「封印って・・・!それってまずいんじゃないの!?」
封印が解けてきていると知り、鈴鈴は驚く。
「ああ。・・・鈴鈴護符を貼れ。そうしなければ、お前も疫病がうつってしまう。」
「わかったわ。・・・だから、誰もいないのね。」
辺りを見渡しても、人の気配すらない。
「急ぎましょう、兄様。早くしないと・・・」
「待ちなさい。」
その声に2人は振り返る。
「瑠璃仙!!」
飛行布に乗ってやってきた瑠璃仙を見て、ほっとする。
「無事だったんですね。瑠璃仙さん。ウザーナは・・・」
「あれは幻影です。いつまで闘っても埒(らち)があかないので失礼させていただきました。
 ・・・とにかく2人とも乗りなさい。急ぎましょう。」
2人は飛行布に乗り、奥へと向かった。

~西域 封印の間~
「やはりお前が・・・。」
「俺が憎いか、最長老。・・・いや、フォニン・アスタロク。」
「・・・貴様、どうやってここへ入った。」
「俺の仙術レベルは知っているはずだ。記憶が戻ったのならな。」
2人の男が口論をしている時、ギィィと扉が開く音がした。
2人は振り返る。
「・・・ルツィアス、なぜここに・・・・・・!」
「ちっ。」
二人も驚いていたが、三人はもっと驚いていた。
「何・・・アイツ・・・!?」
「あれは・・・瑠璃仙さん・・・・・・!?」
「・・・・・・・・・。」
フォニン・アスタロクと呼ばれた男と話していたのは、
間違いなく瑠璃仙だった。
「よお、久しぶりだな。といっても、まだ封印が完全に融けてないから、
 知らないだろうが。」
「・・・なんのことです?」
目の前に現れた瑠璃仙と同じ顔の男に、瑠璃仙は動じていないようだった。
「もうすぐ・・・完全に封印は融ける。いずれ知るさ。俺が・・・誰なのか。」
「させん!『バロー・アモーラ』!!」
水が舞い上がり、その男を襲った。だが・・・
「『トレカ・パレカ』。」
獣が現れ、盾となった。
「鈴鈴!!護符の力を強めろ!!」
「やってる!!」
封印が完全に融ける寸前と知り、二人は護符の力を強めた。
ピキィィィン!
災厄の器の封印が融ける音がした。
そして、一瞬にして疫病は広まっていく。
「・・・まさか・・・これは・・・・・・!」
瑠璃仙の記憶が戻り、瑠璃仙は、真実を知った。
「アタクシを以前のアタクシを思わないことね!『コールド・バレット』!!」
ウザーナの前から魔法陣が出現し、そこから氷のつぶてが飛んでくる。
「それが通ると思わないで下さい。『ラジューム・バトン』。」
瑠璃仙は現れたバトン―棒状の端に水晶がついている物―を高速回転させ、
氷のつぶてをなぎ払う。
「流石ね。でも、これならどうかしら?『降霊水女・バブリーナ』!」
ウザーナの前に、水をまとった一人の女性が現れた。
「…貴女、たった一年でどうやってこの術を・・・!」

降霊
それは、普段はこの世界に干渉しない「精霊」と呼ばれる生物。
精霊の世界に干渉するためには、五年以上の鍛錬が必要とされ、
精霊を降霊させるため、精霊と契約を交わすには、
さらに十年以上の鍛錬が必要とされる。

「アタクシだって、今までただただ美形を探してたわけじゃないわ。
 術師としての腕を磨くために、毎日鍛錬してたのよ。」
ウザーナが自慢げに笑う。それを見て瑠璃仙は、
「…そうですか。すぐに終わらせるつもりだったのですが、
 精霊まで出されてしまっては、ちょっと時間が掛かりそうですね。
 失礼。先に進ませていただきますよ。」
「させなくてよ!!『アン・リミテッド・カタストロフィ』!!」
バブリーナとの複合術で、巨大な波が瑠璃仙の四方から襲いかかる。
瑠璃仙は、波に飲み込まれていった。
「どう?アタクシとバブリーナの術を合わせたものよ。
 波に飲まれた者は、風の術を合わせてるから、切り刻まれるわ。
 残念だわ、ルツィアス。あなたを…!?」
波が消えた所には、何も残っていなかった。
「どこに…何処に行ったの!?」
《ウザーナ。》
ウザーナの後ろに、瑠璃仙は立っていた。
「!!!…そう、そういうことね。」
ウザーナは、この瑠璃仙が実体ではないことに気づいた。
「幻影…!」
《そうです。また引っ掛かりましたね。…幻影は貴女の専売特許ではないというのに。
 貴女…その姿、幻影ですね。》
ウザーナは、そう言われ、少し驚いた。だが、
「やっぱり、気づいていたのね。あなたは一度も『攻撃術』をしてこない。
 当たらないとわかっていたから…。」
《これ以上は、もう、無理のようです。私は星寿を追います。
 …本気を出さずに、私に勝てると思ったのですか?ウザーナ。》
そう言い残し、瑠璃仙の幻影は消えていった。
「そこまで気づいていたのね。大したものだわ。」
そして、ウザーナの幻影もまた、消えていった。

西域 風人街(かざびとまち)
「これは…!?」
街に漂う妖気に、星寿は驚く。
それは、成長した鈴鈴にもわかった。
「これってまさか兄様…!」
「ああ。…どうやら災厄の器の封印が、解けてきているようだ。
「あ~あ、ヒッマだなぁ~。」
見慣れたいつもの白い天井に、嗅ぎ慣れた薬の匂い。
病院のベッドに横になる亮太(りょうた)は、
左腕を複雑骨折し、ゲームもできない。
(なんで腕を骨折するかなぁ~。)
足だったらゲームは出来たのに、と思い、舌打ちをする。
「あら、亮太くん。起きていたのね。」
「ずっと起きていますよ。香織(かおり)さん。」
入院してからずっと担当の看護婦がやってきた。
「なにしてるの?」
「なにも。腕一本使えないからゲームもできやしない。」
「そうね~。・・・そうだ!ひらめき電球図書室に行ってみたらどうかしら?
 本なら、片方腕を使えれば、読めるでしょ。」
ちょっと本を読むことは嫌いだった亮太は、断ろうと思ったが、
(暇を潰せればまぁいっか。)
「・・・そうですね。そうさせてもらいます。」
そう言い、亮太は病室を出て行った。

「といっても、読む本がないから暇だなあ。」
適当に本を見つけて、読んでみるが面白くはない。
もう面白そうな本を見つけることが面倒になり、
適当に図書室を歩いていた。
「あれ?」
さっき見たときには無かったはずの本があり、少し驚いた。
試しにその本を手に取ってみる。
「『創造の神』・・・なんだ、バトルものじゃないのか。
 生憎俺、バトルもの意外興味がないんだなぁ。・・・まあ、読んでみるか。」
この時、俺が本を読んでしまったことに、後悔するのはまだ先になる。
裏にはっきりと、『あなたが、この世の神になる』と書いてあるのだから―――。