先生に背中を向けるように診察台に横たわり少し屈んだ格好で検査が始まった。私にも見えるモニターには大腸内部が映し出されている。大腸内部は素人の私が見ても綺麗な常態だった。綺麗なまま進んでくれ、と心の中で祈る。ガスを入れて腸内を膨らませると便意が起こるのだががそのガスを抜くとすぐに納まる。

何度かそれを繰り返しながらカメラはどんどん進んで行く。

「カメラが届く所まで小腸内部も診ましょう、体を仰向けにして膝を立てて足を組めますか」と先生が言う。看護師さんに補助してもらいながら体勢を変えようとしていると靴下を脱ぐ意味がここでようやく解った。

検査着に着替える時靴下も脱ぐようにと注意書きが有ったのだが

足が冷たいので脱がなかった。靴下までは関係無いだろうと勝手に判断したのが間違いだった。靴下を履いている為に膝をたてると足が滑って仕方が無いのだ。仰向けになって膝立しておしりにカメラが入った状態で看護師さんに靴下を脱がせて貰うという何とも間抜けな事になってしまった。靴下を脱がせてもらい体勢が整ったところで検査再開。

「少しおなかが押されますよー」

先生の言葉の直後に何とも言えない痛みがお腹の底から襲って来た。小腸は痛みを感じるのかは解らないがとにかく痛い。痛みは伴わない、、、嘘だった。

3年前の小腸内視鏡と同じ痛さだ。早く終わってと顔をしかめながら我慢していると看護師さんが膝の辺りをさすってくれた。不思議と痛みが和らいだ。やはり天使だ。「あーここ吻合部分ですね、黒い部分が金属ですよ、届いて良かったですね」 と先生の声。 モニターには周りと明らかに色が違う盛り上がりがあって黒い金属も一緒に映っていた。初めて見た吻合部、未知の世界を見た気持ちだ。手術後何回か腸閉塞になりかけたのだがこの盛り上がりが詰まりの原因なのかと勝手に自己診断した。ラメラは来た道を逆戻りしながらやがて私のお尻から出ていった。

大腸から小腸の吻合部分まで異常箇所は見られず組織採取もせずに終わり一安心だった。次は日を改めて胃カメラと造影剤CTが控えている。

 

 

やがて半透明の防護服を着た看護師さんが私の名前を呼ぶ。「お名前フルネームと生年月日をお願いしますね」

先程とは別の看護師さんだ。生年月日とフルネームを答えて検査室に入ると主治医とは別の先生がパソコンに向かって私のカルテを見ていた。てっきり主治医の検査だと思っていたので拍子抜けだ。看護師さんの指示通り診察台に横たわりお尻を先生の方へ向けた。少し恥ずかしい。先生はカルテを見ながら「大腸検査は初めてですか?」というので「3年前入院した時にやりました」と答えると、「記録が無いですが、、、」と先生。

お腹の腫瘍の正体を調べる為に受けた事は今でも良く覚えているので不安に思っていた時、

「小腸内視鏡で記録が有りますね。小腸内視鏡時に大腸も検査した記録がありました。大腸は異常無しでしたね」

3年前の小腸内視鏡はここでは無くCTやMRIがある放射線科の部屋で検査した。詳しい事は良く解らないのだがレントゲンでお腹を映しながらカメラを入れて行くので放射線科の検査室だったのだ。あの時は麻酔を使ったから検査後はストレッチャーで病室まで運ばれた事を思い出した。小腸内視鏡は痛くて辛い記憶しか残っていない。私の緊張を察した先生が今回の検査は痛みを伴わないので安心して下さいね。と一言。

「では始めます。お尻にゼリーを塗りますね。」

いよいよです。


腸内洗浄が無事終わり少しまったりおねがいした後は遅れないように余裕をもって自宅を出る。大学病院までは車で20分程度だが渋滞や予期せぬうんちでコンビニに行く事を考慮して出発車。 途中渋滞もコンビニ💩も無く早めに到着したので一安心。大きな大きな駐車場は既に満車に近かった。ガードマンさんの誘導に従い駐車した後は広い駐車場からひたすらエントランスへ向かう。風除室を通り過ぎて歩きながらのサーモグラフ検温、自動受付機に診察カード挿入、受付シートを取り、採血、採尿、或いは直接診療科へ。初めはもたついていたこの動作も今では無意識出来るニヤニヤ

今日は予防接種採血も採尿も無いのでD棟2階の内視鏡センターへ向かう。D棟2階へ行く時は手術棟へ繋がる大きな廊下を通る。3年前に緊張しながら手術室へと歩いたあの廊下である。見事によみがえるあの日の光景。まっすぐ向かえば手術室。しかし今日は途中で左へ曲がりD棟に向かう。

内視鏡センターの受付にカードを入れて待合用のソファーに腰掛けると程なくして問診票を持った看護師さんが私の名前を呼ぶ。とても丁寧な看護師さんだ。若くて丁寧な看護師さんの説明を聞きながら問診票を書き終えると今度は更衣室へと案内される。検査着に着替える為に。おしりの部分に大きな穴の空いている恥ずかしいあれだ。上から薄手のガウンを羽織るのでおしりは見えないから安心と言えば安心。

着替え終わって検査室の手前にある椅子に腰掛け準備完了だ。相変わらず病院ここの看護師さんは皆親切丁寧だ。