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yosemitecrackのブログ

徒然にCBR600RRとスイーツを堪能いたします。
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こんにちは、yosemitecrackです.

 

第4部 35℃時代の人的資源

インフラを支える「人」をどう守るか

 

はじめに

道路も橋もダムも、自らを修理することはできない。

最後に点検し、判断し、補修するのは人である。

しかし35℃が当たり前となった社会では、その「人」が最も大きな制約になり始めている。

インフラの老朽化ばかりが注目されるが、本当に深刻なのは、インフラを維持する人材の老朽化と不足ではないだろうか。

これからの課題は、設備だけでなく、人を含めた社会システム全体を維持することにある。

 

第1章 技術者不足

高度経済成長期、日本は全国で道路、橋、ダム、発電所、港湾を整備した。

それを支えた技術者たちは、現在では定年を迎えつつある。

一方で若い世代は減少している。

つまり、維持すべきインフラは増え続ける一方で、維持する人は減っている。

この構造は一時的な問題ではなく、人口構造そのものから生まれている。

問題は人数だけではない。

屋外で、暑さと向き合いながら、地道な点検と補修を続ける仕事は、どうしても敬遠されやすい。

華やかさよりも忍耐が求められる仕事に、次の世代がどれだけ魅力を感じられるか。

これは待遇や仕組みだけでなく、社会がこの仕事をどう評価するかという問題でもある。

地方ではその傾向がさらに強く、都市部以上に深刻な担い手不足が進んでいる地域も多い。

今後は、「どこを優先して維持するか」という判断がますます重要になる。

それは、設備の優先順位であると同時に、限られた技術者をどこへ配置するかという、人の優先順位でもある。

 

第2章 35℃と熱中症

猛暑は設備だけでなく、人の能力にも影響する。

35℃を超える現場では、集中力は低下し、判断力も落ち、作業時間は短くなる。

高所作業、狭所作業、災害復旧、すべてに熱中症のリスクが伴う。

熊本地震でも、地震そのものだけでなく、その後の猛暑が復旧活動を難しくした。

35℃時代では、作業員の健康管理そのものが、インフラ維持の重要な要素となる。

そしてもう一つ、見落とされがちな影響がある。

それは、判断力の低下が、そのまま点検の精度を左右するという点である。

「いつもと違う」という小さな違和感に気づけるかどうかは、点検員の集中力に大きく依存する。

疲労し、集中力が落ちた状態で行われた点検は、異常を見逃す可能性が高くなる。

つまり猛暑は、設備の劣化を進めるだけでなく、その劣化に気づく力そのものも同時に弱らせているのである。

これは、第3部で触れた「逸脱管理」の土台そのものが、猛暑によって揺らぎかねないということでもある。

 

第3章 技能伝承

ベテラン技術者には、数値だけでは表せない経験がある。

「いつもと音が違う。」「振動が少し変わった。」「この色は危ない。」

こうした感覚は、長年の経験によって培われる。

しかし、経験は言葉にしなければ、退職とともに失われてしまう。

前の部でも触れたが、私は仕事を始めた頃から、個人の経験を会社の資産へ変えることを目標にしてきた。

当時は理解されないことも多かった。

設備の話であれば「品質保証」の考え方として語られてきたその原則は、人的資源の文脈ではさらに切実である。

設備は記録が残れば劣化の履歴を追える。

しかし人の経験は、本人が語らなければ、記録にすら残らない。

技術は個人のものではなく、社会の財産なのである。

 

第4章 ロボット・AIとの協働

AIが人間に代わる。そう考える人もいる。

しかし私は、AIは人間を置き換えるものではなく、人間を支援する技術だと考えている。

ドローンは高所点検を行う。ロボットは危険区域へ入る。AIは膨大なデータを解析する。

そして、最終判断は人が行う。

これは品質保証でも同じである。

AIは異常を見つける。しかし、それが本当に問題なのか、社会へどのような影響があるのか、責任を持って判断するのは人間である。

ただし、人的資源という視点で見ると、ここにはもう一つの変化がある。

これまで現場で求められてきたのは、危険な場所へ自ら入り、体を使って点検する力だった。

しかしロボットやドローンがその役割を担うようになれば、人に求められる力は変わっていく。

体力や経験だけでなく、センサーやAIが出す情報を正しく読み解き、判断する力である。

つまり技術者の仕事は、「現場で汗をかく仕事」から、「現場のデータを解釈し、判断する仕事」へと、静かに重心を移しつつある。

この変化に、教育や研修が追いついていけるかどうかも、35℃時代の大きな課題になるだろう。

人とAIは競争する関係ではない。

それぞれの強みを活かしながら、社会全体を支える協働の時代が始まっている。

 

第5章 人材を「資産」として考える

設備は減価償却される。しかし、人の経験は会計上の資産にはならない。

だからこそ、教育、技能伝承、記録、AIによる知識共有が重要になる。

一人のベテランが退職することは、会社だけでなく、社会全体が知識を失うことでもある。

この損失は、帳簿には表れない。

しかし、実際には大きな代償を伴っている。

一人のベテランを新たに育てるには、何年もの時間がかかる。

その間、経験不足による見落としや判断ミスのリスクは、確実に高くなる。

設備の維持で触れた「予防・修理・再建」の費用の差と同じように、人材への投資も、育てる段階でかけるコストと、失ってから穴を埋めるコストとでは、桁が違うのだと思う。

35℃時代では、設備投資だけでは社会を維持できない。

人材への投資こそ、最も重要なインフラ投資になる。

 

おわりに

日本は「ものづくり大国」と呼ばれてきた。

しかし、これから求められるのは、「ものを造る力」だけではない。

それを何十年にもわたり維持し続ける力である。

道路も橋もダムも、最後は人が支える。

そして、その人を支えるために、AI、ロボット、デジタル技術が存在する。

35℃時代のインフラ戦略とは、設備を守ることではない。

設備と人、その両方を一つのシステムとして維持することである。

それが、これからの品質保証であり、日本の社会基盤を支える新しい考え方になる。

そして、この「限られた人材をどこへ配分するか」という問いは、次の部で述べるBCRSという考え方の、重要な一部でもある。