、一番利益率が悪い。下手したら赤字の仕事もざら。
こんな仕事はやってられない。こんなの、仕事とはいえない。でしょ? やればやるほど金を払わなきゃいけないなんて。

でも僕は、草刈りが好きだ。ただ刈りたいと思う。たぶん、刈ったところと刈ってないところの一目瞭然感が好きなんだと思う。ちゃんと金になるなら、もっとやってもいい。好きだから。

それでも若い頃は、どうしようもなくつまんない仕事だと思っていた。この時間を無理矢理有意義なものにしようと考え出したのが、草にストーリーを見いだすこと。

よくみてみると、どうでもいいところにも、驚きの植物が生えている。それらがなぜそこにあるのか?
国土地理院地形図と地図、そして現地の景観から、過去の地形を推測し、現在の地形と対比する。過去の地形から、過去のその土地の様子を推測する。同時に植物の生態を学ぶ。すると、独自ではあるが、ぼんやりストーリーがみえて楽しかった。話す相手はいなかったけど。

それをやるには、まず草の名前を知らなければならない。それと刈る寸前にその草に気付かなければならない。緊張して仕事ができた。その頃、「草を金にできるんじゃね?」なんて考え始めた。「俺は草を金にする!」なんてルフィのように言ってみたりした。
実際、その後、ちょっとは金になった。でもやっぱ、続けなきゃだめだね。いろいろ方法を考えたけど、中途半端だった。このへんは、いまだ夢の一部。