「そやけど、素人はここで重大な過ちをする。わかるか?」
よろずのが問う。
「えっ・・・?」
考え込む夏実。
生麩田楽を口にして、ビールを飲んで待つよろずのであったが、なかなか夏実が答えないので、質問を由紀子に目で振る。
「え~っ、あたしが答えるのぉ~?」
よろずのが首を縦に振って促す。
「ユッコ、分かってるんだ。」
夏実が感心しながら言う。
「もうっ、どうしてあたしなのよっ!」
「夏実が答えられへんからや。」
「ごめん、ユッコ。」
冷たく言うよろずのと、謝る夏実。
「あ、夏実が謝る必要は無いんだよ。ただね、答えは夏実のこの間の失敗だよ、多分。」
渋々答える由紀子。
夏実の失敗原因を指摘させられるのが、本当に嫌なのである。
「あたしの!?」
ちょっとビックリする夏実。
「初心者は逆をやるの。」
「ぎゃく??」
「値動きが1/2の相場には、資金を2倍入れるってことだよ。」
「あ・・・・。」
思い出して、何も言えなくなる夏実。
「せや、これは根本的に勘違いしてるってこと。値動きの大小に関わらず、相場に資金を入れておくこと自体がリスクなんや。実力無い奴に限って、値動きの小さい相場に手を出す。そして、知らず知らずの間に、値動きに合わせて投入資金を増やしてまう。」
「でも、動きに合わせて投入資金を変えるって、よろずの言わなかったっけ?」
夏実が言う。
「言ったよ。ただ、理解の仕方が間違ってる。都合良く思い込み過ぎ。動きに合わせて資金量を増減させるのと同時に、リスクにも合わせて資金量を増減させないと。値動きが小さいのはリスクが少ないと、勘違いしてるからそうなる。」
「うん。」
頷く夏実。
「何度も言うてるやろ。小さい値動きは、その動きが極まると急激に大きくなる。そこで、多くの投資家は対応できずに、失敗する。この意識が、値動きが大きい相場は危ないと勘違いする。」
「うん、何度も聞いてる。」
「本当に危ないのは、値動きが大きいんやなくて、大きくなる相場なんや。せやから、大きくなり切った相場は、危なく無い。それ以上、大きくならんからな。」
「そっかぁ~、そうだね。うん、わかった。でも、よろずの、そのこと以前に教えてくれた?」
「小さい波を取ろうとすると、大きい波に対処できないとは言ったけど、今のような言い方はしてない。」
「どうして今の言い方してくれなかったのよっ。今のなら分かったのに!」
ふくれながら言う夏実。
「しゃーないやろ、今の言い方、今思い付いたんやから。」
「へっ?」
「せやから、同じことでも、人それぞれ理解の仕方が違うから簡単には伝わらんの。こっちも話しながら、どう言えば正確に理解してくれるか、考えながら喋ってんねやから!」
よろずのに言われて、確かに今の言葉も何回も聞いたと思う夏実であった。
①勝負は、拙速を好む
②固まってはならない
③10戦3勝7分を目指せ
④小損は大損の仇なり
⑤勝てると信ずるべし