森絵都さんの『みかづき』。
名作だと思います。

学習塾を舞台に繰り広げられる親子三世代の家族の物語であるとともに、「教育とはなにか」ということを考えさせられる作品でもあります。




今年2019年の1月にテレビドラマ化もされました。(あいにくドラマの方は観ていません。)

読み終わった後の感想は…

「圧巻」

この一言につきます。

何がすごいかというと、様々な教育問題を登場人物たちを通して、巧みに読者に投げかけているところです。

教育に携わる人はぜひ、いや必ず読んでほしい一冊です。




**ここからはネタバレを含みます**




主人公は学校の用務員だった吾郎、その妻・千明、そして2人の孫にあたる一郎の3人。

3人の教育観は一見異なるように見えます。
しかし、「こどもたちに力をつけさせたい」という想いは共通しています。

また、公教育の手の届いていないこどもたちへ教育を施すという面も同じです。


ちなみに塾を舞台にしているため、登場人物のほとんどが教育者です。

でも、一口に教育者と言っても、様々な考え方・教え方があり、一概にどれが正解とは言えません。

そして、教育者だからといって、みな聖人君子ではありません



吾郎は浮気性、千明は猪突猛進、一郎は優柔不断。
その他のキャラクターにもそれぞれ弱さがあります。でも、その弱さが人間味を出しているように感じさせてくれるのが、この本のすごいところ。


吾郎は一番の教育者のように描かれていますが、「不倫」という教師にはあるまじき行為をしています。

妻の千明がそれを知りながら明るみに出さなかったのは、自分自身のプライドが許さなかったというだけでなく、教育者として崇められる吾郎の名を地に落としたくもなかったからなのではと思っています。


私が一番好きなキャラクターは千明の娘である蕗子

彼女は両親とは似て非なる道、公教育の道へと進みます。
一番しっかりしていて、芯の強い蕗子。しかし、しっかり者であるがゆえの、人に頼れない弱さを抱えているように感じました。

幼い彼女のセリフにハッとさせられる場面がいくつもありました。ここではあえて書きません。


面白い本を読むと続きが読みたいと思ってしまうものですが、とてもよくまとまって
いるので『みかづき』に限っては、そんなことは思いませんでした。

代わりに、「私はどう生きていこう? どのように教育に関わっていきたいのだろう」という自分自身への静かな問いが残りました。


ただ、楽しませるだけではない、考えさせる小説・『みかづき』。


ぜひ多くの人に手にとってほしい作品です。