ときどき生徒から言われることがあります。
「どこを覚えればいいんですか?」
結論だけいってしまえば、
「全て」ということになります。
とはいえ、全て覚えきれないからこそ、
成績が低迷している生徒に対して、
「全て」と言って突き放すのは酷です
冒頭の質問が出てくること自体、
僕の指導力不足といえばそれまでです。
覚えるべきことを簡潔にまとめて、
「これだけ覚えろよ!!」
と提示した方が親切なのも確かです。
たとえば、
極端に理解力の低い生徒、
極端にやる気のない生徒、
極端にその科目を嫌っている生徒など、
こういう生徒の指導では
「これだけ覚えろよ!!」方式が有効です
それから、各単元の導入部分では、
情報を簡潔にまとめて伝えた方が
生徒もその単元に食いつきやすいでしょう。
ただ、入試問題演習など、
応用力を養成する段階に入った生徒に対して、
「これだけ覚えろよ!!」だけでは心許ない気がします
というのも、入試問題では、
総合的な理解が求められているからです!!
例を挙げてみましょう。
平成24年・都立高校入試の理科。
3の[問3]は、太陽に関する問題でした
【問題】
図6のa, bはそれぞれ観測地点での夏至もしくは冬至の
太陽光の当たり方の違いを表した模式図である。
図5の最も北西寄りの×印の位置に太陽が沈んだ日の
観測地点における太陽の南中高度を求めよ。
※図が無い状態で記事を書いていきますが、
今回は理科の解説ではないのでご容赦ください。
この問題は、何を覚えていれば解けるんでしょうか?
たとえば、中学受験生に同じ問題を解かせれば、
「最も北西寄りに太陽が沈むのは夏至。
そして、夏至の南中高度を求めるには、
90°-(緯度-23.4°)の公式に当てはめる」
こういう答が返ってくるかもしれません。
ということは、
「どこを覚えればいいんですか?」
に対する回答は次の通りでしょう。
・「夏至=最も北西寄りに太陽が沈む」という事実。
・「夏至の南中高度=90°―(緯度―23.4°)」の公式。
上の問題を解くだけだったら、
「これらを教えておしまい♪」でもいいでしょう。
でも、入試では過去問と全く同じ問題は出題されませんよね?
類問が出題されたとしても、
「最も南西寄りに太陽が沈む」
「冬至の日の太陽の南中高度」
などと言葉が変わっているかもしれません
もちろん、あらゆるパターンの問題と解法を
丸暗記してしまってもいいんですよ~
ただ、それを出来ないから
生徒は困っているんじゃないですか?
丸暗記の出来ない生徒はどうすべきか?
その場で考えて解けるようにする
ということです!!
上の問題で実演してみましょう。
①最も北西寄りの位置に太陽が沈む場合、
それがどの季節の太陽の動きか?
→天球図を描いて、季節毎の太陽の動きを把握する。
②①の結果、夏至であると分かったとして、
夏至のときの地球の位置はどうなるか?
→地軸の傾きと季節との関係を把握する。
③②の結果、地球の位置が分かったとして、
太陽光の当たり方から南中高度をどうやって求めるのか?
→そもそも南中高度がどこなのかを理解する。
その上で、平行線と角度の知識や
緯度の知識などを駆使して数値計算をしていく。
言葉だけでは理解できませんから、
都度、適切な図を描きながら考えていきます。
これらの作業には一連の流れがあります!!
その流れの中で、
個々の知識は意味をなすわけです
「南中高度」「夏至」「北西寄り」など、
断片的な知識を寄せ集めただけでは理解できません
それらの知識がどうつながっていくのか?
この点に意識を集中して考えないと、
決して応用力は身に付かないし、
それ以前に上の問題の解き方もあやふやになります
逆に、上で示した思考のプロセスを辿れれば、
問題の条件がどう変わっても同じように考えられます。
「冬至の南中高度」だろうと、「シドニーの太陽の動き」だろうと……
「どこを覚えればいいんですか?」
改めて、どう答えますか?
「何かを覚えればいいという問題ではない。
今、僕が示した思考のプロセスを
きちんとなぞれるようにしなさい」
僕だったら、こう答えます。
「覚える」というよりも「理解する」ために、
思考のプロセスを習得してほしいってことです。
そのためには、
「先生の思考をなぞる」のが最も有効です。
都立高校入試の場合、もしくは大学入試の場合、
一問一問の配点や倍率を考えると、
「これは捨て問ね!」と安易に言えない現実があります(*´Д`)=з
「これだけ覚えろよ!」と断言できるほど、甘くないということです。